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kaede🍁
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これは魔王モードの目黒sideのお話。
目黒は夢を見ていた。
目を開けると、目の前に真っ白な羽を生やした天使がいた。
「……誰?」
「天使です」
「……あべちゃんは?」
目黒が最初に気にしたのは、天使ではなかった。
眠る前。
阿部は少し顔色を悪くして、リビングのソファで眠っていた。
心配になってベッドまで運び、しばらく寝顔を眺めていたはずだ。
そのまま自分も眠ってしまったらしい。
「ねえ、あべちゃん大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
天使は随分軽かった。
「寝たら治るから」
「本当に?」
「多分」
「多分?」
目黒の眉間に皺が寄る。
「俺、帰る」
「待って待って。目黒くんにお願いがあるの」
「あべちゃんのところに帰りたい」
「すぐ終わるから!」
天使は目黒の両肩を掴んだ。
「勇者になってほしいの!」
「……勇者?」
話が急すぎる。
___________
天使によれば。
現在、異世界では魔王がモンスターを倒して回っているらしい。
「魔王が倒すの?」
「そう。今回の魔王、いい人だから」
「じゃあ勇者いらなくない?」
「いるの!」
天使が必死に否定する。
「魔王、すっごく頑張ってるんだけどね。ちょっとおっちょこなの」
「……嫌な予感する」
「陸のモンスターは順調に倒してるんだけど」
「うん」
「海、完全に忘れてる」
「……。」
「海のモンスター、一匹も倒してない」
目黒は頭を抱えた。
「それ魔王に言えばいいじゃん」
「もう遠くまで行っちゃった」
「追いかけて教えれば?」
「面倒くさい」
「天使辞めた方がいいよ」
「ということで!」
天使が強引に話を進める。
「目黒くんには勇者になって、魔王が見落とした海のモンスターを倒してもらいます」
「俺、海担当なの?」
「そう」
「……早く帰れる?」
「全部倒したらね」
それなら仕方ない。
目黒はため息をついた。
「あべちゃん待ってるから、早く終わらせる」
「よし!」
天使は満足そうに頷いた。
そして思い出したように聞く。
「お供ほしい?」
「ほしい」
知らない世界に一人はさすがに心細い。
「じゃあ適当に用意するね」
「適当?」
「いってらっしゃーい!」
「ちょっと待っ――」
目の前が真っ白になった。
___________
次に目を開けると。
目黒は見知らぬ町に立っていた。
腰には剣。
服装まで勇者らしく変わっている。
「……本当に異世界来ちゃった」
そして隣を見る。
「蓮じゃん!」
「……佐久間くん?」
そこには、目黒と同じように剣を装備した佐久間がいた。
「なんで?」
「俺も勇者だから!」
「適当に用意されたお供、佐久間くん?」
「扱い雑じゃない?」
佐久間は笑っている。
目黒は少し安心した。
知らない人よりはずっといい。
「佐久間くん、状況分かってる?」
「海のモンスター倒すんでしょ?」
「そう」
「任せて!」
妙に頼もしい。
「俺、一回ここ来たことあるから!」
目黒が固まった。
「……一回来たことある?」
「うん」
「異世界に?」
「そう!」
「なんで?」
「色々あって」
「色々で異世界来ないでしょ」
佐久間は気にせず歩き始める。
「しかも船が隠されてる場所も知ってるよ」
「本当に?」
ようやく目黒にも希望が見えた。
早くモンスターを倒して。
早く現実へ戻って。
阿部の様子を確認したい。
「じゃあ佐久間くん、案内お願い」
「任せろ!」
佐久間は勢いよく走り出した。
しばらくして。
辺りを見回す。
「前来た時と景色変わってるかも」
「……。」
「でも大丈夫!」
「本当に?」
「勇者二人いるんだから何とかなるって!」
目黒は空を見上げた。
適当な天使。
おっちょこな魔王。
一度異世界へ来たことがあるのに、道を覚えていない勇者。
不安しかない。
「あべちゃん……。」
今頃、大丈夫だろうか。
「俺、帰れるかな……」
「大丈夫だって、蓮!」
佐久間が楽しそうに目黒の背中を叩く。
こうして。
阿部のもとへ一秒でも早く帰りたい目黒と、なぜか異世界経験者の佐久間による、海のモンスター討伐が始まった。
___________
「そういえば蓮、ステータス見せて」
「ステータス?」
「こうやって見るの」
佐久間が突然、目黒の前に半透明の画面を出した。
