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知らないふりをすることもできた。しかし、千紘はもう十分我慢したのだ。ガツガツ攻めたい時も、なんとか踏ん張って欲を抑えた。
可愛い凪が必死に頑張ろうとしているというのに、ここで動かなければ男が廃る。千紘はそう思いながら、頭を撫でる手を軽く浮かせて指先で凪の耳をなぞった。
千紘に抱きついたまま、凪はピクリと体を震わせた。
「ねぇ、凪。どこまでなら触っていいの?」
「~~~~~」
千紘が尋ねてもギュッと力を入れるばかりで、余計恥ずかしそうに口を閉ざした。千紘は嫌がっていないことを確認すると、ふっと口角を上げて親指と人差し指とで挟み込むようにして首筋を撫でた。
「っ……」
「本気で嫌だったらストップね。凪が教えてくれたセーフワードってやつ」
SMなどをする時に、事前に決めておくプレイの中断を示す合言葉だ。千紘はそれを思い出し提示する。凪が本気で嫌がったら止める。でも、求めているのならいくらでも与えてあげたかった。
千紘のセーフワードの提案にも反応を示さない凪だが、千紘の触る手には拒絶することなく素直に受け入れていた。
上の服を捲って手を入れても、脇腹を撫でても、胸の突起に爪が掠っても凪は甘い声をあげながら体をビクンビクンと反応させるばかりで嫌だとは言わなかった。
その内凪のパンツを下から押し上げるように膨れているのを見つけて、千紘はゾクリと血が騒ぐのを感じた。
実に久しぶりの感覚だった。もう凪とこんなことをする機会はないかもしれないと思うこともあった。チャンスがあってももっと何年もかかることを覚悟していた。
千紘は、散々我慢し続けた自分を褒めてあげたかった。あの時欲に負けて凪に手を出していたら、今ここに凪はいなかったかもしれないし、こんなふうに甘えてくる凪を見ることは絶対になかった。
千紘も自分の体が熱くなるのを感じていた。脈はドクドクと激しく打ち、胸の底から興奮する。煌々と照らされた光りの下で、凪は白い肌を露わにさせる。
セラピストをしていた頃には客と出かけたからといって少し日焼けしていることもあったが、内勤職となった今は千紘と出かける以外は屋内で過ごしているため特に白い肌が目立った。
千紘も色白だと言われる方だが、自分の肌を見るのと好意のある相手の綺麗な部分を見るのとではわけが違った。
ほんの些細な魅力が千紘にとってはとてつもなく魅力的なのだ。今更やめろと言われても、もう止めてあげられそうになかった。
長い腕を使って膨れた凪の下半身にまで触れた。もうしっかりと硬くなっていて、千紘ははあっと思わず恍惚の吐息を漏らした。
千紘の興奮を側に感じた凪は、ようやく全身から千紘の欲を肌にも感じる。恥を忍んでやっとのことでお誘いしたのだ。
今、自然と行為に進めている。そう思えたことがなによりも安心感を与えた。
「ち、ひろ……?」
「……ん?」
「……ここじゃ、ヤダ……」
恥ずかしがるように、甘えるように頬を擦り寄せる。凪の下腹部が顔を出し、もう少しでそそり立った竿まで飛び出てしまいそうだった。
さすがにこんな明るい中、ましてリビングのソファーの上だなんて色気がない。
凪はそう思いながら、チラリと寝室へと目を向けた。
「うん。ベッド行こう。凪起き上がれる?」
すぐに凪の言葉を理解した千紘は、可愛い、可愛いっ! と心の中で何度も連発しながら平然と装って紳士的に凪を寝室へとエスコートした。
何度も体を重ねたはずなのに、凪は初めてするかのように顔を赤らめてそれを手の甲で隠した。
千紘だって久々過ぎてどんなふうに抱いていいのか戸惑った。今までは自分の欲に任せてしまっていたし、凪から千紘の体で試したいと言われた時は好奇心もあった。
けれど、今回は何かが違った。こんなふうに照れている凪は初めて見るし、なんだか恋人同士のセックスのように思えた。
本当は千紘だって最初からこんな展開になったらよかったと思っていた。そしたら無理やりなんてしなかったし、凪を泣かせることもなかった。
それでも色んなものを乗り越えてようやくここまできたのだ。なんとか繋ぎ止めていたものが遠くに離れていって、想いを募らせたところに帰ってきた。
とても言葉では言い表せないくらい愛しくて、大切な存在だ。
だから凪の気持ちに応えたいし、この一晩を無駄にはできないし、失敗もしたくない。あくまでも凪のペースに合わせて進めていくしかない。
この際自分の欲望は二の次にして、凪を満足させることに徹底しようと千紘は決めた。
2人は全ての服を剥ぎ取って、直接肌を重ねた。千紘はすぐにでも先に進みたいのをぐっと我慢して、暫くギュッと凪を抱きしめた。
凪の速い鼓動が伝わってきて、千紘は嬉しくて思わずニヤけそうになる。
緊張しているのも、期待しているのも自分だけではない気がしてようやく凪の気持ちが近くに感じたからだ。
それは凪にも伝わったのか、遠慮がちに両腕が千紘の首に回された。こんなにも密着したことなんかあったかな? と千紘が考えるほどにどこもかしこもピッタリとくっついて、まるで1つの個体になった気分だった。
挿入していなくても1つになれる感覚を得て、落ち着きと癒しを体感する。それから自然な流れでゆっくりと唇を重ねた。