TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

──さらに1ヶ月後。


木の学舎ポムヒュース4階、ロロの花場と呼ばれる《ルパオハナ》の上。


リヨクたちは、4年生の『ポァ』予選会場にいた。


石でできた会場は、まさにローマのコロッセオそのものだった。


観客席は満員。

期待に胸を膨らませた観客たちは、試合開始を今か今かと待ちわびていた。


「《ラフィア》が赤になりました。それでは第1予選を始めます!」と校舎全体に響き渡るアナウンスとともに、4年生たちが入場してきた。


「キャーキャーうるさいなぁ」とつぶやくユウマ。


「やっぱり第1試合は注目されてるね」

グオは、観客を見渡しながら言った。


「どういうこと?」と言いリヨクはグオに耳を近づけた。


「あのオレンジ色の髪の男の人と、石のベストをきた男の人、あの2人は優勝候補って言われてて、今から第一試合で対戦するんだ」


「ふーん」リヨクはその2人を見ながら言った。


「ふつう、予選は実況しないんだけど、この第一試合だけ注目度が高いから実況するんだって」


「そんなに注目されてるんだ」リヨクは、観戦が少し楽しみになった。


──アナウンサーの声が響き渡る。



「第一試合、『ンメ・パルコス』VS『ナノ』ーー!」



試合が始まると、観客の空気が一変し、緊張感が場を包み込んだ。


「お互いの出方を探る2人……おっと! ナノが一瞬の隙をついて先手を打った!

