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二人でね、の続編と言いますか、過去編になります。
タイトル通り、初夜直前にスポットを当ててみました。
メイクも終わって衣装にも着替え終えて、今は控え室で元貴と二人で撮影待ちをしている。もうそろそろ、涼ちゃんの撮影が終わるころかな。
あ~、早く夜になればいいのに。
そんなことを思いながらスマホに目を向けていると、向かい側のソファーに座っていた元貴が何かを思い出したように声を上げた。
「あ、そうだ!忘れるとこだった!」
その声の大きさに、思わず体がビクッとしてしまう。
「ちょいちょい」
元貴はにんまりと口角を吊り上げて、人差し指をクイクイと動かしながらに俺を呼ぶ。なんだろうと思いながら大人しく隣に腰を下ろすと、元貴は鞄の中から小瓶を取り出すと手渡してきた。
「ほい、プレゼント。あげる」
「…なんで?」
プレゼント?
俺の誕生日はまだ先なんだけど。
思いながら小瓶を見ると、ラベルには、『大人のサポートドリンク 漲る男の元気パワー!これで恋人もメロメロまちがいなし!』と書かれていた。
「ま、こんなのなくても、どうせ若井はギンギンなんだろうけど。いよいよ今晩なんでしょ?」
「は?え?えっ……?」
元貴はクスクスと笑っているけれど、こっちにしたら意味が分からない。
これはどう見ても精力剤じゃん。
なんで元貴が俺にこれくれるの?
なんで俺の今晩の予定を知ってんの?
「あ、もしかして、何で知ってるのって思ってる?」
「…うん」
「それはね~、昨日涼ちゃんがすっごいウキウキしてたから、なんかいい事あったの?って聞いたら、明後日は休みだから、明日仕事が終わったら若井んちで初エッチするんだ~って、教えてくれたから」
ああ、やっぱりね。
もしかしたらって思ったけど、大当たりだった。そりゃ、情報の出元は涼ちゃんしかないもんな。
涼ちゃんは俺たちに対して隠し事はしないから、元貴に聞かれて何の躊躇いもなく答えたんだろう。何とも素直な涼ちゃんらしい。
昨日は個人で出演しているMC番組の収録があったから、二人とは別行動だったんだけど、そんな会話を繰り広げていようとは思いもよらなかった。
元貴に、こいつら今晩初エッチするんだなって目で見られているのは、何となく小っ恥ずかしい。持っていた小瓶を、思わずぎゅっと握りしめた。
「涼ちゃんね、本当に嬉しそうに話してたよ。若井と相談しながらエッチで使うもの買って、二人で動画見て勉強したんだ~って」
決してからかうような口調ではなく、元貴は柔らかい笑みを浮かべながらに言う。慈しむような眼差しは、今ここにいない涼ちゃんへと向けられているものだろう。
元貴と涼ちゃんには、俺には割って入れない絆があって。もちろん元貴が、俺と同じ感情で涼ちゃんのことを想っているわけではないことは分かっている。けれど親愛という言葉で言い表すには、到底足りないほどの深い感情なのだ。
「若井はほんと、幸せ者だわ」
「うん、俺も本当にそう思う」
「涼ちゃんの初めてを、素敵な思い出にしてあげなきゃ許さない」
「ハハ、言われなくても」
さっきまで感情が恥ずかしさで埋め尽くされていたのに、今は元貴の言葉に心が凪いでいく。
元貴は俺に、唯一無二の宝物をくれた。
涼ちゃんは元貴が見つけてミセスへと誘い、休止期間中には同居生活を提案してくれて。二人での時間を過ごすうちに、俺の気持ちは涼ちゃんへと溺れていった。元貴がいなかったら、俺は今こうやって、生涯の恋人と出会っていなかったよね。
「終わったよー!次、元貴だって~!」
すると控え室のドアが開いて、涼ちゃんが言いながらに入ってきた。衣装とメイクは色気を醸し出しているのに、口調は素の涼ちゃんのままだ。このギャップがたまらない。
「はーい。じゃあ巻きで撮影終わらせてくるわ。今日は早く仕事終わらせなきゃね」
呼ばれた元貴は口元を緩ませながら、俺の肩をポンと叩いて立ち上がる。
