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約束の場所。

約束した訳では無いが何となく彼ならばここに足を運ぶであろう。

硬質ケースからヴァイオリンを取り出す。

少しチューニングをする。

此処は海辺の廃墟。

素敵な、僕のお気に入りの場所。

兄さんと太宰しか知らない。

太宰にバレているのが残念だ。

此処には何故かピアノがある。

海辺だと言うのに錆びる事も無く綺麗な音を出してくれる。

今日は満月の夜。

月明かりが眩しい為再びフェイスベールを着用している。

太宰が来るまで暇なので兄さんと共にピアノの椅子に腰かけ、合図をすることなく旋律をかなで出した。

連番なんて、何時ぶりだろう。

暫く兄さんと二人の世界に沈んでいた。

其れも、1つの足音で崩壊してしまったが。

案外時間が経っていたようでそこには太宰がいた。

微笑を顔に浮かべながら拍手をしている。

僕は席をたち、兄さんから少し離れる。

『 先刻振りですね。』

「 ぼくの弟がお世話になったようで 」

「 何故フョードルも居るんだい? 」

「 弟が心配だったもので 」

太宰が兄さんへ近ずく。

……顔や雰囲気からは察せられないがかなりギスギスとしている。

「 演奏楽しみにしているよ 」

態となのかピアノの椅子に腰掛ける。

少しムッとしたが顔には出ていないはずだ。

……兄さんの隣に座った太宰が堪らなく憎たらしい。

兄さんの隣は僕だけのものだ

許さない

……

深呼吸して心を落ち着かせる。

そうだ、今は演奏をしに来たんだ。

硬質ケースの上に置かれたヴァイオリンを手に取り構える。

息を整え、心を落ち着かせ、

ゆっくりと旋律を奏でる。

時々、波の音が聞こえる。

有名な曲を奏る。


どれくらいの時が経っただろうか。

演奏が終わり僕は礼をして2人の様子を伺った。

「 お~! 」

と、感嘆の声をあげるは太宰。

「 流石です、ユーラ。  」

と僕を誉めてくれるのは兄さん。

ヴァイオリンを硬質ケースへ戻し背負うと兄さんへ歩みを進めた。

『 帰ろう、兄さん 』

「 帰ったら夕食にしましょうか 」

兄さんは微笑んで返してくれた。

「 もう帰るのかい? 」

「 其れに演奏は1度とは言ってない 」

『 ……性格悪いですね 』

嫌な顔をして対応する。

「 1度とも複数回とも言ってません、

帰りましょうユーラ。 」

『 そうだね、兄さん 』

僕は兄さんに手を差し出し、兄さんはそれを取った。

兄さんは立ち上がり、僕と共に歩き始めた。

僕はちら、と振り返り太宰にべっと舌を出し、もう一度前を見て帰るのだった。

魔人フョードルの弟!?

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コメント

2

ユーザー

最後のユーラのべっってやってるのが可愛いです!

ユーザー

本当マジで神作…! 次もがんばってください!

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