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*1話完結です。
約800年前、美しく大きな海に小さな命が誕生した。
誕生した女の子は独りだった。父は病気で死んだ、母は女の子を産んですぐに死んだ。
女の子に残っているのは母親が死ぬ前に言った言葉だけだった。
母「貴方の名前は乙姫、幸せに生きるのよ」
この言葉だけが乙姫の支えだった。幼少期は竜宮城の王女になる為の勉強、身内は執事であるシャチだけである。
とある日、乙姫は孤独に耐えられなくなって竜宮城を抜け出した。海の外ではたくさんの「人」と出会った。友達を作ろうと頑張った。だが、人間は怖かった。
人間A「この化け物が!」
人間B「さっさと消えろ!」
乙姫「なんで皆受け入れてくれないの…同じ生き物なのに、」
乙姫は人間が怖かった。
そんな中一人の人間と出会う。その人間の名は「誠志郎」その人間は他の人間とは違い、乙姫を受け入れてくれた。支えてくれた。理解してくれた。
最初は怖かった。だが次第に信用していき、誠志郎と会う為なら多少の辛さにも耐えられた。
だが、人間と竜宮城の住人では寿命が違うのだ。
誠志郎「ごめんな…ずっと一緒に居られなくて」
乙姫「なんで…せっかく信用できたのに、独りじゃなくなったのに、」
そこからの乙姫の人生は地獄だった。
人間から迫害を受け、受け入れてくれた人も裏切った。裏切らなくても自分よりも先に死んでしまった。
何十〜何百と、離れて行った。
乙姫「なんでみんな私を置いてくの…独りにするの、」
乙姫はまた一人の人間と出会った。「浦島太郎」
である。
乙姫「またいつか居なくなる…もう独りは嫌だ」
そこで乙姫は竜宮城の言い伝えを思い出した。
それは、対象の人物を不老不死にする事ができる魔法の道具、「玉手箱」
である。だが、玉手箱には一つ条件があった。
それは、不老不死になった対象の人物に玉手箱を渡し、絶対に開けてはいけないということ。
開けてしまうと不老不死になってから過ごした分の歳をとり、もう二度と乙姫と会うことができないのである。
乙姫は浦島太郎と一緒に居る時間が何よりも楽しく、かけがいのないものだった。
浦島太郎「母を待たせている、そろそろ家に帰らなくてはいけない」
乙姫「それではこれを」
浦島太郎「なんだい?これは」
乙姫「玉手箱です。良いですか?絶対に開けてはいけませんよ?」
乙姫は気付いていた。
竜宮城での3日間は下界の300年だということを、そして家に帰っても浦島太郎の家族は誰も居ないという事も。
乙姫「浦島太郎、ごめんなさい…」
乙姫は浦島太郎を見送った。また会えることを信じて。
浦島太郎「この中身は何なのだろうか?開けてはいけないと言われたけど…少しならよいか。」
その後、
乙姫「なんで…なんで約束を破ったのですか…また独り…」
乙姫の心は真っ黒で一筋の光も無かった。
100年後
乙姫「これは竜宮城で伝わる幸せを呼ぶお守りのような物です。絶対に開けないと約束して下さい」
???「分かった、絶対に開けない!」
また会おう!
乙姫「うん…」
おしまい