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「……それでなんだけど、双児だってわかった時に、貴仁さんともいろいろ話し合って……。こういうことは本当は生まれてから話した方がいいのかもしれないけど、せっかくだから先行きの心当てに、今ここで言っておこうかなって……」
私が、そう前置きをしたところで、
「後は、私が言おう」
と、彼がその先を請け負った。
「──クーガのグループ系列に、カッチェも加わらないかと思いまして」
もう何度目かの「えっ……」が、父の口から発せられる。
「子どもたちが大きくなったら、カッチェを継ぐことも考えられたらって……」
私が事の次第を告げると、
「……まさか、そんなことまで、考えていてくれたのか……」
父はようやく口を開くと、みるみる涙目になり今にも泣き出しそうになった。
「詳しいことは、いずれまた詰めることになると思いますが、もし受け入れていただけるのであれば……」
彼が最後まで言い終わらないうちに、
「もちろんだ!」
と、父は即決をした。
「願ったり叶ったりだ。ただ、生まれてくる子どもたちのことまでは先走らなくてもいいから、自分たちを含めた家族の幸せを、まずは考えなさい」
そう穏やかな表情で口にして、
「本当にありがとう。今日はとても幸せな日だ」
いつの間に増えたしわを目尻に深く刻んで、父はまた心底嬉しそうに笑った──。