今回は長いです。それでは本編へへへへへへ
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破 第二十三話『何の為に戦う?』
眩しく光る星に照らされる河川敷よ。
目の前にいたる、真なる心をついてくる少女は一体何者だ?
アイルランド「君はどうだフランス?」
「君は何の為に戦う?」
フランスは自然と自分の目が見開くのを感じた。
う、と言葉に詰まる。何の為に戦うなんてずっと前から決まっていた筈なのに、、、 何も考えていなかったように空っぽ感じる。
アイルランドはじっとその答えを待っている。本当に近くで見ると人形らしく、宝石でできたような目でフランスを見ていた。
なかなか返事を返せないフランスを悟り、アイルランドはゆっくり瞬きをし、やがてまた前を向いた。不意にこんな事を言い出した。
アイルランド「女ってのはいつの時代も男と同権を握れないんだよ。」
フランスはすっ、と音を立て息を吸った。それに気がついてアイルランドは慌てて弁明した。
アイルランド「で、でもね今の時代は近代化が進んで、兵も傭兵だけでは足りなくなっているのも現状なんだ。工場やとある一家庭でも戦争に立ち向かわなければいけない。男は前線へ女は工場で武器を作る。でも私は女性でも能力があれば、より国家に貢献できると思うんだ。」
フランスは危険な発想だと思った。女性も戦争に加担できる。確かにそれは女性は今までと異なり、国に貢献できる事かもしれない。男と同じ同権を持つ事かもしれない。
だがそれ以上に数年前まで普通の女の子として暮らしていた子が、アイルランドが、武器を持ち戦色に染まるとゆうのは異常なのではないのかと思った。そう考えた時初めて戦争の骨にフランスは触れた気がした。
アイルランド「フランスもそう思わない、、、?」
半分的中。予期通りの返しにフランスは抵抗もありながら頷いた。
国家に貢献できる。それならば能力ある人間は、女性でも戦地へ赴く。フランス自身がそうのように目の前のアイルランドもそうだ。血生臭い戦争の中で目的を果たす為。
アイルランド「、、、でもやっぱり女が戦場に立つとゆうのは男からして陰湿の目線が浴びせられると思うだろうし、女だからと煽られると思う。それでも力を持って故郷が独立できるとゆう証明になるのなら私は___
女をやめる。」
アイルランドの笑顔がこちらに向けられる、その吸い込まれそうな眼にフランスは目を丸くした。その真剣な意思に心打たれた。初めて出会った時殆ど無口だった彼女だからこそ、この発言は表裏なく本気だと悟った。
アイルランド「、、、そう言えばフランスって、、、、イギリスに故郷の街を燃やされたんだよね、、、?」
足を曲げ、首を傾げ問いて来るアイルランドにもういっその事、吐露してしまおうとフランスは思った。アイルランドから目線を逸らしあの光景を思い出す。
フランス「あぁ。燃やされたのは自分のじゃなくて、、、親友の街だけど、でもあそこは第二の祖国みたいな所だったから燃やされた時は。」
言葉に喉が詰まらせた。言いたくないんじゃない。言えない。そうだ爆弾により原型も無くした人々、慟哭と血が交わる街。そこに光が来たかと思えばグレード・ブリテン・イギリスに全て焼き尽くされた。今に思い出すと沸々と心の奥底に蝕む憎悪が全身を支配していくのがわかった。
___ぽん。
憎悪に飲まれていると、暖かい感触が頭の後ろで感じた。その方向を見上げるとアイルランドが優しくフランスの頭を撫でた。
アイルランド「辛いなら思い出さなくて良い。でもそれは決して忘れるべきじゃない代物だ。そこから起点に前に進めば良い。」
アイルランドは妙に大人びている。まるで子供に話しかけるように優しく言うアイルランドに男であるフランスはドキドキしない筈がない。フランスはゆっくりアイルランドから離れた。
