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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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「どわぁっ!?」
「クレイモア! 警戒しろ! もうここはエイトの領域になってるぞ!」
廊下の先から、爆発音と共に悲鳴というか……そんな声が鳴り響いて来た。
これらを耳にしながらも、とにかく静かに、的確に。
どこまでも心を落ち着けつつ、迅速に爆薬を設置していく。
私が走り込んだのは、ショッピングモール……百貨店……?
大きなビルの中に、いくつもの店舗が連なっている様な場所。
普段あまり外出する性格ではない上に、ゲームの舞台が海外風なので、こういう所をなんて呼べば良いのか分からないけど。
とにかくその敷地内へ、爆薬付きボウガンを派手に連射して人を集め。
更にはインベントリから、こういう時の為の装備セットを取り出して背負っている状態。
他の賞金首の人達が、皆それぞれ戦闘のプロという雰囲気で格好良く動くのに対し。
此方は巨大なリュックサックを背負った状態で、端からトラップを仕掛けていくという情けないスタイル。
しかしながら、私にはこういう事しか出来ないので。
出来る事だけを、着実にこなしていく。
こんな事ばかりやっていた私にも、このゲームの運営は声を掛けてくれた。
トラッパーとして、環境を味方に付けるプレイヤーとして。
賞金首の名を、何も無い私に与えてくれたのだ。
だからこそ、これだけは負けちゃいけない。
一つの空間を使い、徹底的に相手を排除する戦い方。
「…………」
何も喋らぬまま黙々と作業を進め、たまにスモークグレネードを遠くに投げたりして。
これだけ派手に爆発騒ぎを起こしたのだ。
当然建物内のNPCは、ほとんど避難済み。
だからこそ、私が仕掛けたトラップに余分な存在が引っかかる心配はしなくて良い。
ここに居るのは、全て敵。
なら……。
「建物ごと、全て失くしてしまっても……誰も、困らないですよね?」
フフッと小さな微笑を零しつつも、各所に爆発物を仕掛けつつ屋上を目指す。
先程シックスが作ってくれた脱出のタイミングを、それはもう見事に“環境から”ぶっ壊してくれた狙撃手。
撃たれた方角からして、多分ココだと判断した。
更には、担当サポーターの“運営側の特権”を最大限利用させてもらい。
今許されている範囲内で、全ての権限を行使した上でしっかりと確認させて頂いたのだ。
この建物の屋上に、一人居る。
大型の対物ライフルを構えた人物が。
しかもその方はどうにも……私の事は“ついで”にしか見ていないらしい。
担当さんの話では、その後すぐに逃亡を始めたシックスばかりに注目しており、此方には見向きもしていなかったんだとか。
私は、ある種の強迫観念に狩られながらゲームをしている。
今ここに居る自分が本当に自分の様に感じてしまい、とにかく“死ぬ”のが怖い。
だから他の賞金首の様に、正面切って立ち向かう勇気なんか無いし、コソコソ隠れて建物ごとまとめて敵をやっつけてしまえという戦法ばかり。
自らの命は可愛いのに、他の命を軽視する様な行動ばかり続けて生きて来た。
しかしながら……。
「こうも“見てもらえない”というのは、なかなか悔しいものですねぇ?」
今の私は、リアルの弱い自分じゃない。
ここに居るのは、octopus8という名の賞金首。
そのキャラクターを演じているからこそ、そのキャラクターとして生きているからこそ。
心の底から、黒い微笑が零れ始める。
完全に“頭の中のスイッチ”が切り替わったのが、自分でも分かる。
正直、狙撃手は苦手だ。
何処から撃って来るかも分からないし、誰も彼も妙に射撃が上手いから。
けど今回の相手は……どうやら、まだ“未熟”であるらしい。
二兎を追う者は一兎も得ず、なんて言ったりするが。
9Kさんを見ていれば分かる。
スナイパーは、それでは駄目なのだ。
二兎を追うのなら、まずは一兎を確実に仕留める。
そして逃げたもう一匹にさえ意識を向け、続けざまに仕留めてこそ狙撃手。
それが出来ていないからこそ、今回の相手は……私という一兎を見逃してしまった。
私は兎ではなくタコと名乗っているけども。
でもどちらの動物にも……牙はあるのだ。
そしてオクトパスというソレは、非常に執着心が強く、一度絡みついたらなかなか放さない。
「おいおいおい! こりゃいったいどうなってんだ!? そこら中スモークだらけで何も見えねぇじゃねぇか!」
「不用意に動き回るな! 周りにはあり得ねぇほどのトラップが――」
色んな所からプレイヤーの悲鳴と、爆発音が聞こえて来る。
