彼と再び出会ったのはそれからまた1年後、彼はこのテレビ局にキャスターとして入社し、私は受付嬢として正社員になっていた
康夫とインスタグラマ―は局内で付き合っていると噂だったが、どうやらうまくいっていないみたいだった
現に受付嬢の私は、康夫のインスタグラマ―が中堅のディレクターと並んでテレビ局を出て行く所を何度も見ていたし、その中堅のディレクターはインスタグラマ―の腰に手を回していた
その時私の目の前でインスタグラマ―の女が、長い髪をなびかせて入口の自動ドアを出て行こうとしているのを康夫が追いかけてきて、彼女の腕を掴んで何か言った
するとインスタグラマ―女は彼の腕を振りほどき、彼の胸を突き飛ばして出て行ってしまった
一人取り残された彼は、彼女と反対方向に歩いて行ったが足取りは完璧に怒っていた
私は彼が可哀想でその夜は眠れなかった、そして自分に何度もあの呪文をかけた
―テレビ局に出入りしている男は軽薄で自分が付き合うに値しない男―
その一週間後、テレビ局のカフェテリアで窓側のカウンター席に一人で座っている彼を発見した
少し寂しそうな彼の背中は私を燃え上がらせた
―失意につけこむのはダメよ・・・晴美―
そう自分に言い聞かせながら彼のカウンターの隣に座り、充電器を貸してくれないかと話しかけた
私は笑顔を彼に向け、受付嬢しか知らないゴシップをありとあらゆる方法で彼が興味が湧く話題を提供した
彼はとても私の話に笑ってくれ、目をキラキラ輝かせた。二人は意気投合した
私は必死にならないように必死だった
そしておしゃべりが尽きないまま、カフェが閉店で追い出されてもテレビ局の入り口でまだ立ち話をしていた
彼は近くに美味しい焼き鳥屋さんがあるから行かないかと誘ってくれた
そして深夜2時、またその焼き鳥屋が閉店で追い出されるまで私達は話し込んだ、ほろ酔い加減で彼が私を見つめて言った
「送るよ」
私は言った
「タクシー代がもったいないと思わない?あと数時間で始発が出るわ、24時間やってるカフェに行かない?」
ハハッ「カフェに行って焼き鳥屋に行って、またカフェに行くのかい?名案だ」
彼は私の心を溶かすような笑顔で微笑んだ
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