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あ
16
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カラオケの薄暗い個室で、音楽だけが虚しく響いている。俺の両手首は蓮の片手で頭の上に押し付けられたままだ。抵抗しないのをいいことに、奴らは俺が一番嫌がる方法でプライドをズタズタに引き裂きにかかってきた。
「おい蓮、ちょっと場所代われよ。俺もその顔近くで見たい」
拓海がニヤニヤしながら俺のすぐ隣のソファにドカッと腰を下ろす。
「待てよ拓海。まずはこれ、いるまにやらせようぜ」
そう言って前に出てきたのは大和だ。テーブルの上に、わざとらしく一本のマヨネーズと、一軍の奴らが食べ残した冷めきったポテトの皿を置く。
「なぁいるま、お前シクフォニの配信とかで『潔癖症』ぶって綺麗に飯食ってただろ? あれマジで鼻につくんだわ。ほら、そのマヨネーズ、皿の上に全部ブチ撒けて手づかみで食えよ。あ、もちろん蓮の手から直でもいいけど?」
大和の言葉に、陸が手を叩いて爆笑する。
「ウケる! 綺麗好きのいるまがドロドロの飯を犬みたいに食うとか、最高じゃん!」
俺は信じられない思いで奴らを見つめた。吐き気がする。潔癖な俺にとって、他人の食べ残しをそんな風に口にさせられるなんて、死んでも嫌なことだった。
「……断る」
声が小さく震える。
その瞬間、俺の髪を後ろから雑に引っ掴んだのは、一番性格の悪い翔太だった。頭皮に激痛が走る。
「あ? 断る? テメェ、誰に向かって口聞いてんだよ」
翔太は俺の耳元で、わざとらしく優しく、だけど最高に冷酷な声で囁いた。
「忘れたのか? お前が嫌がったら、明日からあのゴミ共――特に、あの年下のこさめだっけ? あいつのSNSに、一生消えないエグい誹謗中傷とデマ流して学校にもいられなくしてやるって言ったよな。なぁ、幼なじみの絆ってやつを見せてみろよ、いるま」
「っ……!」
こさめの名前を出され、俺の身体がカチリと凍りついた。
みんなの顔が頭をよぎる。リーダーとして引っ張ってくれるLAN、いつも不器用だけど優しいなつ、マイペースだけど支えてくれるすち、みこと、そして、最年少でみんなに可愛がられているこさめ。
あいつらの輝かしい未来を、俺のプライドなんかで汚すわけにはいかない。
「……分かった。やればいいんだろ」
俺は奥歯を血が出るほど噛み締め、蓮に押さえつけられたまま、震える手でマヨネーズを手に取った。
お皿の上にドロドロと広がる不快な光景。
「あはは! マジでやりやがった! 蓮、見てみろよこいつの顔、屈辱で真っ赤じゃん!」
陸がスマホのカメラを俺に向けてフラッシュを焚く。
「いいじゃん。お前はそうやって、俺たちの言うことだけ聞いてりゃいいんだよ」
蓮が俺の頭を、まるで出来の悪いペットを褒めるようにガシガシと乱暴に撫で回した。
一軍の5人に囲まれ、次から次へと嫌なことを強要される。
他人の前で泥水をすするような真似をさせられ、プライドも、尊厳も、全部泥靴で踏みにじられていく。
でも、俺がここで笑われて、泣き寝入りしていれば、シクフォニのみんなは守れる。
蓮、拓海、大和、陸、翔太。
幼なじみで、一切の容赦なく俺を追い詰めていく一軍男子たちの歪んだ笑い声が、個室の中にいつまでも響いていた。俺の心は、ゆっくりと、だけど確実に壊れ始めていた。
コメント
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ゆいさん、第4話読みました…! 胸がギュッと締め付けられる展開すぎて息が止まるかと思った😭 いるまがこさめの名前を出された瞬間に固まるシーン、仲間を守るためにプライドを捨てる選択、本当に切なくて…。一軍の笑い声が耳に残るほど怖いのに、それでもシクフォニを守ろうとするいるまの強さに泣きそうになりました。続きが気になりすぎる…! 素敵な作品をありがとうございます🌸