テラーノベル
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───数日後
仕事が立て込んだり、カラスバさんからの呼び出し(フシデの近況報告)が多くなんやかんやでエイセツシティへ行くより先に、セイカ達と約束していたアズール湾に行く日が来てしまった
「んー!海ーー!!」
「すごーい!綺麗ー!」
「アズール湾って初めて来たけど、結構人いるんだな!」
海を見るなり目を輝かせて早速海へ飛び込むセイカ達
そんな3人を見ながら呆れたようにパラソルの下で涼むピュール
「シオンさんは行かないんですか?」
『ん?んー、まだ海の景色見てたいかなって』
「意外ですね、こういうのは進んで行くかと思ったのですが」
『折角海に来たんだから、写真は撮りたいじゃん?』
そう言いながら、驚いたようにシオンを見るピュールを見て笑う
しばらくピュールと2人で話していると、髪を濡らしたデウロが此方へ戻ってくる
「はー…あのふたりってずっと元気だよねぇ〜…」
『デウロも全然元気でしょー?
……というか、デウロってやっぱりスタイルいいね〜!』
「きゃっ!?も〜!いきなり触らないでよー!」
デウロの腰をガシッと持ちからかうシオンに笑いながら手をのけるデウロ
そんなふたりの会話を罰が悪そうな顔をして目を逸らすピュール
「シオンはどんな水着なの?見せて見せて!」
『ん〜?いいよ〜!!』
そういって来ていたパーカーのチャックを下に下げると可愛らしい白基調のフレアビキニが露になる
「え〜!可愛いー!!」
『へへっ、これで今日こそはガイを落とすぞ〜!って感じ!』
「こりゃ誰でも好きになるよ!!」
そういって笑うタウニーにつられて笑みを浮かべるシオン
しかし、ガイの方を見ると楽しそうにセイカと水を掛け合っている
あのキラキラした笑顔こそがガイの本当の笑顔なのだろうと感じる
『(でもまだ、完全には振られてないもん)』
完全にNoと言われるまでは諦めたくない
そう思いながら、重い腰を上げて海の方へ向かう
───ザア……
『ひっ…』
波がシオンの足を飲み込み、慌てて後ろに下がる
しかしすぐに手を強く握りしめながら、ゆっくりとガイたちの方へ向かう
『(大丈夫、大丈夫…あと少し!)』
もう少しでガイ達の元へ行ける
なんだ…全然じゃん。海なんて怖くないじゃん
年月も経ってるし、あの頃とは違う
───プツッ、
足に何かが当たる、その瞬間周りの視界が一気に暗くなる
『へ……?』
それと同時に横からバチャバチャ、と激しい水音が聞こえそちらを振り向くと、小さい頃の自分が溺れていた
〖ゲホッ…たすけッ………!!…ゴホッ…!!誰かッ…!!ぐる…じ…ッ…〗
〖…所詮此奴も人間か〗
〖ッゴホッ!たす、けッ……〗
〖助けはいらん。自分で向こうまで行くんだ6番〗
〖施設長…!ですが6番をここで失うのは──〗
〖もし、想定の範囲を到達しないのであればまた地下室にでも入れておけ〗
地下室…? いや、あそこだけはいや
だって気味が悪いの。鉄臭い匂いに、暗くて分からないけどきっと兄弟だったモノの物体
あそこにまた行くのだけはいや。だから早く泳がないと、最後まで…最後まで泳がないと連れてかれる、あそこにまた連れてかれる
『はっ、はッ……いか、ないと…』
「シオン…?」
息がおかしくなりつつ、青ざめた表情で海の中へ入っていく
そんなシオンの異変に先に気づいたのはセイカだった
自分達を通り過ぎて、何処か切羽詰まった表情でなにやら呟きながら海の奥へ行こうとするシオンに嫌な予感がした
「っ!!ミロカロス!!」
〖キュオン!〗
咄嗟に沖の方に叫ぶと沖に置いていたボールからミロカロスが現れシオンの方へ向かう
しかしそんなミロカロスより先に、ひとつの大きな影がシオンの元へ素早く向かった
〖ギャァオ!〗
『はぁッ、ハアッ!…はっ……』