「元貴、いってらっしゃい」
「うん、行ってくるね」
すれ違いざまに元貴がちょっと乱れていた涼ちゃんの前髪を直してやり、控え室から出ていった。
なんかさ~、元貴の仕草っていちいちスマートなんだよな。嫉妬の対象にはならないけれど、無意識だろう元貴の仕草に目を細めた。
「若井、それなに持ってんの?」
テーブルの上に置いてあったペットボトルの水を飲むと、涼ちゃんは俺の隣へと腰かけた。そして俺が手に持っていた小瓶を見つけて尋ねてくる。
「ああ、これ?」
「栄養ドリンク?」
「そ、大人のね」
手渡すと、涼ちゃんはラベルをじっと見つめた。
「…若井、無理してない?」
「ん?」
「こういうの飲まなきゃ、やっぱり勃たない……?」
おっと、思いっきり誤解しちゃってますね、これは。
今晩の涼ちゃんとのエッチが楽しみすぎて、昨夜もうっかり抜いちゃったぐらいにめちゃくちゃ勃起しますけどね。俺の、涼ちゃんに対する性欲を舐めないでください。
「これはさっき元貴がくれた」
「元貴が?」
「うん、そう。昨日元貴に、今晩初エッチするって言ったんでしょ?」
「……あっ!もしかして言わない方がよかった?……ごめん」
涼ちゃんがシュンとする。
「ちがうちがう、怒ってないよ。今晩のこと本当に嬉しそうに話してたって聞いて、俺もすっごく嬉しいから」
男同士のセックスのやり方の動画を見て、二人で勉強したもんね。受け入れる側の前準備である孔の中の洗い方、俺の勃起したものが挿入できるように、孔をゆっくり広げていく手順とか。当日は動画なしでもことが進められるようにって、二人で一緒に覚えた。
そして教材の最後にはセックスしている動画もあって、二人で食い入るように見たよね。
『ね、ね、若井!見て、ほら!この人、すっごく気持ちよさそう!』
受け入れている男性を見て、涼ちゃんは隣に座っている俺の太ももをぺちぺちと叩いて。AVだからもちろん演技なのかもしれないけれど、気持ちよさそうな喘ぎ声を出している男性を、涼ちゃんは食い入るように見ていた。
『俺もこんな風に、気持ちよくなれるのかな?』
『涼ちゃん!俺、頑張るから!』
少しでも涼ちゃんに気持ちよくなってもらうために、俺は高らかに頑張る宣言をした。
『うん、期待してる。でも俺も、若井に気持ちよくなってもらうために頑張るからね』
『……ッ!!』
あの時は、チュッと俺の頬にキスをしながら言った涼ちゃんを押し倒して、二人のものを一緒に合わせて扱いたっけ。
「ほんと?よかった~。ね、晩ご飯どうしよう?何か食べて帰る?それともどこかで買って、若井んちで食べる?」
涼ちゃんは俺の手を取って、ぎゅっと恋人つなぎをしてきた。初めてのセックスへの期待と嬉しさを体現してくれる、愛しい恋人。
俺は同じぐらいに、涼ちゃんへと愛を返せているかな。
涼ちゃんが不安にならないように、ちゃんと言葉で愛を伝えられているのかな。
「そうだな~…家に帰ったら色々準備があるから、途中で何か食べて帰ろうか」
「じゃあ、前に一緒に行ったラーメン屋がいい!あそこ、美味しかったもん!」
「いいね、そこ行こ」
言いながら俺は涼ちゃんの手を握り返した。
元貴が戻ってきたら俺の番だから、いつも以上に気合を入れて撮影に挑むからね。
撮影が少しでも早く終われるように頑張るから。
だから涼ちゃん、もうちょっとだけ待っててね。
~END~
#ご本人様とは一切関係ありません
のりもちさん
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コメント
1件
読了しました!元貴が涼ちゃんから聞いた話を若井に伝えるシーン、すごく好きです。からかうでもなく慈しむような口調で「涼ちゃんの初めてを素敵な思い出にしてあげなきゃ許さない」って言葉、この三人の関係性がぎゅっと詰まってて胸が熱くなりました。そして涼ちゃんが「若井、無理してない?」と心配するところ、純粋で可愛すぎる。初夜前のドキドキと温かさが伝わってくるエピソードでした🌷