テラーノベル
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うつむいて自分の赤い靴を眺める。
でもこれでヒーローになりたいという密かな夢もスッキリ諦められる。ヒーローにならずとも敵〈ヴィラン〉処理班などと役に立てる仕事もあるわけだ。転孤はゆっくり空を見上げた。さっき見た青空と同じはずなのになぜか綺麗と思うことはできなかった。
その時、遠くで爆発音と共に黒い煙が上がった。
気づけばその現場に向かっていた。興味本位だった。幼い頃からヒーローと関わるなと言われた為ヒーローがいるであろう事故・事件現場に近づきヒーローの活動を見ることは少なかった。だから余計に気になった。ヒーローを諦めた今なら、見ても問題ないと思った。
爆発のあった商店街は炎に囲まれ、Mt.レディやシンリンカムイ、デステゴロが活動していた。そして商店街の狭い道の中央には1人の敵〈ヴィラン〉が暴れていた。1“人”と言うのか、人間には到底見えない異形大型敵〈ヴィラン〉だった。商店街の入り口を塞ぐように野次馬が集まっていた。その中に転孤も入り込んだ。
液体状の体であるため適任のヒーローがいないのだろう。あんな形の敵〈ヴィラン〉、倒せるような奴早々いないだろうが。
「おい!中学生が人質になってるらしいぞ!」
近くの野次馬が大声で話した。
あんなドロドロの気持ち悪い奴に捕まっているのか…考えただけで悪寒がする。ヒーローが来るまで精精頑張るんだな。人事のように心の中で応援して家に帰ろうとした時だった。
大きい爆発音がまた響く。
建物の破壊によるものじゃない。それは人質になってる中学生の“個性”だった。こりゃまた立派な“個性”だ。俺と違ってヒーロー向きの“個性”。小さな嫉妬心を抱えて人質の学生を見つめる。体中を敵〈ヴィラン〉のドロドロな液体に呑まれている。手足をジタバタさせているが次第に動きは鈍くなっていた。人質の中学生と目が合った。どこか弱々しい目。確かに、誰かを呼ぶ目だった。
転孤はただその目が自分を呼んでいるように感じた。
気づけば体が動き、炎の商店街の中へ走り出していた。後ろでヒーローたちが呼び止める声が響く。しかし体は止まらない。自分一人でこのヘドロヴィランを倒せる策なんか思いついてない。どうする?何をすればいい?頭をフル回転させて思いついたのはゲームでのボス戦。相手の気を引く何か…。
咄嗟に自分が肩にかけていたバックを敵〈ヴィラン〉に向けて投げた。バックから飛び出たうちの一冊のノートの角が敵〈ヴィラン〉の目に当たった。奇跡的に敵〈ヴィラン〉の力が緩まり、塞がれていた人質の口が開く。敵〈ヴィラン〉の元に駆けつけ一生懸命ドロドロの液体を掻き分ける。液体は掻き分けても掻き分けても消えず流れ続ける。それでも諦めずに転孤は手を動かし続けた。
「おいてめえ!!何してやがる無駄だやめろ!」
人質の中学生が口を開くなり辛口で転孤を逃がそうとした。それでも転孤は手を動かし続けた。
「やめねえ……!だってお前…助け求めてただろうが!」
焦る状況であるにも関わらず転孤は笑みを浮かべた。
「助けなんか…求めて…ねえ!!」
人質の中学生が強がるように否定する。
「邪魔を…するな!!ガキが!!」
敵〈ヴィラン〉が怒って手を掲げる。恐怖に転孤は目を思いっきり瞑った。
しかしその手はいつになっても襲って来なかった。恐る恐る目を開けるとそこには敵〈ヴィラン〉の手を抑えるオールマイトの姿があった。そのオールマイトは先ほど見てしまった痩せた体ではなく、頼り甲斐のある大きな体だった。
「オールマイト!?」
「君に諭しておきながら…ホント不甲斐ない…!!」
「次々と邪魔を…!」
敵〈ヴィラン〉がまた何かをしようとした時、オールマイトは目に見えない速さで人質の中学生と転孤の腕を掴み、
「今度こそ終わりだ!!デトロイドーースマァァァッシュ!!!」
と、大きく拳を上に奮った。 ヘドロヴィランは吹き飛んでいった。衝撃のあまりにオールマイトに掴まれた人質の中学生と転孤は気絶していた。
敵〈ヴィラン〉を倒した後もオールマイトは拳を掲げ続けている。しばらくして空が曇り始め、水滴がポツポツと降り始めた。
「…雨?」
野次馬の一人が水滴に気づいて呟いた。やがてそれは大粒の雨となり商店街を濡らした。
「…拳一つで天気を変えた!!」
一気に商店街が歓喜の声で包まれた。これがno,1ヒーローの力、強さ、安心感…。その空に突き上げた拳はその全てを物語っていた。
その後、警察が無事に敵〈ヴィラン〉を回収していった。危ない行動をした転孤はもちろんプロヒーローたちにとても叱られた。一方で人質となった中学生は高評価を受けており、プロヒーローたちに褒められたり将来サイドキックにならないかと勧誘を受けたりと一躍有名人になった。
説教がやっと終わり、少し落ち込んで転孤は家に帰り始めた。いつのまにか綺麗な青空は、夕日色の空に変わっていた。
家にはいつも通り着きそうだ、と少し安堵して歩いていた時だった。
「少年の元に私がぁ〜〜来た!!」
目の前の曲がり角から急にオールマイトが飛び出してきた。
コメント
2件
今回も面白かったです!続き、待ってます♪