「夏希ちゃんも、彼氏できたしね」
一弥先輩が夏希を見た。
「本当に? えっ、夏希、彼氏できたの?」
「嫌だ、一弥さん。それは……」
夏希の態度と一弥先輩を名前で呼んでいるのを聞いて、すぐにわかった。
「一弥先輩と?!」
夏希が、恥ずかしそうにうなづく。
「あはは。最近、夏希に告白されて、僕も恭香ちゃん達みたいに幸せになりたいなって思ってね」
「夏希、すごいじゃない! 本当に良かったね」
2人の組み合わせが、なぜか無性に嬉しかった。
「恭香は昔、一弥先輩のこと大好きだったし、一弥先輩も恭香のこと好きなんだろうなって思ってたんだけど……。知らないうちに、恭香は一弥先輩じゃなくて本宮さんと結婚しちゃって」
「夏希は、最初、本宮君のこと気にいってたんだ」
「えっ、そうなの? 本当に?」
「あ、まあでも、好きとかじゃなくてカメラマンとして憧れてたっていうか……」
確かに、いつも近くにいたから……
好きになっても仕方ない。
「でもね。恭香達が結婚してから、一弥先輩がひたすら仕事に打ち込んでる姿を見て……。いつの間にか好きになってて」
夏希……
一弥先輩と夏希、すごくお似合いだ。
美男美女の2人だから。
「僕達も、恭香ちゃん達みたいに幸せにならなきゃね」
「うん、絶対に幸せになれるよ。本当に……良かった」
一弥先輩の微笑む顔を見て、私は少し安心した。
もちろん、いつまでも私のことを思ってるなんてうぬぼれていたわけではない。
でも、新しい恋ができて本当に良かった。
一弥先輩と夏希も、いつか結婚して家庭を持つかも知れない。
人生って、本当にわからない……
みんな、それぞれに新しい道を進んでいるんだ。
「ただいま」
朋也さんの声。
「おかえり、お邪魔してます」
朋也さんと一弥先輩が握手した。
会社では、たまに会っているみたいだけれど。
「よく来てくれたね。一弥君、夏希ちゃん」
「嬉しいです。浜辺じゃなくて、名前で呼んでもらえて」
「朋也さん、丸くなったから。出会った頃はすごく怖かったよね」
私は、ちょっと皮肉を込めて言った。
「確かに、怖かったよね~」
夏希も笑いながら言った。
「別に俺は怖くない。あれが普通だ」
笑顔で、またみんなで会えるなんて本当に幸せだ。
バーベキューの用意も整って、私達は外に出た。
莉穂は、社長宅の梅子さんに見てもらっている。
シェフも来てくれ、今度は4人だけのパーティーが始まった。
美味しい食事と最高の仲間。
そして、最愛の旦那様がいて――
私は、この時間と空間を、どうしようもなく愛おしく感じていた。
夏希も今日はお酒を控えていっぱい食べている。
本当に可愛い女性だ。
こういうところ、一弥先輩も好きなんだろう。
久しぶりのバーベキューを満喫していたら、一弥先輩が話しかけてくれた。
「本当に美味しいね。今日はごめんね、お邪魔じゃなかった?」
久しぶりに聞いた、一弥先輩の気遣いの言葉。
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