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#夢主
そら
255
みゅう

68
壁外調査から一か月後。
調査兵団本部は珍しく活気づいていた。
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今回の遠征は犠牲も出た。
だが得たものも大きかった。
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そして。
その功績を認められた者たちへの正式な任命が行われることになった。
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広間に兵士たちが集まる。
整列。
静寂。
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前方には団長の姿。
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そして発表された。
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「リヴァイ・アッカーマンを兵士長に任命する」
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ざわめき。
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当然だという声。
驚きの声。
様々だった。
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だが誰も異論はなかった。
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強さ。
判断力。
統率力。
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どれを取っても申し分ない。
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リヴァイ本人だけが興味なさそうな顔をしていた。
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そして。
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「〇〇を分隊長に任命する」
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再びざわめく。
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こちらも納得の声が多い。
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若い。
だが実力は十分。
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何より。
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今回の壁外調査で班長を救った行動。
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仲間たちからの信頼。
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全てが評価された。
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「え……」
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本人だけが少し固まっていた。
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後ろから同期に背中を叩かれる。
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「おめでとう!」
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「分隊長だぞ!」
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「すごいじゃねぇか!」
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〇〇は困ったように笑う。
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「責任重いなぁ……」
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その姿を。
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少し離れた場所から見ていた男がいる。
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兵士長。
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リヴァイ。
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彼は無表情だった。
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だが。
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〇〇が分隊長に任命された瞬間だけ。
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ほんの少し。
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口元が緩んだ。
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それを見逃さなかった人物がいた。
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「……ねぇエルヴィン」
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隣で腕を組んでいたハンジが小声で言う。
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「見た?」
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「ああ」
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団長は平然としている。
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だが目だけは笑っていた。
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「今笑ったよね」
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「笑ったな」
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「リヴァイが」
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「そうだな」
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ハンジは吹き出しそうになる。
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何年の付き合いだと思っている。
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地下街から兵団へ来てから。
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ずっと見てきた。
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だから分かる。
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最近のリヴァイは明らかにおかしい。
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いや。
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正確には。
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分かりやすくなった。
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〇〇を見る回数。
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気に掛ける頻度。
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怪我をしていないか確認する癖。
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全部増えている。
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本人は隠しているつもりだろうが。
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全然隠れていない。
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「恋人になったな」
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ハンジが断言する。
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「恐らく」
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エルヴィンも否定しない。
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「いつからだと思う?」
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「壁外調査以降だろう」
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「やっぱり?」
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二人は前方を見る。
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〇〇が仲間たちに囲まれている。
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楽しそうに笑っている。
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そして。
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少し離れた場所から。
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リヴァイが見ている。
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本人は無意識。
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だが視線が柔らかい。
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昔では考えられないほど。
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「本人たちは秘密のつもりだろうね」
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ハンジが肩を竦める。
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「だろうな」
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「気付いてないと思ってる?」
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「思っているだろう」
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その答えに。
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二人は同時に笑った。
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実際。
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兵団の大半はまだ知らない。
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〇〇は人気者だ。
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分隊長になった今も変わらない。
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むしろ人気は増している。
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だからこそ。
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誰もリヴァイとの関係を想像していない。
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そして当人たちも。
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今は公表するつもりがなかった。
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兵士長と分隊長。
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立場もある。
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余計な噂も避けたい。
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だから。
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今は秘密。
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誰にも知られていない恋人同士。
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その日の夜。
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任命式も終わり。
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人の少ない廊下。
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「〇〇分隊長」
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後ろから声がする。
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〇〇が振り返る。
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そこにはリヴァイがいた。
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「やめてよ」
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即座に笑う。
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「その呼び方」
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「事実だろう」
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「絶対面白がってる」
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「気のせいだ」
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気のせいじゃない。
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少しだけ面白がっている。
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珍しく。
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ほんの少しだけ。
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〇〇は吹き出した。
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そして。
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周囲に誰もいないことを確認して。
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そっと近付く。
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「リヴァイ兵士長」
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「なんだ」
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「おめでとう」
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小さな声。
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リヴァイは一瞬目を細めた。
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「お前もな」
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短い言葉。
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けれど。
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そこには誰にも見せない優しさがあった。
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そして二人は知らない。
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廊下の角の向こうで。
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ハンジが顔だけ出していることを。
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「エルヴィーン」
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「なんだ」
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「やっぱり付き合ってる」
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「そうだろうな」
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「面白い」
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「放っておいてやれ」
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そう言いながら。
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エルヴィンも少しだけ笑っていた。
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長い片想いを知っているからこそ。
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ようやく報われた友人の変化が。
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少しだけ嬉しかったのだった。
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