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涼ちゃんside
スタジオの廊下は、今日に限ってやけに静かだった。涼ちゃんは両腕いっぱいに楽譜を抱え、次の練習のために楽屋へ戻ろうとしていた。
ドアノブに手をかけた、その瞬間。
中から、若井と元貴の声が漏れてきた。
「…あいつ、ほんま不器用なとこあるよな。」
「いや、分かる。しかも気にしすぎるタイプだし…もっと気楽にしたらいいのに。」
言葉だけが、廊下に響いた。
本当はふたりとも、心配して話していただけだ。
でも、タイミングが悪すぎた。
涼ちゃんの耳には、
“自分の短所を裏で言われている”
そんな風にしか聞こえなかった。
胸の奥がズキッとして、呼吸が浅くなる。
(ああ…やっぱり、2人はこう思ってたんだ。)
涼ちゃんは、そっと手を離し、
開きかけたドアを閉めた。
楽譜が腕の中でふるふる震える。
抱えたまま、何も考えられず、そのまま廊下を歩き出す。
足音をできるだけ殺しながら、
まるで逃げるようにスタジオの端まで。
⸻
若井「…あれ、今ドア動かんかった?」
元貴「誰か来てた?」
2人が顔を見合わせる。
若井「あっ…もしかして涼ちゃん…?」
その頃にはもう、
涼ちゃんは別室の隅で楽譜を抱きしめ、背中を丸めていた。
自分の短所を言われたのが辛いんじゃない。
信頼してる2人から聞こえた
それが何よりも堪えた。