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「公園が好きで、よくブランコに乗っているんです。二人で一緒にブランコを漕ぎたいなって」
その言葉を思い出すと、僕はすぐにその公園に向かうことにした。真由香が「いつか一緒に行きたい」と話していた場所だ。
公園に着くと、そこは静かな場所だった。芝生が広がり、遊具はブランコと滑り台が一つずつ。子供たちが遊んでいる様子もなく、どこか寂しげな印象を受ける公園だった。真由香がこんな場所を好んでいたなんて、少し意外だった。
「あの日、ここに連れてきたいって言ってたんだよな……」
彼女がそう言ってくれたあの日は、もう二度と戻ってこない。別れを告げられたあの日から、僕たちはこの場所に一緒に来ることはなかった。それでも、今ここにいることが、彼女との繋がりを再確認させてくれるような気がした。
「来たよ、真由香……」
僕はそう呟き、真由香の姿を心の中に描きながら、公園のブランコにそっと腰を下ろした。
ふと、ブランコを漕いでみた。誰もいない公園で、ただ一人。空っぽになった心を埋めるように、静かにブランコを漕ぎながら、真由香のことを考える。風の音だけが耳に届き、寂しさが胸を締めつける。
しばらく漕いだ後、ブランコを止めてふと上を見上げた。ブランコを支える部分に、何かが書いてあることに気づいた。「ワタシハキエタダレカノテデ」と、掠れた文字で刻まれていた。それはまるで、消えた真由香の声のように感じられた。
「これって……ダイイングメッセージ?」
一瞬、悪戯かもしれないという考えが頭をよぎったが、何かが引っかかって仕方がない。ただの子供のいたずらではない気がした。そう思いながら、他にも何か書いてないかとブランコ周辺を調べてみる。
すると、ブランコの柱の根元に、もう一つ短い言葉が刻まれていた。「オモイデノバショ」。その言葉を見た瞬間、真由香のことが脳裏に浮かんだ。
「思い出の場所……真由香の、思い出の場所ってことか?」
彼女がよく話していた場所。記憶を掘り起こそうとするが、すぐには思い出せない。真由香が以前、インタビューで「思い出の場所」について語っていたことがあったはずだ。その場面が頭をよぎるが、あまりにもぼんやりしていて、どこを指していたのかまでははっきりしない。
ドキュメンタリー映画が二作品あることを思い出した。一つ目は『僕たちは飛べるかも』、もう一つは『僕たちはまだ飛べない』。どちらかの作品で、真由香が「思い出の場所」について詳しく語っていた気がする。しかし、どちらの映画だったかまでは思い出せない。
もう一度、見直す必要がある。そこに、彼女の行方を示す手がかりがあるかもしれない。胸の中では、微かな期待と不安が入り混じった感情が膨らんでいた。