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第58話
誕生日から一ヶ月。
あの熱は直ぐに下がって次の日にはケロッとしていた。
今日は訓練にはいれる日。
訓練に入る許可は医師からもらってるけど、まずは、素振りから始まる。
「ロルフ。無理するなよ」
「はい」
団長がいつもより気にかけてくる。
まぁ、そうだろうな……
いつも通りその日も終えられたけど、何か違和感があった。
でもよく分からずに眠りにつけた。
一週間後。
有休をもらって、エルドへ向かった。
「ロルフ! 丁度いいところにくるな。少し来てくれ」とフリオが僕を見てから直ぐに呼び寄せた。
何だろう……?
そこに行くと女の人が赤ちゃんを抱いていた。
え? その、まさか?
「二月前、娘が生まれたんだ。会わせようか迷ってた所だったんだが、良いところに来てくれたな」
「おめでとう。ってか、いつ結婚してたの?」
「ロルフが起きる一年くらい前だな」
一年前……マジか……
「何もかも、抜かされちゃったな」
「いや、三十年、生きててロルフみたいに目まぐるしく動くなんてした事無いぞ」
目まぐるしくって言い方。もう少し何かあるでしょ。
「ロルフさんですか? 話はフリオからよく聴いています。私はカレンです。この子はキーラ」
「はい。よろしくお願いします」
そっか……結婚も、子供も、生きてる年数も、経験も……
「ロルフ。折角の休日なんだろ。俺も資料が貯まってるから一人で息抜きしてこい」
フリオが僕の背中をポンと押した。
「あ、うん」
……と言われたものも、行くところが無い。
別にいきたい所も無いし、散髪も最近したし、欲しい物も別に無いし……
そう思いながら、町中をほっつき歩いていた。
ソフィーも最近見かけないというか、噂には休みを取って遠くに行ってるとも……確かに、光は薄くなってるからな……
それより、ラルフの事、いつ話そうか?
ラルフとは、僕のお兄ちゃん。ソフィーが生まれる前にいなくなったらしい。詳しく聞けないまま、ここまで来てしまったけど……
フリオやアニカよりも、先ずソフィーに話したい。というかソフィーには知る権利がある。
そんな事を考えていると、見たことある十歳くらいの男の子――リュックがいた。
僕より一つ年上で、好奇心旺盛だった。
周りの目を気にして喋らない僕とは正反対だったけど、仲良しだった。
だけど、ある日、崖から滑り落ちて、助けようと一緒に落ちた僕を庇って、リュックは逝ってしまった。
『ロルフ……そんな余裕そうな顔をして、なんだよ』
そう言いながらリュックは僕の胸ぐらを掴んだ。
リュック……?
僕の知ってるリュックじゃない……
苦しい。痛い。
『俺は、命かけて守ったのに……はぁ〜……結局、なんだよ。お前は、面倒だな……』
そう言って、僕を乱暴に地面に叩きつけて脇腹を蹴られた。
痛い……体もだし、心も……
僕は全ての攻撃受け止めて僕の中で止めた。
リュック……どうしたの……?
「ごめん。でも、っ……」
何かの黒い物体が僕の体の中に入ったらリュックがいなくなった。
『勇者様。大丈夫?』
妖精が横たわってる僕の真上から話しかけてきた。
「うん。このくらい大丈夫だよ」
✡
あれからとんでもない量の資料を片付けたら一日の大半が潰れてしまった。
それから、騎士団の練習場で訓練をしたらもう夜だ。
三人でテーブルを囲い、他愛ない会話を交わしてその日が終わった。
最近はこれ以上無い程の幸せに恵まれている。
家族に恵まれて、仲間にも恵まれ、里の皆に慕われている。
これがいつまで続くのか……今を楽しむのが先か。
ロルフと姫様は絶対、両思いなはず無のにな……
俺はとある本を読みながら、唇を噛んだ。
次の日。
俺は、騎士団の練習も休みで、カレンとキーラは子育てのアドバイスを貰いに実家へいったし、資料も無いので何となくで散歩をしていると、ロルフが木陰で沈んだ顔で座っていた。
「ん? ロルフか。何だか浮かない顔をしてるが何を悩んでるんだ?」
「……アニカが僕が十四歳になった誕生日の記憶を取り戻したのは知ってる?」
は? そこまでは……
「初耳だ。姫様は、自分を責めてなかったか? お前もだが……」
「アニカは、自分の事を考える前に僕の事を気にかけてくれたかな……本当の所は分からないけど、『貴方が繋いでくれた命は無駄にできなかった』って言ってくれた。それは、僕もだなって……」
まさか、あの時の事を……
「リュックの事。まだ言ってるのか? 確かに、逝ってしまったが、悔やんで欲しくてやる行動では無いだろ」
「まぁ、そうだけど……しっ! 何か気配がする」
そう言ってロルフが唇の前に人差し指を立てて剣を抜いた。
コメント
1件
うわっ、第59話読んだよ…!ロルフがリュックの幻影に襲われるシーン、めっちゃ生々しくて心臓ギュッてなったわ。しかもその後に妖精がひょっこり出てくる感じとか、この世界観の奥行きが好き。フリオに子供できた話とか、ロルフがソフィーにどう伝えるか悩んでるのも気になるし、最後の「しっ!」からの緊迫感、やばかった。続きめっちゃ気になる🔥