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「友達になろ!」
その言葉から始まった僕の物語。
朝、陽の光がカーテンの隙間から薄暗い部屋を照らす中、僕はアラームの音で目を覚ます。最初に見える光景はいつもと変わらない天井だ、僕はいい加減腹が立っていた。いつも目を覚ますと昨日と変わらない天井だけが僕の視界に入る。僕は、心の中で何か物足りなさを感じているのかもしれないと、天井を眺めながら考える日々。ふと、アラームを止めていないことに気づき手を伸ばす、いつもより何十分も早くセットされたアラームのタイトルは、「高校入学」と書いている。僕は体を起こし呟いた…「はぁ、また一日が始まる。」朝食を食べ、今年から着る新しい制服に身を包みドアノブに手をかける、「行ってきます」。
ドアを開けると夜から降っていた雨が止んで水溜まりを陽の光が照らしていた。
本当は地元を離れ一人暮らしをするつもりだったが親に止められ、行きたくもない学校に入学することになった。僕は、親が憎かった、嫌いだった。 兄ばかりを溺愛し、小さい頃から僕に興味を示さず僕を放置していたからだ。僕の家は四人構成で成り立っていた。父、母、三つ上の兄、そして僕。僕が放置され始めたのは五歳ときだ。
当時八歳だった兄は小学一年生にして成績優秀、人当たりもよく明るい人だった、それに比べ僕は、友達が居ない、暗い性格。まさに天国と地獄を人で表したような真逆の性格。父や母は、最初こそ心配し、寄り添ってくれたがいつまでも変われない僕を置いて、兄のところに行ってしまった。ただ、兄だけが僕を心配し、諦めないでくれた。僕はそんな兄が誇らしくて、優しくて大好きだった。兄の言葉はいつも優しく僕の心に光を与えてくれるものばかりだった。僕は幸せだった…兄が死ぬまでは、兄の死因は交通事故。聞くと、子供が引かれそうになっているところを兄が庇い、死んでしまったらしい。僕は、涙が出なかった…ただひたすら酷いことを考えていたんだ。「兄が死んでしまった今、母さんや父さんの注目は僕に来るっ!」こんな時にこんなことを考えてしまう僕が僕は憎かった。ただ、母さんや父さんの注目が浴びるどころか、父は酒に金を使い、母さんは一日中布団にこもっていた。 そんな時、僕が一人暮らしすると言ったら目の色を変えて迫って来た、「ダメよ!母さんや父さんを置いていかないでよ!あんたはずっとここで縛られとくのよ!」僕は、逆らうことが出来ず今に至る。
そうこうしてるうちに学校の近くまで来ていた。
四月の朝は心地良く太陽が暖かい、学校の玄関口まで行ってみると、記念写真を撮っていたり、友達を作ろうと話しかけて歩いている人々がたくさんいた。僕は人の少ない壁側に身を寄せ一人本を手に取っていた。一息付き、読み始めようとした時、僕の肩に手が置かれた。僕は驚き後ろを振り返る、そこには優しい目で僕を見て微笑む男子がいた。「驚かせてごめん」僕は突然のことに頭が追いつかず慌てて「だ、大丈夫です…」と返した。男の子は嬉しそうに微笑み僕を見つめている、僕の頭の中は真っ白で何も考えることが出来なかった。
その人が何か話そうとして口を開いた瞬間、扉が開きチャイムが玄関に響いた。僕はお辞儀をし、逃げるように入学式の席に着いた。学校の先生の挨拶も校長先生の話も頭に入って来ないまま、入学式が終わった。昼頃になり朝よりも人がいて記念写真を撮って騒いでいた。朝のうちに仲良くなった人達が集まり、昼食を食べに行くようだ。僕には関係ない、朝も今も一人のまま家に帰るだけ、僕は変わらず暗い性格で友達もいない。多分一生かかっても友達ができることはないと思う。
僕は一人呟く「暗い性格で引っ込み思案な僕に話しかけようとする人なんて…」そこで僕は言葉を切った。朝話しかけてくれた人がいた…それだけは紛れもない事実。僕は、考えることをやめ学校に背を向け歩き出した。朝とは違い昼は少し肌寒かった。家に着くと、母さんや父さんは出かけていて誰もいなかった。机の上には起きて紙があった、「お母さんとお父さんはしばらく家を開けます。私たちがいなくても一人で生活できるでしょう?五歳の時だって一人でご飯を食べていたしね、しばらく家をよろしくお願いしますね。」読み終わると、怒りや喜びといった感情が混ざった。僕に五歳の時した仕打ちを自覚しているのだったら、なぜ放置した。どうして掘り返したんだよ。怒りが頭のてっぺんに辿り着く前に嫌いな人達の顔を見なくて済む…と考えた。僕は紙をちぎって捨て、昼食を食べずにベットに転がった。冷静に考えて見れば一人暮らしにはメリットデメリットが同じ量同じだけあることに気づいた。メリットが親の顔を見ないで済む、自由になれる。デメリットがバイトが多くなる、また一人になる。一人暮らしはもう少し考えてからしようと思った。考えがまとまって気が抜けたせいか僕は暗闇に落ちていた。インターホンの音で目を覚ますとカーテンの隙間からもれ出している夕日が部屋をオレンジに染めていた。僕が寝ていたことに気づくまもなく、インターホンがなりやんだ。僕は慌てて玄関に行き、ドアを開けた。そこには今朝玄関であった優しい目の男の子がいた。