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31 - Ep27 アイ / 楽

♥

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2024年05月28日

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 街を素足で歩く二人は、注目を浴びていた。

「なんかすげー見られるな」

「私たちがこんなボロボロな格好で、素足で歩いてるのにみんな驚いてるのよ。普通は孤児だと思われる。警察って人に見つかったら、また施設に戻されるわ」

「え、じゃあどうすればいいんだよ! 隠れるのか!? でも海が見たいんだよな〜!」

「どちらにせよ、街で深夜に出歩いてたらそれこそ補導ってものをされるの。隠れ場所、と言うのも正しいけど、私たちの住める場所を探さないと」

 そう言って、愛が前進し、楽もそれに続いた。

 街を歩く中で、悪霊はボソッと呟く。

「人の世も変わったな。昔は街中にも浮遊霊がうじゃうじゃ居ったのに、まるで姿がない。じゃから妾の神社に集まる者が増えるのじゃ」

「あー、そういや霊魂いねぇーなぁ。すげえ綺麗。視界良好って感じだ。人も全然死んでねぇのか?」

「いや、人自体は死んでおる。不死なんて人間は居らんからな。でも、霊魂が人類にハッキリ見えるようになってからは、葬式後直ぐにしっかり成仏されるようになったのじゃ」

「そういや、俺たちを飼ってた奴らも、人を逃すな、霊魂も必ず全員祓うようにって厳しく言われてたな」

 暫くすると、愛は立ち止まる。

 人気のない道を暫く歩き、辺り一面はコンクリートが広がる、ボロボロの廃工場が聳え立っていた。

「ここなら見つからないと思うわ」

「こんな何もねぇとこ、つまんねぇーよ! 施設と何も飼わんねぇじゃねぇーか!」

「いいじゃない、別に。ここで夜を過ごすだけ、昼間は自由に行動できるんだから」

 渋々と、楽は愛に続き、廃工場へと入っていく。

「つーか、なんでここなら見つからないって断言できるんだよ。いつ人が来るかなんて分かんねぇだろ?」

「だって、過去の映像を見ればここ数年間、誰も立ち入ってないことくらい分かるじゃない」

「は? 見る? 過去の映像? なんだそれ……」

「え、楽には見えないの? 霊魂が見えてるなら過去の映像も見えてるのかと思ってた……」

「ふむ、もしかすると、その力が愛の異能なのかも知れんな。愛だけに『アイ』という異能名にしよう」

「ちょっと、ふざけないでよ。でもそっか、じゃあこの過去の映像が見れることが私の異能なんだ……」

 そう言うと、訝しげに地下を見遣った。

「じゃあ、楽には、この下で泣いてる人の過去の記憶も見れてないんだね……」

地下にいる霊魂か? 泣いてるのは感じるけど、記憶までは別に見えてねぇよ」

 この廃工場には地下があり、霊魂が泣いている姿を二人はしっかりと捉えていた。

「この人……数十年もずっと泣いてる……。成仏させてあげる?」

「はぁ? なんのメリットがあるんだ? 放っとけよ」

「楽も落ち着かなくない? ずっと泣かれてるんだよ、私たちが寝てる間も」

 暫く考えた後、地下への通路を探し、二人は地下へ降りた。

 ずっと泣いていた霊魂は、二人の姿を確認するなり、涙が止まり、怒りの膨れ上がる顔付きへと変わる。

「なんだ、コイツ怒ってんのか……!?」

「生前が酷い死に方をしている人なの。きっと、人のことが憎くて仕方ないのよ。早く祓ってあげましょ」

 愛がフラフラ近付くと、霊魂は紫色のオーラを発し、風圧で愛のことを吹き飛ばしてしまった。

「童ら! 此奴は悪霊じゃ! 悪霊は憎しみが大きければ大きいほど強い!! 祓う前に童らが殺されるぞ!!」

 突如として悪霊は声を荒げた。

「何よ……こんな霊魂見たことない……」

 擦り傷に手を当て、愛は苦い顔を浮かべる。

「ハハっ、俺たちゃ、ずっと祓う仕事をしてたけど、やっぱり外の世界は知らないことが多いな! 面白ぇ! 俺たちは確かに、殺した瞬間の霊魂しか祓って来たことないから、時間が経って悪霊になってる奴なんて初めてだ!」