佐久間が操作すると、目黒の名前と能力値が並ぶ。
「えーっと……体力、攻撃力、防御力……」
順番に確認していた佐久間の手が止まった。
「……え?」
「何?」
「蓮、運めちゃくちゃ高いじゃん!」
「運?」
「うん。異常に高い」
佐久間は数字を二度見してから笑った。
「あべちゃんと一緒じゃん!」
「あべちゃん?」
「前来た時、あべちゃん賢者だったんだけどさ。めちゃくちゃ運がよかったんだよ」
「それは少し聞いたことある」
以前。
阿部が夢で異世界を旅したらしいことだけは、目黒も知っていた。
詳しく聞こうとしたこともあったけれど。
阿部はなぜか遠い目をして、
『色々あったんだよ』
としか教えてくれなかった。
「……佐久間くん」
「何?」
「前回何があったの?」
「色々」
「あべちゃんと同じこと言ってる」
「長い旅だったからね」
ますます気になった。
___________
途中で立ち寄った町で、佐久間は真っ先に道具屋へ入った。
「今回は安くてよかったー!」
「何買うの?」
「いいもの」
佐久間は店員と何やら話し始める。
そして。
持っていた所持金を全部、机の上へ置いた。
「……佐久間くん?」
「これで買えるだけください!」
「待って。全部使った?」
「うん!」
「これから旅するんだよね?」
「大丈夫!」
何が大丈夫なのか分からない。
しばらくして。
大量の小さな包みを抱えた佐久間が戻ってきた。
「はい、蓮」
「何これ?」
渡されたものを見る。
細くて小さな針。
「毒針!」
「……毒針?」
「うん」
「これに全財産使ったの?」
「そう!」
目黒は理解できなかった。
「剣とか防具とか買わなくていいの?」
「蓮、運いいから大丈夫」
「運に任せすぎじゃない?」
佐久間は一本取り出して説明する。
「これ、モンスターに投げて」
「うん」
「運がよければ、めちゃくちゃ強いモンスターでも一発で倒せるよ」
「……本当に?」
「本当」
佐久間は目黒のステータスをもう一度見る。
「普通の人だと全然効かないこともあるんだけど、蓮これだけ運高かったら結構いけると思う」
「そんな戦い方ある?」
「前回あべちゃんがやった」
目黒は少し黙った。
賢者姿の阿部が。
毒針を投げているところを想像する。
「……かわいい」
「今の話でそこ?」
「だってあべちゃんでしょ?」
「蓮、異世界来ても変わんないね」
佐久間は呆れながら毒針を大量に目黒へ渡した。
道具屋を出ると。
佐久間は急に真面目な顔になった。
「でも、俺ら二人じゃ無理だと思う」
「毒針大量に買ったのに?」
「それでも」
佐久間は地図を広げる。
海は想像以上に広かった。
そのあちこちにモンスターがいるらしい。
「二人じゃ無理」
「じゃあどうする?」
佐久間は地図上の町を指差した。
「仲間増やす」
「誰かいるの?」
「酒場行けば冒険者がいるから」
「なるほど」
ようやく。
勇者らしい展開になってきた。
「次の町に大きい酒場があるんだよ」
佐久間は歩き出す。
「そこで強そうな人探そう」
目黒も後を追う。
「どんな人がいい?」
「海だから……回復できる人と、魔法使える人は欲しいかな」
「ちゃんと考えてるんだ」
「俺、一回世界救ってるからね?」
「そうだった」
佐久間は胸を張った。
「今回は経験者だから任せて!」
「道迷ったけどね」
「それは言わないで」
___________
二人は次の町へ向かった。
目黒の鞄の中には。
佐久間が全財産をつぎ込んだ大量の毒針。
「……佐久間くん」
「何?」
「俺たち今、お金ないんだよね?」
「ないよ」
「酒場で仲間雇うお金は?」
「……。」
佐久間の足が止まった。
「……仲良くなれば無料で来てくれるんじゃない?」
「適当だなぁ」
天使といい。
佐久間といい。
この世界には適当な人しかいないのかもしれない。
目黒は小さくため息をついて。
それでも佐久間と並んで歩いた。
目的は一つ。
海のモンスターを全部倒して。
一秒でも早く。
眠っている阿部のところへ帰ることだった。
コメント
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あらためて見ると、魔王モードの目黒sideって視点が新鮮でいいなって思ったわ。天使の適当さとか、佐久間が異世界経験者って設定がちゃんと伏線になってて熱い。特に「あべちゃん待ってるから」って何度も言う目黒の一途さが刺さる…。運の高さに全財産つぎ込んだ毒針って戦い方、阿部の賢者時代を彷彿とさせるし、この先の展開が気になって仕方ないわ🔥