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「……わ、え、何! 真っ暗……!」
目を覚ますと、部屋の中は真っ暗だった。
何故だかなんて、考えるまでもなく……陽が落ちたというのに、電気もつけず眠り続けていた自分のせいだ。
驚いて起き上がりスマホを手探りで探し、灯りを確保する。
昨日――月曜日のお昼に会社を早退してしまってから、結局翌日である今日、火曜日は会社を休んでしまった。
朝、電話に出てくれた杉田は『気にしないで、たまにはゆっくり休みなさいね』と優しく応えてくれた。
次に、会社からの電話で目を覚ますと時刻は17時を過ぎていて、半日以上寝続けたらしい真衣香だったが。
そこから更に数時間寝てしまっていたようだ。
そのおかげか。身体は驚くほどに軽い。
……夕方に話した相手は八木だった。
『どうだ、明日来れそうか?』と、八木の声が聞こえた真衣香の心臓はドクドクと緊張を訴えた。
それもそうだ、記憶が定かではないのだが、恐らく八木は真衣香をこの部屋まで送ってくれた。
〝鍵、ポストに入れておくから起きたら取れよ〟というセリフが頭の中で再生されたので、半信半疑でポストを見たなら、きっちり鍵が入っていた。
夢の中の八木の言葉通りに。
『い、行けます……。 あの、八木さん。つかぬことをお聞きしますが、昨日ってその』
『ああ、お前の家まで送って、入ったぞ。 でも安心しろ、マメコに変な気は起こさねぇよ』
あっけらかんと返されて、拍子抜けした。
何となく記憶にあった、八木の前で弱音を吐いてしまった自分……という映像。
どうやらそれは夢であってくれたらしい。
だって聞いていたなら、あれだけ迷惑をかけたうえに実はドキドキしてたんです。 と、要約してしまえる言葉に小言の一つも言いたくなるだろう。
真衣香は、とりあえずホッと胸を撫で下ろしたのだった。
***
――そして、今日、水曜日。
出勤して更衣室で着替えを終え、いつもどおり。
朝の清掃をしている真衣香は、ふと居心地の悪さを感じた。
(……な、なんか見られてる?)
そう。次々と出勤してくる同僚たちに挨拶をしている最中、普段なら真衣香の存在など特に誰も気に留めないというのに。
とにかく、視線を感じるのである。
しかもヒソヒソと何やら囁き声も混じっている。
聞こえそうで聞こえないというのは、どうも気になってしまう。その上、視線を感じるのならば十中八九自分のことなのだろう……。
そう思い、手を止め耳を済ませたなら。
「すごいよね、いかにも真面目ですって顔して」
「社内で二股とかやばくない?」
「信じられないよね〜、坪井くんも八木さんも可哀想」
「おとなしそうな女ほど、裏の顔があるってほんとなんだね〜」
と、主に女性陣の声。そして。