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#廃校past complex
ユメミリ@夏の絶不調祭り
315
るる
74
#闇
ruruha
1,447
◇
ベネディクタ村に建てられた小さな作業小屋。
開け放たれた窓からは、夏の風がふわりと吹き込み、机いっぱいに広げられた色とりどりの和紙を優しく揺らしていた。
床には竹ひごや糊、完成した灯籠が整然と並べられ、部屋の中は祭りの準備一色に染まっている。
「もう祭りの季節ですね……。」
和紙を一枚手に取りながら、イリアがしみじみと呟いた。
「うわぁ……すごい量の和紙……。」
積み上げられた束を見て思わず苦笑する。
「全くよ。」
リーナは手を休めることなく竹ひごを組み立てながら、大きくため息をついた。
「ただでさえ世話係の仕事で忙しいっていうのに……。」
「私はこの作業、結構好きですけどね。」
テルは器用な手つきで和紙を貼り付けながら穏やかに笑う。
その手元には、もう何十個目か分からないほど綺麗な灯籠が完成していた。
「テルさん、こういう地道な作業得意ですもんね。」
イリアが感心したように微笑む。
「昔から細かい作業は好きなんです。」
照れくさそうに笑うテル。
そんな穏やかな空気の中。
バタンッ!
勢いよく扉が開いた。
「み、皆さま〜!お待たせいたしましたわ!」
肩で息をしながら飛び込んできたのはプリムローズだった。
髪は少し乱れ、額には汗が滲んでいる。
「あっ、おかえりなさい。」
テルが笑顔で迎える。
リーナはその姿を一目見るなり、小さく肩をすくめた。
「案外早かったわね。」
「……あなた、走ってきたでしょ?」
「え、えぇ……!」
プリムローズは照れ笑いを浮かべる。
「ダッシュで……行ってまいりましたわ…!」
「はぁ、やっぱり。」
リーナは呆れたように笑う。
イリアは優しく声を掛けた。
「お母さん、どうでした?」
その一言で、プリムローズの表情がぱっと明るくなる。
「とても元気そうでしたわ!」
瞳を輝かせながら、大切な宝物を語るように続ける。
「それに……。」
「お母様、わたくしのことを、とっても喜んでくださいましたわ!」
その笑顔は、昨日までとはどこか違っていた。
胸につかえていたものが、ようやく晴れたような。
心から幸せそうな笑顔だった。
「良かったです……。」
テルは思わず目を細める。
「なんだか心に染みる…。」
「……ふん。」
リーナはそっぽを向いた。
「良かったじゃないの。」
その声は、いつもより少しだけ優しかった。
イリアはそんな横顔を見て、小さく首を傾げる。
「……リーナさん?」
「泣いて……」
「泣いてないわよ!!」
食い気味に否定するリーナ。
耳だけがほんのり赤くなっていた。
その反応に、小屋の中へ小さな笑い声が広がる。
プリムローズもつられて笑った。
「ふふっ……。」
「わたくし、今とっても幸せ者ですわ!」
ぎゅっと拳を握る。
「今なら、なんでも出来る気がしますわ……!!」
テルはすかさず真顔になる。
「あ。」
「じゃあプリムさん、一番面倒な灯籠のイラストをお願いします。」
「お絵描きは無理ですわ〜!!?」
勢いよく両手を振るプリムローズ。
「そ、それだけは勘弁してくださいまし〜…!!」
また笑い声が響いた。
外ではセミが元気よく鳴いている。
祭りの日は、もうすぐそこまで来ていた。
◇
それから数時間後。
机の上に積まれていた和紙はほとんどなくなり、代わりに完成した灯籠が部屋いっぱいに並んでいた。
夕暮れの柔らかな光が差し込み、一つひとつの灯籠を優しく照らしている。
「……やっと残り十個ね。」
リーナは肩を回しながら深く息を吐く。
テルも苦笑した。
「灯籠二百個……。」
「毎年思いますけど、本当に大変ですよね。」
「も、もうこんな時間ですわぁ……。」
プリムローズは窓の外を見て目を丸くする。
空はすっかり夕焼け色だった。