アイルランド「、、、ってことはさ。フランスもイギリスに、、、復讐したいと思っているの?。」
まるで真実を知っているように問いだす。同じ心境。同じ敵を前にしてアイルランドはフランスにグイグイと言い詰める。
フランス「うん。」
つい子供びた返事になってしまったが事実だ。フランスがここに居るのは帝政ドイツをイギリスを殺す為。
フランス「俺は多分そうしないと俺の戦争は、、、終わらないと思う。」
アイルランド「、、、じゃあ無理だな。」
バッとアイルランドの方に振り向く。いつになく___笑っていた。
アイルランド「フランスがイギリスを殺そうとゆうのであれば私が貴方を殺してでも止める。アイツを殺すのは私だ。」
フランスも、アイルランドもインドも、はたまたオーストラリアでさえも、もしかしたらイギリスを憎んでいるかもしれない。
考えもまとまらず、妙な間を置いてフランスは答えた。
フランス「、、、じゃあその時はよろしく。」
アイルランド「うん。それじゃあ互いに途中では死ねないね。」
アイルランドの顔には異様な光が消え、いつもの無邪気な笑顔の少女の顔が咲いていた。
___守りたい。
不意にそんな事を思った。新たなる妙な感触に触れた気がした。
アイルランドの優しい笑顔。
守れなかった、ベルギー、街の人達。
抵抗ができなかった自分。
今でも進軍し続けている、死。
あの時、無力だった、何もできなかった人々の分まで、守りたいと思った。
今でも屈辱を味わって殺されている人をもう二度とないように人を守りたい。
憎悪とは、、、敵を殺すとは、違う欲求が芽生えた。
それが自分が戦う理由だ。守る為に自分は戦うのだ。
フランス「俺は、人を守る為に戦う。」
それがフランスが思う正確な答えだ。燃やされた故郷、助けられなかったベルギー、無力だった自分。時を戻せないけれど、未来の時は変えられる。
アイルランド「うん。」
初めてアイルランドは頷き満足そうに満面を笑みで応えた。もしかすると初めからアイルランドはこの答えをフランス自身から吐き出させるように仕向けていたのかもしれない。
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〜時は遡り、夜更け 北海に浮かぶ英国艦艇にて〜
「、、、英国艦で酒を呑めるのが英兵海軍の特権なのだがな。日帝よ。」
獣耳がピクっと動く。
後ろから、耳に馴染んだ落ち着いた低い声。
手にかけているフェンスに洋燈の優しい光が映っている。
振り返り、目に入るのは、いつものモノクルとシルクハットを身につけ、紳士的にたたずむ男性。
彼こそが、この艦艇の提督であり、毎日紅茶が香る国を担う者。大英帝国。
日帝「すまないな。今宵の月は綺麗な故、少し酒をな、、、。」
大英「、、、今日は休日だぞ。寝ろ、、、。」
そう言いつつイギリスは、日帝に近づき隣に立つ。
日帝「ご心配有難う。だがそれは英国もそうなのじゃ無いのか?」
凛と大西洋の暗闇に沈む水平線を眺める聖人顔に返した。
哭く風に揺れる髪からイギリスの目線だけがこちらに向く。
一つだけ瞬きをし、日帝に察せと言っているようだった。
しばしの間をおいてイギリスは話題を変えた。
大英「、、、英海峡の夜空は綺麗か?」
まるで独り言のように問う。日帝も水平線から目線を変えずに静かに答えてみせた。
日帝「あぁ日本では見られない、美しい星空だ。」
北海に浮かぶ星々が暗闇の中で光っている。
絵の具を飛ばしたかのように様々な星達が夏夜を囲んでいた。
二人は静かにそれを眺めていた。まるで時が止まってかのように。
お猪口に注がれてある日本酒に星と日帝の面影が投影されていた。
大英「、、、日も出ない時から酒って、、、ホントいい御身分だな。」
日帝「、、、、、、そうだな。昔に比べれば私も変わったな。」
