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14 - 有能という言葉 ~弍 ~

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2022年10月06日

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そのまま、テスト期間が終わった。




帰ってきた結果は、ほぼ100点。…だったけれど、



理科で1問ミスをしてしまった。



お母さんにすごく怒られた。



健斗は、何が起きてるんだろうと言うような目で、こっちを見つめてくるだけで何も言ってこなかった。




yu「…勉強、かぁ……」




ut「?ゆーまくん?どしたの?」




yu「え、いや……なんでも」





隣でうたくんが書類を整えている。




…うたくんも、頭がいいんだよな。




うたくんもA組で、頭がいい。




どんな教育を受けてきたのかは知らないけれど…。今回のテストもほぼ100点だったらしい。




yu「…うたくんは、勉強って楽しいですか?」




ut「え?勉強?どうしてそんなこと聞くの?」




yu「…少し気になっただけなので…」





ut「う ~ん……、別に、嫌いなわけじゃないよ。親だって強制的に頭が良くなるって言ってるわけじゃないし。俺の自由でいいって。ゆーまくんは?」





yu「…僕も、勉強は好きですよ。楽しい、ですし……」




楽しい、…楽しい、かぁ……。




ほんとは全然楽しくない。



つまらない。




勉強なんてしたくないんだ。




本当は、みんなで遊んでゲームして、お泊まり会して…。



高校生らしいことたくさんしたいんだ。



だけど…できない。



やりたくてもできない。



そんなことを口に出せない僕は情けない。



みんなとずっといたいんだ。



でも、お母さんは怖くてそんなこと言えない。


悲しいな……。


yu「ッッ………」


ut「え”ッッ」


涙が溢れ出てくる。うたくんが目の前にいるのに、どうしても止められない。



みんな優しいんだ。



でも、僕の家のことは知らないから、少し、寂しくなる時もある。




ut「ちょッ、ちょ、ゆーまくんッッ!?ご、ごめんってッ!俺悪いことしたッッ…?」






yu「ち、がうんですッッ……ごめんな、さッ、」ポロポロ






ut「な、え、はッッ……?ごめ、んッッ……」


ガララララ


hr「おっす ~……、は?ゆーま?」




ym「…う、うたが……ゆーまを泣かしてるッッ!!」




ut「はぁッ!?違うってッ!!誤解ッッ!!」




yu「ごめんなさいッッ……」




hr「ゆ、ゆーまが……うたッ!お前なんかしたのかッッ!?」




ut「してないってッッ!」




目の前には、はるさんと山田さんとたくぱんさん。



僕が泣いていることをうたくんが僕を泣かせたのだと勘違いしているらしい。



うたくんは必死に説明している。



僕も、なんとか誤解されないよう涙を引っ込めたいのに、どうすることもできない。



ただ、ただ自分の頬が濡れる感触がするだけ。




みんなの前で泣きたくない。心配させたくない。



僕の心はそう思っているはずなのに、体と心は逆で、従ってくれない。



たくぱんさんが、背中をゆっくりとさすってくれた


すごく、暖かった。



tk「ゆーま、どしたの?」





yu「…なんでも、ないんですッ……でも、うたくんのせいじゃなくてッッ…僕が勝手にッ…」





ym「……うた、何があったん?」






ut「わか、んない……勉強の話してたら突然ゆーまが…」






hr「えぇ……?」





ut「ゆーま、俺が嫌だったら……ごめん」





違うんだ、違うんだようたくん。



これは僕の事情で、部活の仲間たちには関係ない。




そう言いたかった。



だけど僕は弱くて、ただ泣いているだけで、声はひとつも出なかった。



みんな心配してくれている。



こっちに眼差しを向けてくれる。頼ってくれる。



それだけで僕は嬉しいのに、自分のことじゃないのに、何が起きているのかもわからないのに、こんなに不安そうに、自分のことのように、僕のことを慰めてくれる。




ましてや、罪悪感まで負わせてしまった。




yu「……僕、ちゃんと有能としていられてますかッ…?」




hr「…え?」




みんなが不思議そうにこっちを向く。