ギャラドスがシオンの下に潜り、背中にシオンを乗せて沖へ戻る
『駄目、戻らないと……また…地下室に…』
「──シオン!!」
戻るなりギャラドスから降りて、また海へ向かおうとするシオン
そんなシオンの肩を掴み、大声でシオンの名を呼んだのはカラスバだった
『ごめんなさい…!すぐ行くから、だからッ───』
「大丈夫や、ここにはそんな事するやつもそんな所もあらへん。シオン」
シオンを抱きしめ、背中を優しく撫でる
そしてロズレイドを出してシオンへねむりごなをかけるように伝える
『ゔ……お父さん…なんで………』
「(足に噛まれとる跡がある、ポケモンの技で混乱してしまったんか)」
そのままシオンを持ち上げたあと、パラソルの下にあるビーチベンチへシオンを寝かせ、シオンの持ってきていたパーカーを上から被せる
すぐにデウロが駆け寄りシオンの顔を触り、心配そうに見つめている
「カラスバさん…!!シオンは……」
すぐにセイカとガイも駆けつけてカラスバへ問いかける
「大丈夫や。それよりセイカ、お前よう気づいたな」
「なんかいつもと様子が違かったので…」
「野生のポケモンの技に当てられて混乱したんやろ」
にしてもあの様子、海に何かしらのトラウマがあるのか
最後に父の名を呼んでいたあたり施設で起こったことだろう
「シオンはオレが見とくさかい、遊んどき。起きた時にお前らが元気やった方がシオンも気使わんやろ」
「はい…でもなんかシオンにお菓子でも買ってくる?暖かいものとか!」
「それ、いいな!シオン甘いもん好きだし、そこの店のアイスでも買おうぜ」
カラスバの言葉に頷き、近くの出店へアイスを買いに行くガイとセイカを見届けながらとある人物へ連絡を取る
〖はい、なんですか。此方は姉さんとデートしてる貴方とは違って、仕事で忙しいんです〗
電話をするなり不機嫌そうなアザミの声が聞こえる
「お前に聞きたいんやけど、シオンって海にトラウマあったりするんか」
〖…もしかしてデートって海に行ってんの!?〗
アザミが驚いたような声を出したかと思うと、大きくため息を吐く
やはり何か理由があるようだ
スヤスヤ眠っているシオンの頭を撫でながらアザミに今起きた事を話す
〖…そう……地下室、ね……〗
「嫌な事なら無理して話さんでええ」
〖…ごめん…地下室の事は…ホーズキから聞いて。私もあまり… 〗
「悪い、嫌な事聞いてしまうたな 」
〖全然。それ以外なら教えれるし〗
ホーズキは今アザミの家で居候しているシオン達の弟
実験の影響とあり、感情が薄いが
そう言うとアザミはポツリポツリ、話し出す
どんな実験にも耐えれる程の強靭な身体に元よりずば抜けた身体能力、そして実験による人間離れした回復能力
全てを持っているように見えたが、泳ぎだけは出来なかったらしい
夜中に深いプールへ突き落とされては溺れても助けられず、泳ぎきらなければ地下室へ連れていかれたのだとか
〖───姉さんはそれ以降浅い所は大丈夫だけど、深い所が苦手で…〗
「なるほどな、仕事中すまんかったな」
〖全然、けど姉さんの事ちゃんと見ててね〗
「当たり前や」
プツッと音を立てて通話を切り、横で眠るシオンの顔を見る
「(お前が寝とる姿だけはまだ、慣れへんわ)」
ずっと眠っていた時の事を思い出して苦しくなる
このまま目が覚めないのではないか
今度こそ、離れ離れになるのではないかと
「(──それだけはあかん、オレから離れるなんて。それだけは絶対に)」
お前に害なものは全部排除したる
お前が好きなもんだってなんだって買ったる
オレの隣にさえ来てくれたら、なんだってやったる。なんだって
もうオレ1人置いていくことなんか許さん
なんでもしたるから、オレの横におってくれ
そんな1人の男の醜い執着等知らずに、シオンは心地よい寝息を立てて眠っている
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