イギリスは小さく「えっ」と声を出してしまった。
茶化すつもりで言った言葉が皮肉にも帰ってきてしまったようだ。
大英(、、、珍しい。指導の事以外、殆ど口を開かないこのヒトが、、、。)
日帝は微笑みながらお猪口に口つけ呑み込んだ。
日帝「部落差別といって、世間からの目はいつもきつかった、、、。」
鉄でできた、冷たいフェンスに手を乗せて顔を乗り出し、少しばかり日帝の顔を覗く。
いつもと変わらぬ凛々しい顔立ちに少しばかり、頬が赤で焼けていた。
やがてこちらに向ける、正面顔の日帝の顔。
思えばちゃんと見るのは初めてだとイギリスは実感する。
猫目のような瞳孔の奥にイギリス自身が投影されていた。
日帝はその目を伏せ、、、照れくさそうに言った。
日帝「今日は休みだ、、、今宵は私の、、、一法的な送り舟話しに付き合ってくれるか?英国よ。」
お猪口を欠けた左手で持ちながら日帝は言う。再度こちらへ向けられる、紅く染まる瞳は揺れていた。 酔っているな、と直ぐにわかった。
大英(、、、俺の立場も重々承知の上で問いかける。、、、流石は遠慮を美徳とする”国“か、、、、、、。)
大英「、、、あぁ構わない。今夜は晩酌と行こうじゃ無いか。」
日帝「感謝する。」
日帝は微笑んだ。
二人は十六夜の月の元。艦艇の見晴らし台に着くフェンスに背をたてかけた。
用意周到、日帝がどこからと、もう一つお猪口を用意し、日本酒が注がれる。
小さな器に注がれる無色透明な酒。
イギリスは短く礼を言った。注がれた酒を眺めながら小さく、お猪口をくるりと回す。日本酒が波紋様を創り静かに揺れる。
二人は静かにお猪口を交わし、乾杯した。
イギリスは初めて呑む日本酒を見つめ、一口飲みこんだ。
、、、西洋とはまるで違う飲み物。
喉を通り、舌に残る酒の苦味がイギリスに初めての感覚に浸らせる。
洋燈に薄く照らさる日帝は面白そうに微笑み出す。目線はイギリスからまた北海の空へと移った。日帝はゆっくり瞬きをし、語り始めた。
日帝「昔はよく、穢れの身分として同じ故郷の人でもけがわらしく思われていたんだ。そうゆう身分に私は産まれてしまった。」
大英「、、、日本にもそうゆう差別意識があったんだな。」
イギリスは五割の驚きと五割の興味に湧いた。元々西洋でも人種的な差別意識は今でも根付いている。けれどもどこか、日本の差別とは西洋と違う気がした。
イギリスはまた一口、慣れない酒を呑みながら日帝の話に耳を傾ける。日帝は横槍に動じずイギリスに合わせ語る。
日帝「、、、そうだ。まだあの辺の集落は身分によって社会の構成で成り立っているからな。今じゃ時代遅れだが、、、。まぁ恨みはしない。」
イギリスは動揺を顔に出る前に隠した。差別を恨まないその志しは西洋とどう違うのだろうか、、、。日帝はお猪口を傾け酒を啜る。、、、笑っている。
日帝「その底辺の蓮っ葉如きにしか出来ない仕事があるから、その仕事に誇り、故郷の為と働く、、、。差別されても殺されても、そこだけは譲れなかった。」
大英「、、、殺された人がいるのか、、、?」
日帝は下向き、口元だけが洋燈に照らされて見えた。
日帝「、、、反乱を起こしたところ傭兵に捕まり獄死だ、、、。私の故郷はまだ近代化が進んでいなかったから、、、法など無視された。」
イギリスは少し、日帝に情が湧いた。どことなく昔の自分に重なる。
大英「世間の都合によって都合の良いように踏まれる。、、、それでも報いを求めず、勤労か、、、。俺には無理だな。やられたらやり返したくなる。」
日帝「、、、私も同じだよ。強い奴らに人生掻き乱されて、、、。意外と私達は似た者同士かもしれないな。」
日帝は微笑んで、こちらを向く。もうすっかり、白い肌が紅く色づいていた。
大英(似た者同士、、、。)
確かにとイギリスは思うが、どこか相違点がある。イギリスと日帝との間に生まれている違いは何なのだろう、、、?
