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皆の注意が三個の極小な石に集中する中、コユキと一緒に灰色の粉の山を見ていたバアルがハッキリとした声で口にするのであった。
「こっちの粉には魔力がこれっポッチも残っていないよ! うーん、こんな物見た事も無いよ…… 何だろうね? 妾にもさっぱり分からないね?」
「バアルちゃん、そうなのん? アタシこれ見た事あるわよ?」
『えっ?』
突然のコユキの言葉に揃って驚きの声を上げる一同に対して、事も無げに答えるコユキである。
「一年半前、オルクス君がうちの家族を襲った時にね、プスリとやって魔核に戻したでしょ? あの時に魔核と一緒に残った灰みたいな奴とそっくりだもん、きっと同じ物なんでしょうね…… でもそれ以来スプラタ・マンユの皆の時も、バアルやアスタの時も他の皆の時にもこれ残らなかったからさ、おかしいなとは思っていたのよね、やっぱり見間違いじゃなかったか! 良かった良かった!」
この言葉には善悪が大きな目を剥いて返した。
「そ、そうなの? そんな粉の事なんか今まで聞いた事が無いのでござるよ?」
「ああ、言っていなかったかな? んな大事な事だと思わなかったからさ、ゴメンゴメン、なははは」
「それでコユキ姉様、その粉は一体どうしたの?」
バアルの声に答えたのはアスタロトである、何故か腕を組んでやけに偉そうな風情であった。
「ズタ袋を通して我の元に送られてきたんだ! 当然それらも取り込んで復活の贄にしようとしたんだが、これが変な物質でなー、暫(しばら)くすると体のあちらこちらが激痛に襲われてな? 魔力で封印して何とか体外に放出したんだが、消滅するかと思ったぞ…… その後だよ、不愉快だから城から運び出すように命じたレッサー達がな、触れた瞬間次々と『馬鹿』になってしまってな、全部で四十六体だったか? 命令もしないのに現世(うつしよ)に顕現してしまったんだよ! あれには驚いたが、結果コユキとアヴァドンが回収してくれたから助かったんだよな」
この言葉には緑色のカエルの編みぐるみ、編みぐるみ軍団の隊長がしみじみと頷きを返すのであった。
アヴァドンも少し懐かしそうな感じで言う。
「ああ、懐かしいな! あの時は吾輩が大活躍であったなぁ、何しろコカトリスとバジリスクだったからな? 放置して町中にでも入ってしまったらどれ程の人間が石化の憂き目にあっていた事やら…… クフフ、とは言えこのアヴァドン様の前では無力なトカゲとニワトリに過ぎなかったがな! クフフフ、クーハハハハッ!」
この発言に首を傾げたのはいつも自信満々な脳筋魔神アスタロトであった。
「ええ? コカトリスとバジリスク? あいつ等人型でそこそこ強力な悪魔だったんだけどなあ? ネヴィラスとサルガタナスの配下から選りすぐられた我を守護する親衛隊だったのだが…… 石化か? また凶悪な依り代を選んだものだな……」
コユキが答えた。
「八郎潟(はちろうがた)だったわね? そう言えば周辺にはトカゲは疎か(おろか)鶏すら皆無だったわねぇ…… 何であんな形で顕現したんだろうねえぇ?」
アスタロトがビックリ顔で答えた。
「そうなのか? 依り代が無いとか…… おまえらどうやって顕現したんだ?」
カエルの編みぐるみを先頭にして一斉に首を傾げる編みぐるみ達。
「何だ、自分達でも分かっていないのか? お前たち」
「ねえ? 変よね? なはは、は?」