イリアは心配そうにプリムローズを見る。
「プリムさんだけ先に屋敷へ帰っても……。」
「だ、ダメですわ!」
プリムローズは勢いよく首を振る。
「あと少しなんですから!」
「最後まで皆さまと一緒に頑張りますわ!」
その真っ直ぐな言葉に、三人は自然と笑みを浮かべた。
コンコン。
その時、小屋の扉が控えめに叩かれた。
「お疲れ様ですー……。」
聞き慣れた青年の声。
「あ、お疲れ様です!」
イリアが扉を開ける。
そこには少し疲れた表情の見慣れた村長、ティモシーが立っていた。
両手には人数分の飲み物が入った紙袋を抱えている。
「これ、どうぞ。」
「差し入れです。」
「まぁ。」
リーナが目を丸くする。
「気が利くじゃないの。」
「ありがとうございます…!」
テルも嬉しそうに頭を下げた。
「いえいえ。」
ティモシーは苦笑しながら頭を掻く。
しかし、その表情はどこか晴れない。
何か言いづらそうに視線を泳がせていた。
「……あの。」
「一つ、お伝えしたいことがあるんですが……。」
プリムローズは首を傾げる。
「……?なんでしょうか?」
ティモシーは一度深呼吸をした。
そして、覚悟を決めるように口を開く。
「今年の祭りにですね…その…。」
「半神様にも参加してもらう方向で話が進んでいるんです…。」
その一言を聞いた瞬間。
「は、はぁ!?」
リーナの声が小屋中へ響き渡った。
ティモシーは申し訳なさそうに苦笑する。
「……はい。」
「無理もない反応ですよね。」
イリアは状況を整理するように呟く。
「えっと……。」
「今回のお祭りには、半神の皆さんも参加する……と?」
「なんで…?どうして…??」
テルは思わず眉をひそめる。
「なによ、それ…!」
リーナは額へ手を当て、大きくため息をついた。
「絶対、面倒なことになるじゃない……。」
「それは承知しています…。」
ティモシーは申し訳なさそうに頷く。
「ついさっき、村の会議で決まったことなんです。」
「私は反対したんですけど……。 多数決で……。」
その最後の一言に、全員がなんとも言えない表情になる。
「あぁ……なるほど……。」
プリムローズは苦笑するしかなかった。
リーナはじっとティモシーを見る。
「あなた、村長でしょう…?」
「そんなに立場弱いの?」
「……はっきり言って…。」
ティモシーは遠い目をした。
「そうですね……。」
テルは思わず苦笑する。
「そっちも大変そうですね……。」
イリアは気になっていたことを尋ねる。
「あの……。」
「半神の皆さんが参加するメリットって、何なんでしょう?」
ティモシーは指を折りながら答えた。
「賛成派の意見は……。」
「『楽しいから』」
「『たまにはいいだろう』」
「『村人の偏見をなくすため』」
「……らしいです。」
数秒の沈黙。
プリムローズが勢いよく顔を上げた。
「まともな意見が一つしかありませんわ!?」
ティモシーは苦笑するしかなかった。
「えぇ……。」
「とりあえず、半神様方のご意見も聞かなければならないので、この件は一旦保留です。」
「ですが……。」
少しだけ表情を曇らせる。
「八十パーセントくらいの確率で決行されると思います。」
「なので 覚悟だけはしておいてください…。」
テルは顔を覆った。
「……わかりました。」
「もう既に胃が痛い。」
「まーた面倒なことになったわね……。」
リーナが天井を見上げながらぼやく。
小屋の中には苦笑いが広がる。
小屋の外では、祭りの準備が地道に勧められていた。
コメント
2件
作者コメント┊︎ 夏祭り編っ、だー!!
もうマジでこの回エモすぎてやばい…!!😭💕 プリムローズの「お母様に会えた」っていうあの幸せそうな笑顔、リーナが「泣いてないわよ!!」って叫ぶとこも含めて全部尊い…!後半のティモシー村長からの「半神様も参加」の知らせには「え〜〜!!?」って声出たよ。笑いと緊張が行ったり来たりするバランスが神ってる…!続きが気になりすぎる!!🌸