大英「、、、でもその仕事に誇りを持っているのならなぜ、軍人になった?」
日帝は小さく息をついて言った。
日帝「、、、単純に守りたい。」
大英「!、、、」
日帝「国を担う者が狂っていたら優秀な民も狂うだろう?理不尽から無辜の民を守るのも、底辺な身分の役目だと感じてしまってな。だから農奴より軍人の方が良いと考えてな。」
大英「、、、その民の中にもお前を穢れとしている者もいたのだろう、、、?」
その言葉を言った瞬間から日帝の口角が上がった。
日帝「助けたいに理由などいるか?」
大英「、、、。」
無意識的に目が開く。イギリスと日帝の決定的な違い。上に立つ支配の力に立ち向かう志が全く違う。 イギリスは前まで力で捻じ伏せて置けば良いと考えていた。けれども日帝は、、、力を守る盾して使っているように感じる。
大英「、、、だからあの時、俺は護れなかったのか、、、。弱いな俺。」
またあの日を慈しむ。日帝に聞こえないよう、小声を震わせ、イギリスが下に俯く。だがしっかりと耳に入れた日帝は変に踏み込んではいけないと悟り、そもままにした。
日帝「、、、まぁコレは私はただのエゴによるものかもしれないがな。」
大英「、、、珍しいな普段は堅物ぶっているのに、、、。」
日帝「英国には私に弱音が無いと思っていたのか、、、?大きな思い違いだな、、、!ハハ!」
笑いながら言う日帝に、間がおきイギリスも微笑む。
大英(あぁ、、、我々は同業者だ。)「お前と話せてよかった。同業者同士でこんな会話、、、久しぶりだ。ハハ、、、。」
十六夜の月、二人思い酔い耽る。何でもない日が特別な日に色づいていく。
日帝は少し息を吐き、夜空を見上げる。
日帝「、、、はぁ、、、ここは日本にも負けず綺麗だな。」
大英「、、、あぁ大好きな場所だ。」
日帝は瞬きをし、また息をついた。今度は一層独語のように語り出す日帝にイギリスは静かに耳を傾けた。
日帝「私はな、、、大好きなんだ故郷の土地が。」
顎を腕越しにフェンスにつき、語り出す。
空になったお猪口を見てイギリスが日帝に酒を差し出しだす。追加で注がれた日本酒はさっきよりも一層苦味が増し、染み入る。それはイギリスに注がれたからだ、だろうか、、、?
日帝「感謝する。、、、私は所謂、限界集落とゆう所で育ってな。あのそびえ立つ山々を見ながら、高く済んだ空を胸一杯吸うのが好きなんだ。」
自然とイギリスは空気を吸う。イギリスがここが好きなように日帝も自分自身が育った故郷が大好きなのだろう。
大英「、、、、、ではなぜここに居る?軍事顧問としてもたかが半年間位な筈なのに。なぜ一年間ここに居る気なんだ、、、?」
純粋に思う疑問を投げかける。日帝は数ミリ眉を寄せた。
日帝「今の日本は不景気に陥っている。病、貧乏、、、本当なら今でもすっ飛んで帰りたいよ、、、。
でも、この総力戦を見逃す訳にはいかない。日本が、、、お前らに追いつく為にも。」
大英「、、、。」
驚いた。初めて日帝の不安の顔を見た。瞳の奥、、、瞳孔が遥か遠く、東洋の先を見つめていた。
大英「、、、そんな中、尚更ここに居て良いのか、、、?国を担う者であろう、、、?」
日帝「何だ、、、?今日は随分、気に持つじゃないか。」
大英「少し、情が湧いただけだ。」
数秒、冷えた風が起きたと同時に、日帝が人差し指を上に刺して笑った。どこか不適な笑みだった。
日帝「、、、英国は勘違いしている。私は国ではない。大日本帝国とゆう一部の時代の化身だ。それと私は”まだ“国を担う者ではない。今は”師匠“に任せてある。だからこっちに安心して来れるんだ。」
イギリスは日帝の方を向き成る程と頷いた。
日帝の黒い将校服が闇夜に溶け混んでいる。上半身だけが洋燈に照らされて日帝のシルエットがハッキリと見えた。整えった顔立ち。何となく“お嬢”に似ている。口角の上がり方なんてまんまだ。イギリスは日帝を見つめながら鮮明にあの頃を翻させる。
日帝「どうした、ジロジロ見て。」
大英「は。」
その声で我に帰る。思わず肘つけがフェンスからズリ落ちた。
日帝は若干引き気味で見てくる。イギリスは咄嗟に視線をずらし、話題を変えた。
大英「だがお前もすごいよな。たった数十年でここまで近代化が進むなんて。、、、意外とすぐに俺たちに追いつくんじゃないか、、、?」
すると日帝は少し声色を変えて応えた。
日帝「追いつくだけじゃダメなんだ。我々は____
お前ら欧米諸国、列強国と同じ道を踏まない。」
暗い陰湿な睨みをきかせて見つめてくる。それはいつかの___宣戦布告に思えた。
思い返すとこの言葉は初めて日帝の口から欧米諸国に対して強い国だと認める言葉だった。
妙に額に昇る汗がイギリスの焦りを表していた。イギリスはそれを表面的に表さずなるべくいつものように、
大英「やれるモノならやってみろ。」
、、、ゲス顔をお見舞いした。
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破 第二十三話『何の為に戦う?』完
長いね。本当にすみません、、、‼︎けど頑張ったから♡はよろしくでぇぇぇぇすすすす!!!!!
コメント
2件
前大英が言ってた彼女がお嬢っぽそう、、、 言葉の表現うますぎません⁉︎