おぉ〜しかし、さすがはンメ。彼の反応は雷のように速い。冷静に身を交わし、ナノの剣技を見事にかわした。

ンメは風植物《ポインヘ》を取り出した! 彼は一体何を見せてくれるのだろうか!?」


その後、ンメは華麗に舞い上がり、地面に種をまくと、瞬く間に4本の柱のような植物がブワっと一気に成長させた。


そしてンメは、石を先につけたつるを両手に持ち、クルクルと回しながらナノを待つ。


ナノは、高速の剣技を放つが、ンメはツルを柱に巻き付かせて移動し、ナノの攻撃を次々と避け続ける。


そして、気づいたときにはナノは植物のツルに絡まり、拘束されてしまい、身動きが取れなくなっていた。


観客が息を呑む中、実況者が宣言する。


──「勝者! ンメ・パルコス!」




「あのナノって奴よえーな」ユウマ。


「いやー、ぼくもびっくりしたよ。ナノは3年生の時優勝してるし、強いはずなんだけどなぁ」


「え、じゃあ、ンメって奴強すぎ」


「多分、ンメに対策されてたね。ナノがどう動くか分かってたみたいだったもん」


「もうすぐボクらもやるって思うと、なんか緊張してきたよ」と言いリヨクはため息をついた。


「おれらっていつだっけ?」オウエンがグオに聞いた。


「1年生は、一週間後だね」


「まだまだじゃん」




──1年生の予選の日。


木の学舎ポムヒュース4階、光の花場《フォルポール》の上。


1年生全員、この日のために設けられた控え室=巨大なキノコの中にいた。


「やっとこの日がきたぜ。で、おれは誰とやるんだ?」とオウエンは肩を回しやる気満々だった。


「もう少し待てば発表されるよ」グオ。


──メヒワ先生が控え室にやって来た。


「この学舎に来て初めての『ポァ』です。緊張しているのも無理はありません。


特にポピュアの皆さんにとっては、こういった大会は全く新しい経験でしょう。


ポピュアの皆さんには、地球で培ってきた力を発揮していただきたい。


自分を信じて、全力を尽くしてください。

あなたたちの力は、今日試されます」



それからメヒワ先生は、対戦カードを発表すると、大会で扱う植物と石の選択をしに控え室を出て、デブくて大きな花の中に向かった。


──デブくて大きな花の中──


曲面の壁沿いに植物と石が並んでおり、

奥には、目玉のピアスとチョーカーを身につけた、禿げたお爺さんが立っていた。


「あの不気味な人だれ?」リヨクはグオに小声で聞いた。

ヴァルの先生だよ。トリケラトプスの角を折ったことがあるらしい。若い時だけど」

「え、あんなに細いのに?」

「リヨクっ聞こえるよ」

「ごめんっ」


──ヴァルのお爺さんは説明し始めた。


「バトルに持って行けるのはこの中から、3つ。


植物はすでに成長しているものでも良いし、タネのままでも良い。

ただし、この中にないものを会場に持ち込んだり、3つ以上持ち込んだとわかった場合、腕を《《引きちぎる》》。以上じゃ。


全員選び終わったらゆうてくれぃ」



──「あ、あった!」リヨクは、『芝』のタネを3つ手に取った。


「グオ…」リヨクは小声で話しかけた。

「なに?」

「大丈夫だよね」リヨクはグオに手の平にある芝のタネ3つを見せた。

「うん、同じものでも3つなら大丈夫だよ」

「よかった。ありがと」


──「終わったかの? それじゃ、荷物を全てここに預けて、この服に着替えてくれ。全員着替えたらゆうてくれぃ」


──「よし、準備が整ったようじゃの。それではルールの説明をする。


えー、まず、決められた植物、石の中から3つ……これはさっき言ったの。


勝利条件は、相手を戦意喪失させる、または、動けなくすること。


そして、22分以内に決着がつかんかった場合、審査をして下さる先生方のポイントにより勝者を決定する。以上! 健闘を祈る」



──1年生の予選が始まった。


「ぶっ飛ばしてくる!」と言い、オウエンは入場した。


「第5試合ゾクニカVSオウエン、向き合って〜始め!」


「お、始まった」と前のめりになるユウマ。


ゾクニカは開始早々、葉っぱのナイフで切り掛かった。

しかし、オウエンは、素早く後ろに下がり身かわした。


「あぶなっ、やるー」ユウマは、拳を作り見入っていた。


ゾクニカはまたオウエンに向かってナイフを突き刺した。しかし、何ど刺してもオウエンはスッスッスと避ける。


「あいつ、笑ってる」と言うユウマも笑っていた。


オウエンは、ゾクニカにボディーブローを決め勝利した。



試合を終えたオウエンと3人はハイタッチした。


「余裕だった?」とユウマ。

「うん、全然物たんないよ」とオウエンは、肩をすくめた。


──「ユウマくーん」


「フゥ。行ってくるよ」


──「第7試合ルエロVSユウマ、向き合って〜始め!」


ルエロは、風植物を扱い、ユウマに強い風を送った。


「あれじゃユウマの得意な火使えないな」とオウエン。


ユウマは、腕で顔を隠しながら前に進んでいく。

しかし、ルエロは、ポケットから砂を取り出し、風に乗せた。

顔に砂がかかったユウマは、ゴロンゴロンと転がった。


──オウエンは転がるユウマを見て横で爆笑している。


ルエロは、芝を成長させると、ユウマにどんどん巻きつかせていく。

──すると、暴れていたユウマはバタンと力が抜け倒れた。


「先生! 勝ちましたー!」とルエロが叫ぶが、先生は試合を止めない。


ルエロは、え? という表情をした後、恐る恐るユウマに近づいていく──ブワッ。


突植物《ゼズ》がルエロのお腹を貫いた。


