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追憶のマッチング
テレビの音が、部屋の静けさを破った。 ニュースキャスターの声が、淡々と告げる。
「警視庁は、連続殺人事件の容疑者・吐夢と、捜査一課の刑事・手嶋淳之介が共に逃走していると発表。ふたりは現在も行方不明で、警察は都内全域に捜索網を広げています」
その言葉に、手嶋は息を呑んだ。 吐夢は、テレビを見つめながらぽつりとつぶやく。
「…君まで、追われる側になったんだね」
手嶋は、何も言えなかった。 ただ、吐夢の手を強く握り返した。
そのとき、廊下から足音が聞こえた。 重く、規則的で、確実に近づいてくる。
「…来た」
吐夢が立ち上がる。 手嶋もすぐに荷物をまとめ、窓の外を確認する。
非常階段がある。 でも、そこにも警官の姿が見える。
「逃げ道が…ない」
手嶋の声は、かすれていた。
吐夢は、手嶋の顔を見つめる。
「ねえ、手嶋さん。もしここで捕まったら、君は僕のこと…後悔する?」
手嶋は、吐夢の頬に手を添えた。
「後悔なんて、するわけない。俺は…君を選んだんだ」
ドアの向こうで、ノックの音が響く。
「警察です!開けてください!」
ふたりは、最後の瞬間を見つめ合った。 その瞳には、恐れよりも、確かな絆が宿っていた。