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わをん
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#SixTONES
紅葉🍁🐥
3,620
ふっかが膝を上げる度に、開けっ放しの紫のランドセルの蓋はカチャンカチャンと鳴った。「はあ……照……まだあ……」
ふっかは手の中のスマホを見下ろした。仕事の時間が不規則な照に持たされたものだ。もう一度かけてみようかと手が動くが、やっぱりやめて、半ズボンの裾を握り締めた。きっと照は急いでこっちに向かっている頃だ。
二人が住むマンションの、玄関ポーチの中である。ふっかはスマホをランドセルの中に入れ、エレベーターから廊下にわたって誰もいないことを確認すると、ポケットの中に手を入れ、内側からぎゅっと股間を押さえた。そのまま足踏みすると、紫のランドセルが先程とはまた違う音を立てて揺れた。
(照…あとどれくらいかなあ)
学校を出る時から、いや、帰りの会の時からたくさん我慢していた。学校のトイレは暗くて汚くて他の子にも見られるし、できることなら避けたいから、家までならすぐだと我慢して急いで帰ってきたのだ。まさか照がいないなんて。やっと出せるつもりになっていたおしっこは性器のギリギリまで詰まっている。それを出口で握り潰しながら、ふっかはもう何度目か、身体をくねらせてランドセルを降ろし中を探る。
こんな日に限って、家の鍵も忘れていた。もう何度も探した前のファスナーの中。片手はポケットに入れたまま、もう片方の手だけで奥まで手探りで探す。内側に貼られた皮に触れるだけだった。やっぱり無い。たまらなくなり腰を揺らす。我慢の限界はとっくに超えていた。
──すぐそこの玄関に、使い慣れたトイレはあるのに、入れない。
「んん……照……おしっこ……照」
ふつかはもはや蓋を開けたままのランドセルをコンクリートの床に放り出した。ポケットに手を突っ込んだまま、狭い玄関ポーチの中を歩き回る。昼休みを最後にトイレに行っていない。給食を早めに食べて片付け、まだ人気のないトイレで隠れるように個室に入って用を足した。あの時、給食の牛乳はまだおしっこになっていなかっただろう。避けずに、帰る前にも行けばよかったのだ、あのトイレに。
オートロックの部屋番号を押しても反応がなかった時は、知らない人が一緒に入れてくれた。その時にはトイレのことで頭がいっぱいで、照がいないかもしれないなんて、思いつきもしなかった。エレベーターで自宅まで辿り着き、何度チャイムを鳴らしても、玄関ドアを叩いても物音一つ聞こえなかった。慌てて開けた紫のランドセルのファスナー内に鍵がないこと、スマホがあることを同時に理解し、焦る気持ちを落ち着かせながら、反対に身体はゆっくりと足踏みを始めながら、すぐに電話をかけた。───トイレに行きたいから、とは言えなかった。ただ、もう玄関にいるから早く帰ってきて欲しい、と伝えたし、照は、今すぐ帰るから待ってろ!と元気な声で言ってくれた。急いで帰ってきてくれると思う。照はふっかのお願いに甘いから。
「さいあくぅ……ひかるぅ……もぉう……ひかるはやく……」
ふっかは激しく足踏みをしながら、ポケットに入れていない方の手も、ズボンの上から股間に当てた。
「ふーっ、……っくぅ……おしっこ……」
急に漏れそうな感じがして、きつく両太腿を交差する。それでも意に反して、じわりと出てくる気配。更に抑える手と足に力を込めると、それ以上の決壊は免れた。
「うっ……照……はやくぅ」
膝が崩れ落ちて座り込む。上半身がゆらゆらと揺れる。おしっこがしたくてしたくて、涙が出てきた。──ここでお漏らししてしまったら、どうしよう。
******
エレベーターを降りて角を曲がると、ふっかの小さな背中が見えた。開け放した門扉の中で、ランドセルを下ろして座り込んでいる。照の足音を聞くと、弾かれたように顔を上げ、振り向いた。
マンション近くのコンビニで買ってきたプリンを持ち上げて見せる。鍵を渡し忘れたお詫びだ。ふっかはコンビニ袋には目もくれず、照に何か訴えるように険しい顔をしているだけだった。怒ってるんだろうか。急いで帰ってきてやったのに。
「ふーっか」
小さく丸まった姿に歌うように声をかけると、
「はやくぅっ、ねえっ」
ふっかはしゃがんだ身体を忙しなく揺すりながら、細い声で叫んだ。──泣いている?
