テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
総統命令 第1話
勝利の宴の喧騒は分厚い扉を隔てたはずの総統室にまで、微かな地鳴りのように響いていた。
大戦を勝利で飾った今夜、城内は歓喜に沸いている。
だが、その狂乱の主役であるべき男_
我々だの総統grは、喧騒を避けるようにして一人、総統室のバルコニーに佇んでいた。
初夏の夜風が、心なしか火照った肌に心地いい。
手元にある高級な琥珀色の酒を口に含む。
いつもなら冷徹な思考を保つgrも、今夜ばかりは勝利の美酒に少しばかり酔っていた。
g「、、ふぅ。」
紫煙を夜空に燻らせながら、grは小さく息を吐き出す。
その脳裏に浮かぶのは、戦場で誰よりも鮮烈に命を燃やし、勝利を毟り取ってきた一人の幹部のことだ。
_zm。
その名を心の中で呟くだけで、胸の奥がチリついた。
grはzmに、狂おしいほどの情愛を抱いている。
しかし、その想いを伝えるつもりは毛頭なかった。
自分は組織のトップであり、彼はその強力な刃。
歪な感情でその関係を壊すわけにはいかない。
この気持ちは、誰にも知られぬまま墓場まで持っていく。
それがgrの不磨の鉄則だった。
z「、、何しとん、gr。」
背後から、少しろれつの回っていない、聞き慣れた声が響いた。
振り返ると、そこには顔を真っ赤に染め、千鳥足で歩いてくるzmがいた。
フードは珍しく被っておらず、潤んだ瞳が露わになっている。
宴会場の酒を片っ端から煽ってきたのだろう。
g「嗚呼、zmか。主役がこんなところで何をしている。」
z「んふ、主役はgrやろぉ??俺はあそこの空気あつ苦しくて脱出してきてん。そしたら、寂しそうに黄昏とる総統様が見えたから笑」
zmはへらへらと笑いながら歩み寄り、バルコニーの手すりに寄りかかっているgrの身体に、遠慮もなく体重を預けてきた。
いつもなら一歩引くはずの距離感が、アルコールのせいで完全に崩壊している。
g「、、酔いすぎだ、zm。」
z「酔ってへんって〜笑、、なぁ、gr。今夜くらい、俺の相手してや。」
見上げるzmの唇が、濡れたように光っていた。
208
夜の甘い空気。
互いに回ったアルコール。
そして、ずっと抑え込んできた執着。
さまざまな要因が重なり、grの理性の鎖が、音を立てて軋んだ。
g「、、お前が悪いからな。」
どちらからともなく、引き寄せ合うように唇が重なった。
チュ、と小さな音が夜の静寂に溶ける。
それは、ほんの挨拶のような、軽いバードキスだった。
だが、一度触れ合ってしまえば止まらない。
離れては、またすぐに重ねる。
何度も、何度も、吸い付くように互いの唇を啄み合った。
z(あ、これ夢やな。)
zmの脳内は、アルコールと幸福感で完全に麻痺していた。
ずっと、ずっと好きだった男が、目の前で自分に何度も口づけをしてくれている。
こんな都合のいい現実があるはずがない。
これは、宴の席で寝落ちした自分が見ている、都合のいい夢なのだ。
だから、焦る必要は無い。
zmは夢の心地よさに身を委ね、grの首に腕を回して、もっと、と強請るように唇を押し付けた。
だが、grの理性が、zmのあまりにも無防備な応じ方に警鐘を鳴らした。
g(待て、いくら酔っているとはいえ、これはおかしい。)
zmは、かつて提出された適性報告書ではノーマル(一般人)、あるいは第二性を持たない性質とされていたはずだ。
だが、この執拗なキスに対して、あまりにも抵抗がなさすぎる。
それどころか、grのdomとしての本能が、zmから微かに漏れ出る、甘く切ない、サブ特有の気配を察知し始めていた。
g「っ、zm、待て!」
grは焦りを覚え、強引にzmの身体を引き剥がした。
息を荒くし、困惑の目を向ける。
本当にこれでいいのか。
正気に戻った時、彼に拒絶されるのではないか。
そんな恐怖がgrを支配しかけた。
しかし、突き放されたzmは、怒るでもなく、ただ蕩けたような顔でへらへらと笑った。
z「なーんや、おしまい?、、あーあ、俺、最近ずっと欲求不満なんよな〜笑」
顔を赤く染め自嘲気味に、けれどどこか誘うよう、バルコニーから見える庭を眺めてzmはそう言った。
その言葉が、grのdomとしての支配欲に、パチンと火をつけた。
夢だと思っているのか。
それとも、自覚があって煽っているのか。
確かめる方法は、一つしかなかった。
グルッペンは冷徹な、けれど有無を言わせぬ絶対的なdomの声を喉の奥から絞り出した。
g「zm。Kneel。」
その瞬間、zmの身体がビクンと大きく跳ねた。
zmの意思とは関係なく、その骨組みが、筋肉が、domの明確なコマンドに過剰に反応する。
ストン、と綺麗な音を立てて、zmはバルコニーの冷たい床に両膝を突き、grの足元に見事に跪いたのだ。
z「あぇ、、?」
zm自身、何が起きたのか分かっていない。
ただ、身体が芯から痺れるような快感と、絶対的な安心感に包まれ、視界がさらにとろんと濁っていく。
grは、その光景に大きく目を見開いた。
g「お前、、subだったのか、、。」
報告書の内容とは180度違う、目の前の現実。
いつもは牙を剥き出しにして戦場を駆ける脅威が、今や自分の足元で、顔を赤らめ、潤んだ瞳でじっと自分を見上げている。
その従順で、無防備で、酷く艶めかしい姿は、grの奥底に眠る凶暴なdomの独占欲と加虐心を、これ以上ないほどに沸き上がらせた。
g(墓場まで持っていく、だと?、、ふざけるな。こんなものを見せられて、引き下がれるはずがないだろう。)
もはや、理性の鎖は粉々に砕け散っていた。
g「、、zm。これは酒のせいだ。明日になれば、すべて宴の幻だったと思えばいい。」
grは妖しく目を細め、跪くzmの顎を乱暴に、けれど愛おしそうに持ち上げた。
引き返せない夜が、今、幕を開ける。
総統命令 第1話 NEXT 💬2