「うわー。この駅何もないな。」
二人はあのまま列車を乗り継いでいたが、流石に夜中は列車が動かない。仕方なく、その辺の駅で列車を降りたのだった。
「暗いね。明かりがいるかな。」
アリシールは、左手を扇子を持つような形にした。
「イメージ」
アリシールがそう唱えると、一瞬手元が白く光り、次の瞬間には、左手にランタンが握られていた。
「魔法はもう嫌!って感じなこと言ってたのにな。」
「いいでしょ、何かと便利なんだし。」
「へぇー。」
「と・り・あ・え・ず!まずはどこで寝るのかを考えるのが先でしょ!」
アリシールが話をそらした。
「じゃあ、そっちも作るか!」
アルレイドはニヤッっと笑って見せた。そして、右手をさっきのアリシールと同じ形にした。
「イメージ!」
アルレイドがそう唱えると、辺りが一瞬金色に光り、柄の長い杖が握られていた。その杖は、二人の髪色とは違い、金色で、先端が大きなひし形になってる。そして、そのひし形の中心にひし形の穴が空いているという、不思議な形をしていた。
「ちゃんと作れるの?」
アリシールが心配そうに聞いた。
「大丈夫だって!」
そう言いながらアルレイドは、杖をくるっと回転させ、ひし形の方を思い切り地面に突き刺した。
次の瞬間、杖が一瞬白く光り、その光が目の前の地面に流れ込んだ。その光は形を変え、やがて大きな箱のような形になり光は収まった。わずか一秒にも満たない間の出来事だった。
「…家?」
「小さい倉庫のつもりだ。中はちゃんと部屋。上手くいってればの話だけどな。」
大きな物ほど、練習をしないと魔法では上手く作れない。アリシールはその心配をしていた。
「大丈夫そうだよ!蹴ってもびくともしない!」
中に入るや否や、アルレイドは強度の確認をしていた。
倉庫の中にはベッドが二つと、思ったより狭く、窓が無いので、アリシールのランタンが無ければ真っ暗な空間だった。
「もう遅い時間だね。寝よう。」
そう言って、アリシールはベッドに潜り込んだ。アルレイドは声をかけようとしたが、もうすでに寝ている。
「大変だよ…私たちが選んだ魔女ってんのはっ!」
アルレイドもベッドに飛び込んだ。
「…まあ、今の方がアズベールにいた時よりは面白いけどな。あの時、私たち11歳ぐらいだったっけ。」
天井を見ながらそう言った。
アズベールは、二人の生まれ育った小さな町だ。あの小さな子供には、いつか帰ってくる。と伝えたが、旅に出てから、もう二年も経っていた。
「やりたいこと見つけて、帰った方がいいのかな…」
事あるごとに、アルレイドが考えていることだった。
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