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「ウェン、こんくらいでいい?」
「ん、…大丈夫、っ、…ん」
ぐっ、と押し込むと少し熱っぽい息を吐き出す恋人。
指がほんの少しやわい肌に食い込む。
ローションで程よく濡れた肌がてらてらと光っていて。
「っ、んっ…、…ん、…ぅ…」
「は、ここの辺、気持ちい?」
「ぅ゙、んっ…、」
「ハハ、」
俺に組み敷かれて、何時もよりも甘い声を漏らす目の前の存在に、
正直、興奮する。
「ウェン、これすきやんな」
「っ、ぁ゙……、ぅ゙、んっ…」
脇あたりにグッと押し込めば声が漏れる。
その辺をぐにぐにと揉めば 、気持ちよさそうに顔が蕩ける。
開きっぱなしの口から涎が垂れているが気にする暇もない。
「ッ、ろ、…もうちょっ、した…ぁ゙」
「ん、ここ?」
「ぅ、ぁ゙っん、…っ、ぅ゙」
指定されたとおりに手を動かして揉みしだいていく。
指が入り込む度、手が沈む度に零れる声は体に悪い。
「は、ウェンちょい休憩するか」
「ん゙、…ん……は、は…ぁ」
体から離れて少し離れた位置に腰を落とせば
うつ伏せだったウェンがごろ、と転がり仰向けになる。
顔を見れば程よく汗をかいており、それによって
顔に前髪が張り付いていた。薄く開いた口から見える赤色が
劣情を煽りに煽ってきて、軽く生唾を飲み込む。
「ウェン、」
名前を呼びながら張り付いた前髪を退ければ
綺麗な空色が髪の向こう側から覗いてくるので
汗ばんだ額に手を当てる。
ほんの少し冷えていて、それが心地いい。
「は、気持ちよかったか?」
「ん…もっとやってよ」
問かければ目を瞑りながらねだってくる。
もっとやって、と俺の手を両手で包んで。なんなんだこいつ、
可愛いな。額に置いていた手を頬まで滑らして、
片方の手で頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細めた後に、
腕を首に回してくる。それに引っ張られるようにして
ウェンにキスを落とす。ちゅ、と軽いリップ音がなるほどのキス。
それを何度も角度を変えて繰り返す。ふと、目を開ければ
雨に降られた瞳と目が合ってもう一度唇を押し当てた。
名残惜しげに離れれば二人の間に細い銀糸がつぅ、と線を引く。
薄く開かれた唇は光っている。
「ロウ、マッサージしてくんないの」
「俺がやって欲しいかな」
「やだ」
いつもよりも少し脳がとろけるような甘い会話。
それでも飛んでくる素直な言葉にえ、と驚けば嘘だよ
とくすくすと笑う声が聞こえてくる。
隣で小さく肩を揺らしながら笑う恋人が可愛くて仕方がない。
「上向きでマッサージやんの?」
「やってくんないの?」
「はは、お嬢様の仰せのままに」
「お嬢様じゃねぇ」
こてん、と首を傾けて可愛こぶったかと思えば男言葉で一蹴。
なんて気ままな恋人なんだ。
「どの辺のマッサージご所望で?」
「どこでもいーよ」
どこがいいのかと聞けばとこでもいいと。なんだそれは。
普通に肝臓でいいのか、と聞く寸でで止まる。
聞いたところで、どこでもいい、の1点張りなのは目に見えた。
しょうがない、と考えところでウェンの声が耳を刺す。
「ロウ、僕のここ、悪いのいーっぱいあるかも」
固まった。なぜって、その男らしい、大好きな指が指してる先は
下腹部。俺が普段中出しをしているところ。奥。結腸。
こんな煽り信じられない。いや、信じたくない。
まさか、こんな煽りまでされて、
マッサージだけして終わりなのか。信じ難い。
「ウェン」
「ロウはそれはダメ。ね?