「えっ!」と立ち上がるリヨクとオウエン。他の観客も立ち上がった。


「勝者、ユウマ!」とメヒワ先生がユウマの手をあげるなか、ルエロは、先生たちに連れて行かれた。


「あの子、大丈夫なの?」とリヨクはグオに聞いた。

「あれぐらいなら大丈夫。ヘチ先生が治してくれるよ」


──そして、リヨクの番が来た。


「よし」と気合を入れるリヨク。

3人に応援される中、入場した。


──「第7試合リヨクVSクロスケ、向き合って〜始め!」


リヨクは、全く緊張していなかった。

なぜなら、このクロスケが弱いことを知っていたからだ。


試合が始まるとクロスケは突進してきた。


リヨクは、手のひらをクロスケに向け怯ませると、その隙に芝のタネを地に撒いた。


リヨクが何もしてこないとわかったクロスケは、また突進してきた。


リヨクは、クロスケが目の前まで来ると、

「芝アッパー!」と言い、増殖が完了した芝を一気に上に成長させ、クロスケを上に持ち上げた。


降りて来れないクロスケは負けを認め、リヨクは勝利した。


「さすが成長1位って感じの戦い方だったね」とグオ。


試合を終えた3人は、グオの試合を観客席で待っていた。


「グオ、がんばれ!」

「うん!」


入場してきたグオの対戦相手を見て3人は驚いた。


「え! グオの相手って、シユラだったの!?」リヨク。

「まじか」ユウマ。

「おー、楽しみ」オウエン。


──「第32試合グオVSシユラ、向き合って〜始め!」




──『ポァ』第1予選から一週間後。


ユウマとエーテルは、学年ランキング入りしており、旧楽園の子たちから一目置かれる存在になっていた。


リヨクは、シユラがヴァルの学年ランキングを睨んでいるのをみて、自分が勝った気になっていた。


〝火 5位ユウマ

風 5位エーテル〟


「ユウマ! また順位上がってるよ、5位だって!」

リヨクは、シユラに聞こえるようわざと少し大きな声で言った。


「ほんとだ、多分これ使いこなせるようになったからかな?」

ユウマは、自分の首にヘッドホンのようにかけてある、オレンジ色の植物を指さして言った。


「それってランキング入りしたお祝いにって、メヒワ先生がくれたやつだよね? どうやって使うの?」


リヨクは、ヘッドホンのような植物を不思議そうに見ながら言った。


「みてて──《ヴァル》」

ユウマは、手から火を出した。


近くにいる子たちはみんなユウマに注目し始めた。


「え? 今、手から火出さなかった?」と驚くリヨクとオウエン。


ユウマは「ふふん」と笑い、片手でヘッドホンのような植物を指さし、もう片方の手のひらを見せてきた。


「この《メブト》っていう植物と一体化したんだ。完全じゃないらしいけど」


ユウマは、それから、棒のような植物を生やして燃やし、火の剣を構えるヒーローのようなポーズをとった。


「ファイアー!」とユウマ。


「それってファイアソードの真似?」リヨクは笑いながら言った。


「そう、いいだろ、これ」ユウマは、自分の手を見ながら言った。


「ユウマ、シユラより火の使い手になったんじゃね?」オウエンが言った。


ユウマは、植物の皮を顔に包帯のように巻いているシユラを見て、「いや、まだ負けてるな」と言った。


──グオが来た。


「え、グオ? ケガ治ってる……」と驚くリヨク。


「うん、あの後、医療の街『ミーウ』に行って繋いで貰ったんだ。完全に元通りさ」


「不死身のグオだな」オウエン。

「完全に死んだと思ってた」ユウマ。


「もー大丈夫。シユラにしてやられて悔しいけどね、みんな、敵討頼んだよ」




──「それでは、植物学フィトヒュス 植物術実践を始めます」



──「《火浮ヴァルキュア》、ですよ? 火は十分に理解しているので浮かせるはずです」


「《火浮ヴァルキュア! 》あー、ダメ。また消えた」


リヨクは、火を浮かすのに苦戦していた。


「リヨク、まだできないのかー?」とドヤ顔で、火を上下に浮かすオウエン。


「あいつら笑ってる」とオウエンはシユラたちを指さした。

「ほっとこ」とリヨクは、オウエンの指を下げた。


──「ハァ…ぼくにはムリ。ヴァル向いてないよ」

リヨクは、諦め、芝生に座り腕組みをした。




──全授業が終わり、葉っぱを使って4階から1階に降りていく道中──


「おれは{イーデランガおまえ}といつ戦えるんだー」


オウエンは、2階にいる、茶色い巨大な獣を見ながら叫んだ。


すると、ほとんど同じタイミングで降りていた、シユラが、「イーデランガと戦えば死んじゃうよ?」とオウエンを煽った。


「あ? おまえはむりでもおれは勝てるんだ」オウエンは、目を細めて言った。


「口だけだね」シユラはニヤッと笑いながら言った。


「は?」


──空中で口喧嘩を始めるオウエンとシユラ。


「じゃあ戦わせてくれよ、おれが先生に頼んでもダメって言われたんだ、かわりに言ってくれるのか?」


オウエンは、シユラの葉っぱに飛び移りそうな勢いで言った。


「じゃあ、アルドに行ってイーデランガと戦ったらいいだろ」シユラ。


「アルド?」と首を傾げるオウエン。


その時、グオがぼくらに追いつき、「何話してるの?」と言った。


すると、シユラは降りるスピードを上げ、去っていった。


「あいつ、まだグオにビビってるよ。やっぱまぐれで勝ったんだ」とユウマは、上から下にいるシユラたちを見下した。

loading

この作品はいかがでしたか?

8

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