寂しがりの大人

渡辺が撮影終わりに向井の家にやって来る。

晩ご飯は出されたお弁当を食べたから、コーヒーを飲む。

コーヒーを飲んだら、いつもは向井が「帰るか？」と言う。

渡辺はそれが寂しい。

だから渡辺が帰るって言うまで、向井は何も言わない。

今夜も、向井の腰に腕を回し膝枕で眠っている。

向井の上着をかけて、向井は優しく頭を撫でている。

渡辺がぼんやり目を覚ます。

向井にぎゅっとしがみつく。

向井ーどないしたん？

渡辺ー帰りたくない。

向井ーまだおれる？

渡辺ーいや、もう帰る。

向井ーそうか。

帰る準備をしている渡辺を撮る。

すぐに渡辺を抱きしめる。

渡辺ーここでいい。

向井ー玄関まで行くよ。

渡辺ー引き止めてほしくなるから、ここでいい。

向井ー分かった。

渡辺ーじゃあ、帰る。

向井ーまた来てな。

渡辺は手を振り帰って行った。

向井は急に取り残された気分になる。

無理と分かってても、一緒に暮らしたいと思ってしまう。

まだまだ、子供だなと思う。

もう2年以上経つのに、ますます好きになる。

離したくない。

歳を１つ重ねて渡辺に近づいているが、中身は寂しがりので甘えん坊の向井のまま。

あんな渡辺のような大人になりたいと思っていたのに、寂しがりのまま、甘えん坊のまま。

渡辺も寂しがりのだが、あの人は大人。随所にそういうのが見られる。向井を甘やかしてくれる大人だ。

向井ーはい。

目黒ー康二、次の撮影休みいつ？

向井ー3日後や。

目黒ー翔太くんは？

向井ー撮影。

目黒ーじゃあ、俺と亮平くんは、あの海行ってくるね。

向井ーめめは、休みなんか？

目黒ー3日後ね。

向井ーええなぁ。

目黒ー翔太くんの撮影休みは？

向井ーしばらくない言うてた。

目黒ー残念だね。

向井ーそやねん。

目黒ーうまくいかないね。

向井ーめめらは楽しんでき？

目黒ーうん。

渡辺が知ったらがっかりするだろう。

1番行きたいのが渡辺だろう。

内緒にしておこう。