次に目を開けた途端、視界に入ってくるのは部屋の明かりだった。あれ?俺は確か、鍵を探そうとして…。そうだ、結局あの後鎖に登って行って、丁度落ちたら死ぬ高さまで行った時に錆と雨のせいで滑ってしまったんだ。
「頭いてぇ…」
落ちた衝撃のせいだ。仕方がない。三角頭のお願いを達成出来なかった…悔しい。……それよりこの部屋は誰の部屋だ?こんな所今まで見たことねぇな…。トリスタの部屋でもないし、ナースの部屋でもない。一体誰の部屋だ?俺が辺りを見渡していると、奥の方からコォォという音が聞こえた。俺の寝ているベッドに三角頭が近づく。そして隣にあった椅子に腰掛けて、紙を俺に見せた。
ー目覚めたか?ー
「あ、嗚呼…あの、ここは?」
ー私の部屋だ。いつもはトラッパーの部屋で世話になっているから知らなかったな。ー
「三角頭の部屋…」
見渡せば見渡すほど、彼の好きそうな物がズラリと並べられていることに気づいた。床は所々錆びていて時々軋む…。
「あの、俺落ちた所から記憶がなくて、あの後どうなったんですか?」
ー頭から血を流して死んでいた。ー
「え」
俺、死んでたの?
ーでもエンティティがすぐに不思議な力を使って君を生き返らせた。傷が塞がっているのはそのせいかもしれない。ー
服に血が染み付いてたのに傷が無かったのはそのせいか…しかしエンティティが言ってたのが、本当だったとは…『死に救済は無い』だっけ?改めて実感したぜ。
ー本当に助かって良かった。ー
その文を見せながら三角頭は俺の手を強く握った。よほど心配してくれていたのか、その手は少し震えていた。
ー最初からハードなものを君にさせてしまった私の責任だ。今日はここでゆっくり休むといい。ー
「三角頭…」
時々こいつが本当にキラーなのか疑ってしまう時がある。俺が今まで見てきたキラーの中で一番心配性な気がする。こんなに自分の事を思ってくれる感覚なんていつぶりだろう…。
「ありがとう。そうさせてもらう。」
ーもちろん。ー
そう書いたはいいものの、彼は少しモジモジとしていた。どうしたんだ?と声を掛ければ、三角頭は震える手で何かを書き始めた。あの彼がここまで緊張するなんて…俺、相当やばい事しちまったんだな…。と思いながら、彼が書き終えた紙を見た途端、そんな感情が吹き飛んだ。
ー頭を、撫でてほしい。ー
「……え?」
ー今朝、シェイプの頭を撫でているのを見て、恥ずかしながら少しやきもちを妬いてしまった…君が嫌なら構わない…。ー
少し下を向くように三角頭は肩を落としてしゅんとしてしまった。え、は?何、やきもち?可愛すぎるんだけど…。頭を撫でてほしい?そんなのいくらでもやってやるぜ!でも三角頭の頭は鉄だしなぁ…撫でられてる感覚は無いと思う…どうしたら……あ、そうだ!
「三角頭、ちょっと立ってくれ!」
そういうと彼は素直に椅子から立ち上がってくれた。そして俺もベッドから降りて、彼の胸板まで飛び込む。
「っ!」
「ははっ、どうだ?ハグだぜ!」
ーどうして、こんな?ー
「だって、俺があんたの頭を撫でても、あんた自身は撫でられてる感覚はねぇと思ってな。まだシェイプにもハグはしてねぇ…あんたが初めてだよ、三角頭」
「……」
「あ、こういうのが嫌ならすぐに止めるから!」
そういうと三角頭は俺の背中に手を回してくれた。手袋からも伝わる大きな手、胸板から聴こえる心音…全てが心地良すぎて眠ってしまいそうだ。暫くして彼は満足したのか、俺から離れた。
「またいつでもやってやるから!」
ーありがとう。こんな気持ち初めてだ。ー
「俺もだよ」
それから彼と一緒にパズルゲームをしたり、トランプをしたり思う存分楽しんだ。彼といると時間を忘れてしまう…こんな時間がずっと続けばいいのに…。
コメント
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最高の関係ですね😍