不安なんだ。僕がこの部活に必要なのかどうか。


お母さんにこの部活に入っていることはばれていない。



多分、バレたらすごく怒られる。



部活は帰宅部に入れって言われる。



だから、秘密にしているんだ。


___まだ、一緒にいたいから



でも、一緒にいたところで、僕が必要なのかどうかがわからない。



はるさんみたいなリーダーシップもない。


うたくんみたいなマネジメント力もない。


山田さんみたいな、想像を超えた面白さもない。


たくぱんさんみたいな、ゲームのうまさもない。


こむさんみたいな、面白い発言もできない。


きゅーちゃんみたいな、歌唱力もない。


そーちゃんみたいな、企画力もない。




僕は本当にここにいて意味があるのか。ただの足手まといじゃないのか。



……いない方がいいんじゃないか。



そう考えたことだって何回もある。




でも、僕の心は部活を辞めることを嫌う。






僕自身、ずっとこの部活がいいんだ。




yu「僕、ここにいて平気なんですかッッ……?」




hr「平気なんですか、って……」





yu「不安になっちゃうんですッッ……。みんな僕のこと必要としてくれているのかッ…、また、置いていかれるんじゃないかって、別の生き物を見るのような目で見られるんじゃないかな、ってッッ……ごめんなさいッ…」




tk「ゆーまッ……」




迷惑だ。今泣くことは迷惑だってのは知ってる。



過去にこういう経験があったから。目の前の4人だって、みんな不安そうな顔してるんだ。



はるさんは、僕のことを静かに見つめている。


うたくんは、心配そうな、不安そうな表情をして立っていた。


たくぱんさんは、「訳がわからない」と言ったような表情で座っていた。


山田さんは、…しずかに、何かを考えているようだった。




tk「とりあえずッ…、涙拭いて。ね?」




yu「ありがとうッ…、ございますッ」




hr「まぁ、落ち着くまで屋上とかで休もうぜ」



ym「あ、山田行く?」




hr「頼んだ」




山田さんが、僕と一緒についてきてくれた。


○○



屋上。涼しい静かな風が靡く、落ち着く場所。



とは言いつつも、正直僕はあまりきたことがない。




山田さんとこむさんは…、よくサボっているらしいけれど。




ym「よし、ついたで ~……って、あれ…、こむぎ?」




km「…お?あれ、山田とゆーまくんやん」





ym「やっほ ~」





yu「どう、も……」




こむさんが、座っていた。



こむさんは、よく放課後に屋上で休んでから部室に来るらしい。



僕が元気なさそうに挨拶したので、こむさんは不思議がった。





km「どしたんゆーまくん。元気ないやん」




ym「あ ~……実は…」




山田さんが、さっきのことを全部説明してくれた。



目の前で話されると、少し恥ずかしいけれど…。こむさんは、何かを察したような表情をしていた。





km「山田、部室…、戻っててええで」




ym「…あぁ、おん。わかったわ」




山田さんが、屋上から出ていった。



こむさんが「こっちおいでやゆーまくん」と、僕を手招きした。



僕は小さく頷くと、こむさんの隣に寝転んだ。




風が、とても気持ちよかった。すごく落ち着いた。




あまり屋上ってきたことがなかったけれど、すごく落ち着く場所なんだな…。




そんなことを思っていたら、こむさんが口を開いた。




km「人が一度に受け止められる量、って…限界があるやろ?」



yu「え…?」




km「例えば、塩は少し食べたぐらいで人は死なんけど、たくさん食べたら死んでまう…、とか」




yu「…そ、れはそうですけど…」





km「ゆーまくん、プレッシャーとか…つらいと思わん?」





yu「……僕は、別にッッ……」





km「俺はつらいと思うなぁ…。だって、成功せんかったら責められるし、成功しても「流石」って言って期待されるのは変わらへんやん?だから、抱え込むのも良くないんやて」




yu「………」





km「だから、ゆーまくんも我慢せんでたくさん楽しんだ方がええで。勉強サボるもよし、ゲームするもよし、お母さんに反抗するのもよし、俺やったら当たり前のことやで?w」





yu「……!そう、ですねッッ……ありがとうございますッ!元気出ましたッッ!」





km「ん、それならええんやで ~。んじゃ、下戻ろうや」

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