「えっ?どうし──」
「鍵っ!早く開けてよぉ」
近付いてよく見ると、ランドセルは蓋が開いたまま投げ出され、両手は半ズボンの前に回っている。片方の膝を立て、きつく交差したふくらはぎと一緒に、小さく突き出したお尻が上下に揺れている。
「あっ、早くぅ……」
照はようやく状況を察し、僅か数メートルの距離を小走りにふっかの元に急いだ。
「ふっかっ」
「もお、はぁやくぅ……」
照が玄関まで辿り着くと、ふっかは同じことを繰り返し、涙でぐしょぐしょに濡れた顔を上げた。慌てて鞄から鍵を探る。
ふっかは両手で股間を抑えたまま内股に立ち上がり、照の脇で焦れたように足踏みを始めた。
「ふっか、トイレだったのか」
ようやく手に触れたそれを鍵穴に急いで差しこむ。ふっかは蒸気した頬を更に真っ赤にして、頷くとも俯くともとれない微妙な首の曲げ方をした。その間にも足は忙しなく足踏みを繰り返している。白いソックスがしゃりしゃりと擦れる。
「遅くなってごめんなっ。ほら早く行けっ」
素早く鍵を開けドアを引っ張ってやると、ふっかはすごいスピードで僅かに空いた隙間に細い体を滑り込ませた。スニーカーを足で玄関に脱ぎ捨て、片手は股間を握りしめたまま、ふっかは入って右側の扉に飛びついた。
「あっ、あっ、くぅ、あっ、……」
マットを踏む不規則な足音と、小さな腰を包むベルトの金属音が響く。そしてふっかの悲鳴のような断続的な声も。照は玄関ドアを閉め、鍵と財布とコンビニ袋を靴棚の上に置くと、開けっ放しになっているトイレのドアをそっと覗き込んだ。
丸見えの真っ白い便器の前で、それに向き合ったふっかがぱたぱたと飛び跳ねている。まだ用を足していない。
「ああ、あっ、あ、も、」
小さなお尻を突き出して、骨ばった膝を擦り合わせながらズボンの前で両手を動かしている。ファスナーが降りないのだろうか。
「ふっか?手伝ってや──」
ふっかの後ろから一歩近寄り肩越しに覗き込むと、ふっかが握っているところの少し上、下腹部がズボンの上からもわかるくらい、ふっくらと膨らんでいる。ファスナーの金具がその中央で、ふっかの動きに合わせて控えめに揺れていた。
「あ……」
声をかけたが、言い終わらないうちにふっかがぎゅっと身を固くして動きを止めた。
数秒の沈黙の後に、太腿の間に一筋の液体が静かに流れ、やがて両脚に分かれた。左右の白いソックスに黄色く線を作る。そして、控えめな水音が始まった。
ふっかは片手でズボンの前を押さえたままで、それでもなんとか溢れるものを止めようとするように腰に必死に力を込めて、捻ったり持ち上げたりと動かしている。
「くぅ……ふぅっ……んっ」
必死の抵抗も虚しく、水音が太くなり、半ズボンのお尻回りが一気に染まった。そこからふくらはぎをいくつもいくつも太い水流が流れ落ちる。水を吸ったマットの上に、更に水分が叩きつけられる。
「はぁーっ、はー、はー、」
細い肩が上下して、荒い息が狭い個室に響く。とりあえず今からでも便器に座れば、と肩に手を置いたが、ふっかの身体はふらりと傾いだ。それを支え咄嗟に足を踏みかえると靴下がじゅんと濡れた。そんなことはもうどうでもいい。
「おっと」
「っふ……は」
ふっかは既に抵抗を諦め脱力している。目の周りが赤くなっていて、やはり排泄の快感は感じているのか、とろけたような表情をしていた。
「えっと……間に合わなかったか」
照がそう言うと、ふっかは唇を歪ませ、突然しゃくりあげた。
「ひかるのっ……、ひかるのせいだからねっ……っく、ひ」
「うん、うん、おれのせいだよな」
「俺は、ちゃんと、……えっと、ふぅ、が、ガマン、してたのに」
「ん~、ごめんな、頑張って我慢したのにな。急いで帰るって言ったのにな。しんどかったな」
脱力するふっかを引き摺って徐々に移動し、腕を伸ばしギリギリで届いた浴室のバスタオルを、まずふっかの頭の上からふわりと被せて、その上から抱きしめた。
しばらく抱き締めていると、ふっかは少しずつ呼吸が落ち着き、細い温かい背中は照の下でゆっくり上下した。そしてふっかはその姿勢のまま、やがて静かに泣きだした。
一緒にお風呂に入って、ごめんな、と繰り返すと、ふっなは困ったような顔をしていた。学校でうまくトイレに行けない気持ちは、照にも分からないこともない。それに、ふっかの帰宅時間と合鍵は、常に気をつけておくべきだった。
それでも、今日の出来事は、ふっか自身の失敗としてふっかの記憶に刻まれるだろう。
「上がってプリン食べるか」
お湯から手を上げて、ふっかの白く水滴の浮かぶ頬に触れると、一瞬照を恥ずかしそうに見た後、頷いた。
コメント
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うわあ、読んでるこっちまで息が止まるような切迫感でした……。ふっかの「はやくぅっ」連呼と、ぎりぎりまで我慢してるのに間に合わないもどかしさが生々しくて、胸がぎゅっとなりました。最後、照が抱きしめて一緒に風呂に入ってあげるところでようやく安心できたけど、学校トイレの話とか、合鍵の反省点とか、この先ふっかの心にどう残っていくんだろうな……。設定の細かい心情描写が素敵でした。