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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第50話 〚変わった空気〛(全体)
昼休みの終わり、教室はいつものざわめきを取り戻しつつあった。
その中で、りあは一人、静かに席に座っていた。
そこへ——
「りあ」
澪が声をかけた。
一瞬、教室の空気が止まる。
周りの視線が、自然と集まった。
えま、しおり、みさとが澪の後ろに並び、
少し遅れて海翔と玲央も立っている。
「一緒に話さない?」
澪の声は、相変わらず静かだった。
りあは驚いたように目を見開き、
それから、小さく頷いた。
「……うん」
その返事に、誰も大げさな反応はしない。
ただ、当たり前のように輪ができた。
「今日の数学、やばくなかった?」
みさとが、わざと軽い調子で言う。
「それな」
えまが肩をすくめる。
「先生、スピード鬼だったし」
しおりが、少し笑って付け足す。
「宿題、後で一緒にやろ」
りあは、少し戸惑いながらも答えた。
「……ありがとう」
その声は、
高くもなく、作った甘さもなく、
ただの“素”だった。
海翔と玲央は、少し離れたところで様子を見ている。
「……雰囲気、違うな」
玲央が小さく言う。
「うん」
海翔も頷いた。
「無理してない感じ」
その様子を、クラスメイトたちも見ていた。
(あれ……?)
(りあ、今日ぶりっ子してなくない?)
(声、普通だよね)
ひそひそとした視線が交わされる。
りあは、そのことに気づいていた。
でも、気にしなかった。
——もう、無理に好かれなくていい。
澪が、ふとりあを見る。
「……疲れたら、無理しなくていいから」
その一言に、胸が少し熱くなる。
「……うん」
短い返事。
でも、そこには確かな意思があった。
教室の空気は、少しだけ変わっていた。
派手な逆転でも、劇的な和解でもない。
ただ、
“本当の自分でそこにいる”という選択が、
静かに受け入れられ始めていた。