テラーノベル
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最初に違和感を覚えたのは、任務の最中だった。
タ「空、後ろ!」
声をかける前に、もう動いていた。
ダインスレイヴが。
剣を振るより早く、空の腕を引き寄せる。
そのまま――抱き込む形。
魔物の攻撃を背で受け流しながら、空を庇った。
普通なら、ここで終わる。
仲間を守る行動。
それだけ。
だが。
(……近すぎない?)
抱えたまま、離さない。
必要以上に。
ダ「……無事か。」
声が低い。
いつもの無機質な確認じゃない。
もっと――柔らかい。
空が笑う。
空「大丈夫。ありがと。」
その瞬間。
ダインの視線が、ほんの僅かに揺れた。
(あー……)
そこで確信した。
(これ、面白いことになってるな。)
⸻
それから観察を始めた。
意図的に。
戦闘中。
探索中。
休憩中。
とにかく見ていると――顕著だった。
空が近い。
物理的に。
肩が触れる距離に平然と入る。
覗き込む。
腕を引く。
背後に回る。
(無防備すぎるでしょ……)
だがもっと面白いのは――
ダインの反応だった。
嫌がらない。
いや、正確には。
嫌がりきれていない。
ダ「離れろ。」
と言いながら、離すのが遅い。
視線を逸らすのも遅い。
触れられた箇所を、わずかに意識している。
(理性で耐えてるタイプだ。)
そして決定的だったのが――
あの倉庫裏。
⸻
偶然じゃない。
半分は勘だった。
「そろそろ動くかな」って。
柱の影から覗いた時――
もう距離が終わってた。
壁際。
逃げ道なし。
顎に手。
顔、数センチ。
(うわ、ガチじゃん。)
思わず笑いそうになるのを堪えた。
ダインの目が、完全に理性と戦っている。
空は逃げない。
むしろ楽しんでる。
(煽ってるな、あれ。)
そして――
キス未遂。
触れる直前で止まった。
(惜しい。)
思わず拍手したのは、反射だった。
⸻
反応が最高
二人同時に固まった顔。
あれは反則。
特にダイン。
「見られた」というより
「邪魔された」顔。
(あー……これはもう確定だ。)
煽るしかない。
タ「どこまで進んだの?」
タ「キスは?」
沈黙。
一瞬の間。
それで十分だった。
(未遂までは行ってる。)
空の赤面。
ダインの無言。
全部答え合わせ。
⸻
試しに空へ近づいた。
わざと。
顔を覗き込む距離。
その瞬間――
引かれた。
空が。
背後へ。
完全に庇う配置。
ダ「触るな。」
低音。
明確な拒絶。
(うわ。)
思わず笑みが深まる。
(独占欲、思ったより重いな。)
空も少し驚いていた。
でも嫌がってはいない。
むしろ――
少し嬉しそう。
(両想いじゃん。)
⸻
帰ろうとする二人の背中に、わざと声を投げた。
タ「次は人目あるとこでやりなよー!」
足が止まる。
効いてる。
さらに畳みかける。
タ「次は本番見せてよ。」
――やりすぎたかな、と思った次の瞬間。
ダインの理性が爆ぜた。
空を引き込んで、路地裏へ。
(うわ行った。)
さすがに追わなかった。
いや。
追ったら無粋だ。
でも。
(数分後くらいに戻ってこないかな。)
壁にもたれて待つ。
しばらくして戻ってきた空は――
顔が赤い。
でも笑ってる。
(あ、したな。)
ダインは無言。
だが視線が柔らかい。
決定的だった。
⸻
面白い戦いは好きだ。
強敵との死闘も。
命のやり取りも。
でも――
(これはこれで最高だな。)
剣じゃなくて。
理性が削れる戦い。
一歩近づくたび、均衡が崩れる攻防。
煽れば崩れる。
触れれば守る。
見てるだけで飽きない。
(次はどこまで行くかな。)
柱の影から、また観察する。
二人は気づいていない。
いや。
ダインは薄々気づいているかもしれない。
でも排除しない。
なぜなら――
(空が楽しそうだから、か。)
肩が触れる距離で話す二人を見て、タルタリアは笑った。
「ま、邪魔はしないよ。」
小さく呟く。
タ「――面白いとこ以外はね。」
観戦者は今日も、最前列だ。
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