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若き覇王に、甘くときめく恋を

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若き覇王に、甘くときめく恋を

203 - 第五章 彼と共に育む、真愛の形 EP.3「温かに育む、家族の形」⑧

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2025年06月21日

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やがて安定期を迎え、父にも妊娠を知らせることになった。


貴仁さんと車で実家へ出向くと、いつもながらに父は歓待をしてくれた。


テーブルを囲んで、いつ話を切り出そうかとためらいつつ、並んだデリバリーのアラカルトを摘まんでいると、お父さんが彼にビールを勧めた。


「今日は車だから、ダメだってば」


そう横から口を挟むと、


「じゃあ、おまえが飲むか?」


と、瓶を差し向けられた。


「私も、今はアルコールは……」と、口ごもる。


「なんだ、父さん一人で飲むのは、寂しいだろ」


ちょっとばかりいじけたようにも言う父に、彼と顔を見合わせて、これは話した方がいいかもと無言で確かめ合い、


「実は──、」


と、切り出した──。


「実はね、私たち……子どもができたの」


「えっ……」と、口にしたきり、父が固まる。


「あの、お父さん? 大丈夫……?」


「大丈夫ですか、お義父さん」


彼と二人で、ビール瓶を手にしたまま、微動だにしない父を見やる。


「……大丈夫だ。もちろん、大丈夫だ。私は、大丈夫だ。大丈夫に、決まっているだろう」


自分自身へ言い聞かせるように、そう何度も『大丈夫』と唱えたかと思うと、


「ぃやったな!!」


父がふいに大きな歓声を上げて、今度は私たちの方がびっくりさせられる羽目になった。


「お父さんたら、相変わらずなんだから……」


外食先じゃなくてよかったと、苦笑いで思いつつ、


「お知らせは、あともう一つあって……、」


口の中に放り込んだ付け合わせのプチトマトを呑み下して、そう話した。


「……生まれてくる子は、双児なの」


「えっっ、双児⁉」


父が再びフリーズをする。


「あのお父さん……度々訊くけど、大丈夫よね?」


大きく目を見開いたままの顔を覗き込むと、


「おっ、おおー……っと!」


急にこわりを解いた弾みに、持っていたグラスからビールを零しそうにもなった。


「だ、大丈夫ー? もう落ち着いてよ〜」


グラスを父から受け取って、テーブルの上に置く。


「いや、悪い。落ち着くから、ほんとに……はぁ~」


胸に手を当てて、父が大仰おおぎょうに息を吐き出す。


「それでね……これで最後なんだけど、性別は男の子と女の子なの。まだこないだわかったばかりなんだけど」


何ていうか、あまりに驚かれるものだから、つい細切れな伝え方になってしまった。


すると、案の定というか三度目の硬直をした後で、


たっぷりとを取って、


「……よかったな。おめでとう、二人とも」


父は嬉しさを隠し切れないといった風で、顔を崩しにこやかに笑った。


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