「こんにちは」
「お久しぶりです、一弥先輩。よく来て下さいました」
私達の新居に、一弥先輩と夏希が遊びに来てくれた。
「素敵なお家~! こんな大きなお家に住めるなんて、本当に恭香は幸せ者だね」
夏希がテンション高めに言った。
夏希は、アシスタントを卒業してカメラマンとして頑張っている。
無くてはならない存在に成長してると、朋也さんが褒めていた。
「赤ちゃんは?」
「こっちです」
私は、一弥先輩達をリビングに案内した。
そこに置いてあるベビーベッド。
抱き上げたのは、朋也さんと私の子ども。
「本宮 莉穂(りほ)です」
私は莉穂の小さな手を優しく握って、2人に紹介した。
「うわぁ、めちゃくちゃ可愛い~! 本当に恭香、ママになったんだね!」
「うん。何とか出産も頑張ったよ。結構大変だった」
安産とはいかなかったけれど、朋也さんがずっと支えてくれたおかげでつらくはなかった。
「莉穂ちゃんかぁ、可愛いね。本当に不思議だね、赤ちゃんって。こんなに小さいのに立派に生きてる」
一弥先輩が、優しく莉穂の手を撫でて言ってくれた。
2人とも、ずっと莉穂を見て笑ってる。
私が仕事を辞める時には、すごく残念がってくれた2人だけど、妊娠したことはとても喜んでくれた。
今は私も、新米ママ。
しばらくは、コピーライターから離れて子育てに専念すると決めた。
絶対に子どもに寂しい思いをさせないというのが朋也さんとの約束だから。
朋也さんも、仕事の合間にはしっかり協力してくれている。
本当に、今からメロメロだ。
笑ってしまうくらい莉穂を可愛がっている。
少し妬けちゃうくらいに。
でも、天使みたいな可愛い莉穂のおかげで、私達はさらに深い絆で結ばれた家族になれている。
「朋也さん、もうすぐ帰ってくるから座ってて。久しぶりにみんなでバーベキューしようね」
「嬉しい~! 2回目だね。あの時、すごく美味しかったもんね~」
「夏希、今日は飲みすぎ注意だからね」
「わかってますって。私も成長したんですからね~」
「はいはい」
夏希が酔っ払って先に帰ったのも懐かしい思い出だ。
あの時の運転手さんも、ずっと本宮家の専属で、私もお世話になっている。
社長宅には当たり前のようにお手伝いさんもいて、私もどうするか聞かれたけれど、あえて主婦業を頑張ることにした。料理に洗濯、子育てと、主婦の大変さを今、痛感している。
家事や育児がこんなに大変だったなんて、自分が親になってみて初めてわかった。
改めて私を育ててくれた両親に感謝だ。
「恭香ちゃん、幸せなんだね」
「一弥先輩……。はい、幸せです。先輩には、本当にいろいろお世話になってありがとうございました」
首を横に振る一弥先輩。
「恭香ちゃんがいなくなって寂しいけど、今は梨花ちゃんも帰ってきて仕事頑張ってるよ。梨花ちゃん、新しい彼氏ができて幸せそうだしね」
「そうなんですか! 梨花ちゃんに彼氏ができたんですね。すごく嬉しいです。ほんとによかったです」
梨花ちゃんは仕事も恋愛も頑張っているんだ。
いろいろあったし、心も傷つけられたけれど、梨花ちゃんが幸せなら本当にそれでいいと思えた。
心からそう思える自分に成長できていること……それがとても嬉しかった。
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