テラーノベル
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「もう一回、して……」
カイが言って、
「したい……もう一度……覚えておきたいから、キスを……」
続けて、せがむようにも口にする。
しっとりと濡れそぼって、誘いかけるような唇に、ねだられるままに口づけを落とすと、
「んぅー……」
と、彼が焦れたように私の腕の中で、声に出して、
「ミクル……好き…」
再び自分から腕を絡めて、首に抱きついてきた。
「カイ……?」
けれどそのあとに急に反応がなくなり、どうしたんだろうと顔を上げると、彼はいつの間にかスゥスゥ……と寝息を立てて眠っていた。
「キスの途中で寝るなんて…ねぇ、カイ…?」
身体を軽く揺すると、「うん…?」と前髪がかかる長めの睫毛をしばたいて、一瞬私を見上げるけれど、
「……眠い…ごめん、ミク…」
またすぐに閉じてしまいそうにもなる目蓋に、
「眠いのはいいけど、仕事は……? 明日とか、仕事は大丈夫なの…?」
ちょっと心配になって、必死で呼びかけた。
「ん…大丈夫…。……マネージャーから、モーニングコールがあるから……。俺が、なかなか起きないんで、予定の二時間前ぐらいに、いつも電話が入る……」
「二時間も、前に…?」
彼の言葉にますます心配がつのる私に、
「うん…だからコールが着たら、起こして……」
そう言うとカイは、私の膝を枕に完全に寝入ってしまった……。
そんな彼がなんだか可愛くてしょうがなくて、私は膝上のカイの頭を手の平で撫でると、
「おやすみ…」と耳元に囁いて、彼を起こさないよう、テーブルの後ろにあるベッドへそっと自分の背中をもたせかけた──。
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