ロウはいい子だから我慢できるでしょ?」
名前を呼んだ俺の声は、ウェンの声に、言葉に遮られ、切られた。
いい子だから。これは、どういう意図なんだろうか。
単なるからかいか、煽りか。それとも、 純粋に
愛しさの 表れなのか。分からない。 誰よりもそばにいて、
誰よりも知っているはずの ウェンのことが、
ウェンの意図が 分からない。 掴もうとしても、
簡単に逃げられてしまう。ウェンの瞳が俺を見つめてくるのが
ひどく苦しい。そんなふうに見られれば、押し黙ってしまう。
「…そこは、また今度な」
冷静を装う。動揺したことでまた煽られてしまっては
元も子もない。
「今日は、肝臓マッサージやったら終わり。いいな」
俺の言葉にウェンは残念そうに、しかし、よく分からない表情で
わかったと潔く返事をした。ウェンの目が
期待に揺らいだことには気づいていないということにしておこう。
先程までの賑やかな雰囲気は一気に静寂へと姿を変えた。
ローションの粘り気のある音だけが嫌に耳から脳へ伝わる。
ウェンの程よく柔く、筋肉の付いた肌に指が食い込む度
にち、という形容しがたい音が鳴る。その音は、微かながらに
ウェンを興奮させているように思える。俺の他よりも白い手は
ウェンの他よりも赤い肌に触れることにより、更に白く映る。
「ウェン、服の上からでもいいのに、なんで脱いだん?」
わざとらしく、意地悪な質問を投げかける。ウェンに言わせたい。
「…別に。ロウに、直接触って欲しかったから」
期待以上の言葉に静止する。ちょっと待て、そんなことを
言われるだなんて、聞いていない。ウェンは恥ずかしがり屋な
思春期男子のはずだ。なのに、こんな、真っ直ぐ伝えるなんて。
止まった俺を心配してか、ウェンは俺の名前を呼んだ。
「ロウ」
「っ、なに」
急に呼ばれたことにより、変に力の籠った返事をしてしまった。
「逆に、なんでロウはそんなこと聞いたの?
もしかして、僕になにか言わせたかった?」
期待した俺が馬鹿だった。そうだった赤城ウェンという男は、
俺が惚れてしまった男は、こういう男だった。生粋のSだ。
そんなやつのすることなんか容易に想像が着くだろう。
そう、現在行われている怒涛の質問攻め。立場は逆転したんだ。
俺がやりたかった事は相手に簡単にばれ、
逆に自分が追い込まれた。忘れていた。ウェンは、鋭い男だった。
素直に言えばいい、なんて、簡単に言ってくれるが。
おれのような人間からすれば、素直になる、
という行為ほど難しいものはない。こうなっているウェンを
見たかったのに、まさか、見られる側になるなんて。
絶望に打ちのめされている暇は無い。暇になればウェンは、
根底のドSを発揮する。それだけは避けなければならない
「…恥ずかしがりながら、俺が、好きだからって言って欲しかった」
顔が赤くなるのがわかった。ウェンは少しニヤついている、
あぁ、なんてやつを好きになってしまったんだ。
こいつと出会ってしまった、そんな運命を恨みたい。
いや、恨んでいる。
「そっか、ロウはかわいいんだなぁ」
帰ってきた言葉はなんとも言えないに値するだろう。
感情を汲み取るどころか、言葉の意味すらまともに理解できない。
俺が可愛いだなんて、ウェンの目は腐っているのか。
ウェンの方が圧倒的に可愛いだろう。
「はぁ、お前の方が可愛いと思うけど」
この際、やけくそだった。もう素直に打ち明けてしまった以上、
隠す理由などどこにもない。しかし、思わぬ収穫が得れたようだ。
「…急にそんなこと言うとか、バカじゃないの」
ウェンが顔を赤くしながらツンツンした態度をとった。
そう、これだ。これが見たかったんだ。
やっぱり、極上にかわいい。あぁ、この表現は気持ち悪いか。
だが、恋人だから、いいだろう。多少は許してくれ。
「ロウ、まだマッサージ終わらせちゃダメだよ」
ウェンの手が優しく俺の手首に添えられる。
あぁ、ウェンの微笑みは天使だ。
「だから、早くやって欲しいな」
だが、微笑みやあざとさを抜けば、生粋の悪魔だな。
追記
長らく失踪していました、お久しぶりです。
最近仕事が忙しく時間を割く暇がありませんでした。
やっと落ち着き始めたため、投稿を再開させていただきます。
本当に長い間ご心配及び、ご迷惑おかけ致しました。
投稿頻度は相変わらずですが、これからも何卒、
よろしくお願いいたします。