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「からさんはΩだったんですね」
からさんは苦しそうに震えている。
Ωの発情期は3ヶ月に1度やってくる。
たが自分は気付かなかった。
からさんがずっとこの苦しみに耐えていたなんて。
もっと早く知れていたら。
からさんと俺は運命の相手だったのだから。
「お楽しみ中のところ悪いんだけどその人俺の番(つがい)だから」
知らぬ間に男は背後に立っていて俺をからさんから無理やり引き剥がした。
恋人である俺とからさんを。
「そう怖い顔すんなよ。」
先に咬まなかったあんたが悪いと男は舌を出し俺を挑発する。
αとΩの番はαがΩのうなじに噛みつくことで成立する。
ずっとからさんがΩだったらと叶わない夢を見ていた。
どこかのΩにからさんを奪われるんじゃないかと不安だった。
「番ができたΩは番以外にフェロモンを出さなくなるはずなんだけどおかしいね。からさんはなんて淫乱なんだ」
『淫乱』その言葉はひどく俺をイラツカセル。
からさんは誰彼構わず誘うような人じゃない。
何も知らないくせに知った風な口をきく。
「いつからだ」
「番になったのは俺がここに来た日。その人制御薬忘れて発情してたんだぜ」
おちゃめさんでかわいいよな、と男はからさんの胸を揉んだ。
見せつけているのだ。
「違うナリ…山本は当職の番なんかじゃないナリ!」
「その人俺の子も孕んでる」
「違う違う違う違う違う違う違う違うナリイイイイイイイイイイイイイイ」
「今から番を解いてやってもいいよ。あんたは一生番を作れなくなって発情期に苦しむだろうけど」
「山岡さんだってそんなかわいそうなこと言わねーよな?」
からさんはもう俺の物ではなくなっていた。
俺が弱かったからからさんを奪われた。
からさんに嫌われたくなかった。
嫌われたくなくてゆっくり進めようなんて馬鹿なこと。
からさんには人を狂わせる魅力がある。
普通の人間なら誰だってからさんを欲しいと願うだろう。
全ては無力な自分の責任。
からさんごめんなさい。
からさんを愛していたのに愛しきれなくてごめんなさい。
愛しています。
『先日都内の法律事務所クロスにて痩せ形の男性2人の死体が見つかった事件、
重要参考人である唐澤貴洋さん(39)は未だ意識不明の重体です。警察は~』