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虚 無 天 .
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薬 チャン ❕ 💭
80
リビングのソファで、なつはいるまの腕の中にすっぽりと収まっていた。いるまは満足そうに、なつの髪を何度も撫で、愛おしそうに頬を寄せてくる。
「なつ、幸せ? 俺といて、楽しい?」
「……当たり前だろ。……俺も、いるまのこと大好きだし」
なつは顔を上げて、営業用ではない、心からのものに見える「完璧な笑顔」を浮かべた。
その瞬間、いるまの瞳がぱぁっと明るくなる。なつのこの笑顔さえあれば、彼の情緒は安定し、世界は平和に保たれる。
でも、なつの胸の奥では、どろりとした何かが澱のように溜まっていた。
(……あぁ、また嘘ついた)
本当は、勝手にスマホをチェックされるのも、友達からの誘いを断らされるのも、息が詰まるほど苦しい。
「どこにも行かないで」と泣かれるたびに、自分の足首に目に見えない鎖が増えていくような感覚。
叫び出したい。一人になりたい。自由になりたい。
けれど、そんな本音を少しでも見せれば、目の前の男はまた壊れてしまう。
あの絶望した顔、震える声、自分を責める姿。それを見るくらいなら、自分の心を押し殺して「大好き」と笑う方が、ずっと楽だった。
「なつ、手が冷たいな。もっとくっつこうか」
「……ん。……ありがとな、いるま」
なつは自分からいるまの胸に顔を埋め、視線を隠した。
暗闇の中、自分でも気づかないうちに、本音をしまう心の箱にまた一つ、頑丈な鍵をかける。
(いいんだ。……これで、いるまが笑ってくれるなら。……俺の気持ちなんて、二の次でいい……)
感情を殺し、色を失っていくなつの瞳。
抱きしめ合う二人の影は、夕闇の中で一つに溶け合っているけれど、なつの心だけは、誰にも届かない深い深い場所へと沈んでいった。
コメント
1件
うわあ……第6話、胸が苦しくなるエピソードだったよ…😢💔 なつが“完璧な笑顔”で本音を♡♡♡てしまうシーン、読んでてこっちまで息が詰まった。 いるまの安心した顔と、なつの心が沈んでいくギャップが切なすぎるよ…。 「嘘ついた」「鍵をかける」って表現がもう、読んでて胸が締め付けられたよ😭 この関係、ちゃんと幸せになる日が来るのかな…次の話も絶対読みたい!