 そう言うと、笑いながら楽は駆け出した。

「ガアア!!」

 悪霊は、無数にも生えた長い腕を楽に向ける。

 楽は持ち前の身体能力でスルリと交わす。

「すげぇ……楽しいぜ!! 流石外の世界!! この刺激を待ってたんだ俺ァ!! ギャハハハハハ!!」

 しかし、最高潮に上がったテンションのまま、口から飛び出た長い舌に叩き落とされてしまう。

「痛ってぇ〜……マジで化け物みたいに強ぇじゃん……」

「だから言ったじゃろ。此奴に関わるのはやめておけ」

 しかし、楽はまだ笑っていた。

「アハハ、こんな面白ぇ奴に会ったのによぉ、見逃してやるわけねぇーだろ!!」

 そう言うと、今度は駆け足で腕を交わしながら懐に潜り込み、紫色に溢れ漏れているオーラを掴む。

「楽! それはやめろ!!」

 しかし、悪霊の声も遅く、楽はその大量のオーラをそのまま身体に憑依させた。

 霊魂の姿は消滅し、辺りは一瞬にして静寂が訪れる。

「なん……だ……?」

 すると、楽の身体は突如として、ボコボコと内臓がどこからともなく膨れ始め

「オエッ……オエェッ……!」

 嘔吐し、涙も止まらず、悲痛な声と共に暴れる。

 そして、楽の身体からは、何人もの霊魂が次から次へと数え切れないほど飛び抜けてきた。

 見たこともない光景、あまりの恐怖に、愛は隅で震えることしか出来なかった。

「うわっ、なんだこの量は……!!」

「中に人がいるかを優先しろ!!」

 暫くすると、どこからともなく、数名もの足音がバタバタと鳴り響いた。

「下に子供がいます! うわっ……奥に……得体の知れない少年が……霊を放出し続けてます……!!」

「なんてことだ……。全員、配置に付け!!」

「ハッ!!」

 青髪で短髪の男性は、愛を守るように背を向け、大きな銃口を楽へと向けた。

「撃っちゃ……ダメ……」

 震えながらも、愛からなんとか出た言葉だった。

 その声に、男は振り返る。

「大丈夫だ。彼も助ける」

 そう言うと、隊長らしき大柄な男に合図を送る。

「準備完了! 開始します!」

「放て!!」

 ドォン!!

 大きな銃口からは、エネルギー体の透明な弾丸が飛び出し、楽の頭に命中した。

 次第に、楽からは未だ霊が放出され続けているが、楽は苦しみから解き放たれたかのように気絶していた。

「神崎!」

「はーいよ!」

 すると、男の背にいた神崎と呼ばれた女性は、姿を透明化させると、楽の身体をギュッと抑え込んだ。

「シスター、祈りを」

 最後に、全員から守られるように姿を現した女性は、ただ一人防具を身に付けておらず、真っ白な装束に身を包み、両手を胸の前に掲げる。

「未だこの地に囚われている魂よ。その身を委ね、汝の道を示しなさい……」

 そして、その言葉に合わせ、隊長らしき男は、ゆっくりと歩み出し、楽の眼前で仁王立ちをする。

「祓魔院より見届けます。汝、苦しみからの……」

 男は、静かに、楽の体内へと腕を貫通させる。

「解放」

 その瞬間、一瞬パッと明るくなると、楽から霊は放出されなくなり、そのままパタリと倒れた。

 それを見た安堵からか、愛もそのまま気を失った。

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