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吉田仁人は、佐野勇斗のことが好きだった。
ある教室の中、仁人は顔をうずくめて窓を見つめていた。
💛……、
目を瞑って考える。
いつからだったのかは、もう覚えていない。
初めて会った日から特別だったわけじゃない。最初はただ、よく笑うやつだなと思った。
誰にでも気さくで、距離感がおかしくて、少しだけ人の懐に入るのがうまい。
気づけば隣にいて、気づけば話しかけられていて、気づけば、自分の一日の中に勇斗がいることが当たり前になっていた。
そして、その当たり前が、いつの間にか手放せないものになっていた。
🩷「仁人ー!」
大学の講義が終わり、廊下を歩いていた仁人は、後ろから聞き慣れた声に呼び止められた。
振り返ると、勇斗が人混みを縫うように走ってくる。
💛「おっそ。何してたん?」
🩷「先生に捕まってた。お前は?」
💛「腹減った」
🩷「……聞いた俺が馬鹿だったわ」
💛「ひどくね?」
勇斗は笑いながら、仁人の肩に腕を回した。
近い。
いつも通りの距離。
周りの友人たちにも、二人は仲がいいとよく言われる。
実際、仲はいいと思う。
くだらない話をして、くだらないことで笑って、たまに真面目な話もする。
勇斗は仁人の前では、変に格好をつけなかった。
疲れたときは疲れたと言うし、落ち込んだときは黙って隣に座る。
そんな勇斗を知っていることが、仁人には嬉しかった。
自分だけが知っている顔がある。
そう思えることが、たまらなく嬉しかった。
🩷「今日、飯行こうぜ」
💛「いいけど」
🩷「やった。仁人と食う飯が一番うまい」
💛「お前、昨日も同じこと言ってたから」
🩷「だって本当だもん」
何のためらいもなく、勇斗はそう言った。
仁人は一瞬だけ言葉に詰まって、それから、いつも通りに笑った。
💛「……はいはい」
本当は、そんな簡単に言わないでほしかった。
期待してしまうから。
自分にとっては特別な言葉でも、勇斗にとっては、きっと何でもない言葉だから。
分かっている。
分かっているのに。
🩷「仁人?」
💛「ん?」
🩷「何、ぼーっとしてんの?」
💛「いや、腹減ったなって」
🩷「だろ? 早く行こうぜ!」
勇斗は嬉しそうに笑って、先に歩き出した。
仁人はその背中を追いかける。
いつか、この背中を追いかけることすらできなくなる日が来るのだろうか。
そんなことを考えてしまって、仁人は小さく息を吐いた。
今はまだ、隣にいられる。
それだけでいい。
そう思うことにした。
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コメント
1件
読んできました……🌀 仁人の「好き」、めちゃくちゃ伝わってきました。教室で一人で窓を見つめながら、勇斗のこと考えてるところ、もうそれだけで胸がぎゅっとなる。 勇斗が何気なく「本当だもん」って言うたびに、仁人の心が揺れるのが手に取るようにわかって、読んでるこっちまで切なくなりました。「今はまだ隣にいられる。それだけでいい」って思うしかないの、すごく苦しいけどわかるって思っちゃった…… 続き、どう転ぶんだろう。読みたいです🌙🤍