本格的に多くの人々が集まって来たのか、そこら中でトラップが作動して至る所で煙と火の手が上がっているのが見える。
これに微笑を零しながらも、静かにガスマスクを被って、そのまま上層階を目指す。
ガンサバイブオンラインはシステムアシストが少ない、それは確かだが……コレを覆すのが、“道具”だ。
そしてこの中心にあるのが、クラフトという機能。
現実ではあり得ない事が、ゲームだからこそ出来る事が詰まっていると言っても良い。
とにかく下準備を繰り返し、様々なアイテムを作り出し。
それらを戦闘に持ち込む事さえ出来れば……たった一人、私だけでも。
この建物一つくらい、あっと言う間に瓦礫の山に変える事など容易い。
けど、その前に。
「ご挨拶くらいは……しておきたいものですねぇ」
『うわぁ……“スイッチ”が入った貴女は、担当の私でも怖いくらいですよ』
「それはまた、酷い事を言いますね? どう見ても、ただのシスターじゃありませんか」
『だから余計怖いんですって。普段とは完全に別人格じゃないですか、爆弾魔と化した時のエイトは。普段はあんなにポンコツなのに……』
担当サポーターと会話しながらも、爆炎の中を突き進んでいくのであった。
◆
「チッ……騒がしいな」
6keyとoctopus8が別行動するまでは良かった。
あとはシックスを撃ち抜けば、此方の目的は達成される。
それにココは、周囲の住宅地と比べれば背の高い建物。
だからこそ、かなりの範囲が確認出来る。
緊急だったからこそ、思い付きでこんな所を陣取ってしまったが……正直、失敗だったな。
狙撃手にとって、かなり“狙いやすい”位置だとも言えるんだけど。
逆に、“分かりやす過ぎる”場所でもある。
だからこそ、シックスを早々に狙撃して移動を……なんて思っていたのだが。
彼の得意分野は狭い場所へと逃げ込み、とにかく走り回って敵の数を減らす事。
このお陰で、全然見える所に出てこない。
もっと言うのなら、此方の位置に気付いて射線から逃れる様に移動している可能性さえあるのだ。
だったらもう、この場に用はない。
早い所次の射撃ポイントに……とか考えた時には。
駐車場に止めてあった俺のスクーターが、爆散したではないか。
的確に狙ったという訳では無く、駐車場の乗り物をあらかた破壊する雰囲気の爆発。
これだけの規模で連続爆発を起こし、集まって来たプレイヤーを一網打尽にしている。
しかも、さっきから妙に建物内が騒がしい。
「……余計な方が釣れちゃったかな」
こんな事が出来るのは、間違いなくoctopus8以外にあり得ないだろう。
彼女の紹介PVも見た事があったが、どれもこれもプレイヤー達は首を傾げる様な武装や道具を使っているのだ。
つまり、クラフトの天才。
普通の人なら考え付きもしない様な物を作り出し、それを実戦で的確に使って来る賞金首。
戦い方は非常に地味だが、もたらす結果はとんでもなく派手。
最初期のクランVS賞金首というイベントだって、彼女は直接戦うのではなく周囲の建物を爆破。
ダイナマイト解体工事かって程に綺麗に倒壊を起こした建築物に、クランのホームが巻き込まれ全員生き埋めという結果を叩き出した。
それくらいに、ヤバイ賞金首。
その爆弾魔に……どうやら、目を付けられたらしい。
さっき彼女のログアウトを邪魔した報復、という事なのかもしれないけど。
「今だけは、本当に邪魔だな……エイトはどうでも良いんだよ」
クソッと、悔し紛れの声を上げてみれば。
「そんな冷たい事言わないで下さい。実は私、結構傷付きやすい性格なのですよ?」
急に後ろから声が聞こえて来て、ゾッ背筋を冷やしながらハンドガンを抜いた。
振り返った先、銃口を向けた先には。
「初めまして……お名前は存じませんが、先程シックスの好意を無下にしてくれたのは貴方ですね?」
「octopus……8」
ゆっくりとガスマスクを外しながら、歪んだ微笑を浮かべるシスターが。
真っすぐ此方を見つめ、静かに近付いて来ているのであった。
思った以上に到着が早い。
こんなにプレイヤーが集まって来ているのに、コイツはその相手をしていた筈なのに。
この人もまた、どこまでも“賞金首”って事か。
コメント
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くろぬかさん、第75話読みました! エイトの“スイッチ”が入る瞬間、ゾクッとしましたね…。普段の♡♡♡感とのギャップがたまらない。建物ごと吹き飛ばす覚悟と、狙撃手への「見てもらえない悔しさ」が混ざった黒い微笑み、すごく印象的でした。担当サポーターが「怖い」って言うのも納得です。 そして屋上での邂逅!「そんな冷たい事言わないでください」からの登場シーン、鳥肌立ちました。次が気になります!