二十五歳となった今、優奈は痛感していた。
退屈な大人にならなければ社会で生き抜いていけないのだ。
特に何においても平凡、いやそれ以下の部分もあるだろう。百五十六センチの身長に、体の線がくっきり出る服は遠慮したいメリハリのない体型。
髪の量は多いし、色は傷んで抜けやすいから美容室にはきっちり二ヶ月に一回。実家は平凡な……というと反感を買うかも知れないがサラリーマン宅の一人娘。
メイクをすればそれなりに見れる顔になっていると思うのだが、うっすら二重に、もう少し高さが欲しい鼻。ぽってり艶のある唇を保つ為には乾燥を常にリップクリームで誤魔化しグロスを常備。
……目を引く美女でない優奈が可愛く見せる為には、この通りかなりの努力が必要だ。
そんな、全てにおいて普通の人間である瀬戸優奈(せとゆうな)――
(そう、私みたいな出来損ないはね)
食欲もなくここ最近は常に痛む空っぽの胃に、今夜は甘いカクテルを流し込む。
完璧にやさぐれてる、可哀想な女の図。
いいことといえば服のサイズがどんどんスリムになっていくことくらいだろうか。
そんな状態で、酒の場といえ耳障りな雑音など一切なく、高価そうなアンティークの小物が飾られているバーのカウンターに座る優奈。
落ち着いて飲める店を……だなんて、彷徨って入店したはいいが。実のところ酔っていなければ今すぐ出て行きたい雰囲気だ。
グレーの壁紙がシックな印象で、流れるBGMは多分ジャズなのか、いや特に興味もなくてわからない。もしかしたらクラシックも流れていたかもしれない。。
まあ、要するにオシャレなお店で。
ボックス席にゆったりと座る上品なカップルや、カウンターの端にも寄り添う美しいカップルや。
とにかく場違いながらカクテルを身体に流し込み流し込み、流し込み続けていた。