6年生の3月、私は勇気を出せませんでした。もしあの時気持ちを伝えていたらどうなっていたんだろう。そんな気持ちがぼんやり残ったまま、卒業式が終わり、春休みもあっという間に終わってしまったのです。
〜中学校 4月〜
私は今年の春から中学生になる。そして今日は入学式の日。玄関のドアを開けると、暖かい春の風が吹いていた。まだ家だというのにとても緊張していた。中学校に行くための通学路は小学校の時とほぼ変わらない。それなのになぜだろう、全く知らないどこかの道を歩いている感覚になった。もう6年間も歩いてきた道なのに。
中学校がだんだん近づいてくると、見慣れない制服姿のみんなが見えてきた。みんなの初々しい制服姿を見ていると自分だけが浮いてるような気がした。そんな時、私を呼ぶ声が聞こえた。「萌香〜!(もか)」 親友の友里香(ゆりか)だった。友里香の顔をみた瞬間緊張が少し解けた気がした。もういつから分からないけれど、友里香とは1度も同じクラスになったことがないのに仲が良い。
そんな友里香とクラス表を見に行った。
「今年こそは同じクラスかな〜?」
「6クラスもあるからないでしょ笑」
予想は見事に的中してしまった、、私は1組で友里香は6組と、1番離れてしまったのだ。
4つの小学校から集まって来ているので知らない人がほとんどだった。そして小学校の頃に仲の良かった友達もみんな離されて本当に最悪なクラスだった。
地獄のクラスだなぁという気持ちで教室に入る。これが不幸中の幸いというものなのか、1番後ろの席だった。左には少し仲のいい男子生徒。名前は滝本。気の強い性格で面白いけれど正直めんどくさい性格。 右には全く知らない男子生徒がいた。先生が話していてもずっと前の席の女子生徒と話している。
無事に入学式が終わると次の日からは新しい日常生活が始まった。右の席の男子生徒は宮口、前の席の女子生徒は前川という名前らしい。
ホームルームの時間は自己紹介だった。
「南山小学校の相川です。」
「森川小学校の上田です。」
「天海小学校の小並です。」
「桜小学校の佐藤です。」
ちなみに4つの小学校の名前はこれで、私は森川小学校出身だ。ついに私の番だ、
「森川小学校の藤田萌香です。誕生日は、8月10日で好きなものは……」何も考えていなかったので頭が真っ白で言葉が詰まった。周りの視線をすごく感じる中でどうしたらいいのか分からなくなってしまった。すると、
「早く言えよ。笑」と、滝本にいじられた。
その瞬間クラスに少しだけ笑い声が響いて少し気持ちが軽くなった。「好きなものはいちごです。1年間よろしくお願いします。」これだけ悩んでいていちごは無いだろ、と自分の中で思ったけれど、もうどうでもよくなった。
4月があっという間に終わり、5月になった。
ついに席替えだ。
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