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「”彼女”は、止まることを知らなかった

そんな彼女は、気づいた時には…

”同じ”になっていたんだ…」



T・ユカは歩き続ける。


その足はいつまでも動き続けている。


たった一つの目的のために、いつまでも。


「待ちなさい!!」


T・ユカは振り返る。


その先にいたのは、セイレーン。テティスだ。


紫色の髪に海王星のような瞳が特徴である。


「そっちから出向いてくれるたぁ、ありがてぇなぁ」


「…ッ!アンタが…ヴィーナスを殺したの…?」


「誰だぁ?ソイツ」


「金髪天パのヤツよ」


「ん…?あぁ…殺った殺った。バリアのヤツだろ?もう跡形もなく吹き飛んじまったはずだぜぇ?」


T・ユカはニヤついている。


テティスは強く、強く拳を握りしめた。


「…サイコが…!許さない…!殺してやる…!絶対、殺す!!!!」


テティスの額に青筋が立った。涙も浮かんでいる。


直後、テティスはT・ユカの周囲に鉄くずをばらまいた。


「?………何をする気だ?」


周囲に散らばった鉄くずを見つめているT・ユカ。


すると次の瞬間、突然おさげの紐が切れ、T・ユカの髪が下りた。


「!?」


テティスのほうに向き直ると、いきなり超高速で釘が飛んできた。


「何て速さだ…」


間髪入れず、テティスは釘を衣の中から取り出す。


再び飛んできた釘をT・ユカは片腕で受け、テティスに接近。


そして、風穴形成で終わらせようとしたその時だっだ。


「グッ…!!ああああッ!?」


突然、片腕を中心に身体中にしびれが走った。まるで、電流を流されたかのようなしびれだった。


そのせいで少し威力が落ちたものの、なんとかテティスの顔面に一発、報いた。


テティスは鼻・口から出血した。


さらにもう一発と動き出したT・ユカだったが、再びしびれを感じたことで身体がひるんだ。


ひるんだところをテティスは狙い、、T・ユカの顔面に身体を半回転させながら裏蹴りを喰らわせた。

T・ユカはふらつきながら後ずさった。


「クソがッ…!まだ完全に回復しきれてねぇってのに…!」


T・ユカはさっきのしびれの大元である片腕を見つめた。


直後、再び釘が飛んできた。


T・ユカはなんとかそれをまともに受けることは免れたが、頬をかすった。


T・ユカは、片腕に刺さっている釘を発見した。


「…なるほど。アイツはこの釘を通してアタシの体内に電流を…」


T・ユカは釘を抜く。


T・ユカが少し距離をとるのと同時に、再び釘が飛んできた。


T・ユカはその軌道を目で確かめた。


釘は、最初にばらまかれた鉄くずのほうへと飛んでいっていた。


まるで、その釘が鉄くずひひきつけられるかのように…。


「分かった…。分かったぞ…!アイツの能力…!」


T・ユカは、それはもう凄い顔をしていた。


”殺せる”と分かったのだから。


ちなみに、テティスの超越能力は『電磁力』。


鉄類に超強力ば磁力を付与することができる。


そして、その鉄類が相手の体内に達した時、電流を流して相手を感電させることができる。


それが彼女の超越能力だ。


また、7つまでの鉄類は、地球の中心の磁力によって大地に固定することができる。

所謂マーキングの役割を果たすということだ。


「イケる…!殺せる…!!」


「!?」


T・ユカはテティスに向かって地面を蹴り、走り出した。


「バカが…!よっぽど死にたいようね…!」


テティスはまっすぐこちらにむかってくるT・ユカに釘を飛ばした。


釘は超高速でT・ユカの額へ迫っていく。


「アタシの勝ち…!」


と、テティスが言った矢先のことだった。


T・ユカは何かを上に投げ飛ばした。


「!?あれは…まさかッ!!」


釘だ。


すると次の瞬間、テティスの飛ばした釘は、磁力の赴くがままに、T・ユカによって上に投げられた釘へと軌道を変えていった。


T・ユカはテティスの目の前まで来た。


彼女にとっては、あとはもう風穴形成をブチ込んでチェックメイトだ。


テティスも負けじと釘を飛ばす。


どちらの攻撃が先に相手に達するのか。


その答えは、一瞬で出た。


T・ユカの片腕に釘が刺さる。


「これでッ…!」


テティスは電流を流す。

T・ユカの全身に電流が回る。


これで終わり…かに思えた。


直後、T・ユカの拳は、テティスの腹部を貫通していた。急所は外したということだ。


テティスは吐血した。


「そん…な…なん…で」


テティスはT・ユカを見つめる。


すると、テティスは”あるモノ”を見つけた。


T・ユカの太ももに針状のものが刺さっている。


髪留めだ。


その髪留めは、T・ユカにとって、両親からの最後の誕生日プレゼントであった。


T・ユカはその髪留めを太ももに思いっきり突き刺すことで、”しびれ”を”激痛”でかき消したのだ。


「アンタ…やっぱ、イカれてるわ…」


「うれしいなァ…。セイレーン様からそんなお言葉がいただけるなんて」


「こんな…ヤツに…ヴィーナスが…」


T・ユカは貫通した手を抜くと、テティスの血を払いながら落とす。


「ヴィーナス…ゴメン…。アタシ…アンタの仇…うてなかったよ…」


「…ッ!なッ…なんだよ…セイレーンのくせに仲間のことなんざ考えやがって…」


T・ユカは不快感を露にする。


テティスは、自身の命が消えようとしていくのを感じていた。


「あーあ…本当なら今日、ショッピング、行こうと思っ―」


T・ユカは、そんなテティスの頭を、アレスにしたときと同じように手刀で真っ二つにし、木を生やした。


テティスが木に取り込まれる際、テティスの頬を涙が伝っていたのを、T・ユカはその目で見た。


「なんだよぉ…やめろよぉ…。セイレーンのくせに…人間らしいこと…言ってんじゃねぇよぉ…!」


T・ユカは独り、震えていた。


セイレーンは”そういうヤツら”だ。


そう考えることで、今、自分がやっていることは”正しいこと”なのだと思うようにしていた。


心の底では彼女も分かっていた。


ユピテルのようにセイレーンは完全悪だけではないということも、自分自身”そう思わないと”やっていけないのだということも。


「じゃあ…どうすりゃいいんだよ…。アタシは…」


一体どこに、誰に、この怒りを、憎しみを、ぶつければ良いのだ。


彼女はもう、”分からなくなった”。





ある辺境の村……


村人たちはいつも通り、平穏な日常を過ごしていた。


そこに一人の少女がふらりと入ってきた。


T・ユカだ。


皆、笑っている。皆、みんな、ミンナ、笑っている。


村人たちのその幸せそうな笑顔が、彼女には、自らの不幸への嘲笑に見えた。


もう、なにもかもグチャグチャにしてやりたい。


次の瞬間、T・ユカの中にあったなにかが、プツンと、切れた。





気づくと、T・ユカは村の中心に立っていた。


T・ユカの目は、死にきっていた。


辺りの見渡すと、その周りには、老人や子ども、その子どもをかばうかのように倒れている母親らしき人物、武器をとろうとして倒れた大人、赤ん坊、そしてその母親らしき人物など…それらの死体が沢山転がっていた。


それらの死体のどれらも、胴体に空洞があった。





ああ、やってしまった





T・ユカはそう思った。


今、このとき、この瞬間、そこに立っている者は”悲劇の主人公”ではなくなった。


そこに立っているのは、一人の”罪人”であった。

TERRE ~穢レタ世界ノ黙示録~

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