続き
「青山」
香月と別れ、廊下を歩いているところに声をかける人物がいた。
青山「和中の兄貴、どうしました?」
それは天羽組最強戦力の一角を担う、和中蒼一郎。
腕を組んだまま、青山に質問をぶつける。
和中「華太のことで、何か知っていることは無いか?」
青山「え゛っ」
和中「最近少々気になることがあってな。最近よく華太と話していただろう。知っていることがあれば教えろ」
そう聞かれた瞬間、青山の脳は猛スピードで回転を始める。
青山「(言ってもいいのかこれは…!?いや、だめだ。和中の兄貴に言ったら確実に野田の兄貴や阿久津のカシラに報告される!ちゃんかぶは絶対バレたくないだろうから、ここは嘘つくしかねぇ!いやでも和中の兄貴を黙せるか…!?)」
そして青山は覚悟を決め口を開く。
青山「ちゃんかぶが怪我してたんで手当てしただ けっすよ!特になんも変わりはなかったです!」(←嘘はついてない)
和中「……そうか。悪かった」
青山「いえ!」
そう言って和中は青山に背を向け、そのまま歩いて去っていった。
そして青山は安堵の息を吐く。
青山「……あっぶね………でもいいよな。嘘は言ってねえし」
そして青山も、和中とは逆方向に歩き去ってゆくのだった。
そして和中が向かった先。
それは今頃パソコンに向き合っているであろう自身の舎弟の元。
和中はその後ろ姿を目に止めて、真っ直ぐ向かっていった。
和中「華太」
小峠「和中の兄貴、お疲れ様でございます」
見る限りいつもと変わらない。
いつもと同じ表情、同じ声。
和中「お前が怪我をしていたと、青山から聞いた。怪我の具合はどうだ?」
探るように、和中は質問をなげかける。
小峠は、少し間を開けて答えた。
小峠「…大丈夫ですよ。仕事に支障はありません」
そう言って小峠はへらりと笑う。
和中「……そうか。ならいい」
和中は小峠の頭に手をぽんと置いて、そっと撫でてから部屋を出て、資料室へと移動していった。
だが小峠は知らなかった。
和中の質問にどんな意味が込められていたのか。
自分がどんなふうに答えたのか。
和中がなぜ資料室へ行ったのか。
自分の知らない場所で起きていることに、気がつくことが出来なかった。
和中「必死に隠そうとしているが……あまり俺を舐めるなよ、華太。…お前はよく顔に出る…………………そうですよね?」
野田「ああ。お前の言う通りじゃい、和中」
和中が向かった資料室にいたのは、幹部の野田一。
この2人は気がついていたのだ。小峠の異変に。鋭い感覚と頭脳をもつこの2人は、何年と共に過ごしている舎弟の異変を見抜くなんて簡単なことだ。
野田「青山や速水は騙せるかもしれねぇがなぁ…俺たちを出し抜こうなんざ、まだまだ早いってこった。で、なんだって?」
和中「仕事に支障はない、と、少々引きつった笑顔で言われました」
それを聞いて、野田は腕を組んでわかっていたという表情をし、口角を上げる。
野田「はん、やっぱりな野田。華太ちゃんは自分を追い込めば追い込むほどすぐに顔に出る。目上の人間に対してなにか嘘や隠し事をする時、あいつは決まって笑うんだよ」
和中「…兄貴も気づいてらっしゃったんですね。華太のその癖に」
野田「あたりめぇだろ。何年一緒だと思ってんだ?大事な弟の事情なんて顔見りゃ1発だ」
和中は少し考えてから、口を開く。
和中「…兄貴、このことは」
野田「言わねえよ。特にあの馬鹿ども(小林須永永瀬諸々)にはな。じゃなきゃアイツら、華太の秘密暴こうと暴走すんだろ。…知ってんのは俺たちだけでいい。華太が何を隠してるかは知らねえが、あいつも共有されるのは好かねえハズだ」
野田や和中、青山や香月はまだしも、小林や須永、永瀬などはデリカシーもクソもないため、この2人からは警戒されているのだ。性格上仕方がないことだが、小峠が絡むとなるとさらに暴走しはじめるため、2人は自ずと警戒心をMAXにしている。
和中「…俺が探りを入れます。いくら馬鹿とはいえ、他も勘づいていると思いますので、そちらの露払いはお願いします」
和中は少し俯いて、少し悲しげに口を開く。
野田「…おめぇも随分丸くなったもんな野田。特に華太に対しては、な」
野田がそういった瞬間表情が消えうせ、いつの間にかタメ語にすり変わる。
和中「それはお前も同じだろう。一緒にするな」
野田「その態度の変化が証拠じゃい、ボケ」
そんな二人の会話を、資料室の外で聞いている人影がひとつ。
?「今日は女の子をナンパしに行こうと思ったが……やっぱやめた。やっぱりなんかあると思ってたぜ華太。俺の視野は結構広いんだぞ?」
そう呟いて、その影は事務所へ一直線に向かっていった。
to be continued…
コメント
13件
やっぱり、野田ニキとわにきにはバレてましたか… ノンデリ3人組… 絶対に暴走し始める… 最後は…ナグニキ(ボソッ) やっぱり視野が広いですね
野田の兄貴と和中の兄貴は気づいていたんですね!大事な華太ちゃんのことならいち早く気づくなんて、彼のこと心配してくれる優しさが分かります!