テラーノベル
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「死にたいやつは並べぇぇぇぇ!!!死こそ救済!死こそ救済ぃぃぃぃ!!!うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「ぎゃあああああああ!」
本日1月4日、社会人は仕事始めである。
年末年始は流石に美咲先生の好きにさせていたため、しばらくはこの騒音で起こされることはなかったので、完全に油断していた。
「むにゃむにゃ……。まもりんオハヨー……」
「おう……おはよう……」
白とピンクのチェック柄のパジャマ姿の桜花姉が瞼を擦りながら俺の部屋へと入室。
「守くーん、桜花ちゃーん。起きてるー?」
窓越しに蕾さんの声。
「起きてまーす」
「良かった。ごめんね、いつも。朝ごはんできてるよー」
「「はーい」」
シャー。
ガラッ。
カーテンと窓を開ける。
蕾さんもいつでも入ってきていいよ。と言わんばかりに窓が全開だった。
「お邪魔しまーす」
屋根をつたい、お隣へ。
蕾さんの部屋に入り、ガチャっとドアを開けて階段をおりる。
居間のドアを開けると、既に朝食にがっついてた美咲先生の姿が。
「おはようさん、教え子、桜花ちゃん」
「「おはようございます」」
2人揃って腰を曲げて挨拶。
本日の朝食は餅である。
醤油。きなこ。あんこ。お雑煮。
1個ずつにそれぞれ3種類の味付けがされていて、お雑煮からは醤油の香りがする。
「ごめんね、余り物で」
申し訳なさそうに呟く蕾さん。
「いえいえ、むしろこちらこそですよ。こうしてほぼ毎日朝ごはん頂いて」
「そうそう。うちも余ってるからそろそろ処理しなきゃねー」
俺に続いて桜花姉も同調する。
「お姉ちゃん、桜花ちゃん。私達は今日から仕事始めだから頑張ろうね」
「はぁ、だるいなぁ」
「生徒の前でそんな言葉使いしないでください」
「社会人は大変なんだぞー。覚悟しておけ、教え子」
そうだよなー。
俺もそろそろ、進路について考えねば。
「ところで」
ふっと疑問が生まれた。
「蕾さんと桜花姉はなんの仕事してるんですか?」
「私たち?」
「あたしたちはねー、アルバイト」
桜花姉が答える。
「へぇ、2人とも別々?」
「いんや、同じ職場」
桜花姉が応じる。
「私たちはね、定食屋さんでアルバイトさせてもらってるの」
「へぇ、今度食べに行っていいですか?」
「今度と言わずに今日おいでよー」
蕾さんが誘ってくる。
「でも、迷惑じゃありません?」
「そんなことないよー」
あっけからんと答える蕾さん。
「行ってこい、教え子。未来の妻の働きっぷりを瞳の奥に録画してこい」
「まだ分かりませんよ。でもまぁ、そういうなら」
「やった」
蕾さんが嬉しそうな声調で喜ぶ。
美咲先生の後押しで、俺は2人の職場へと行くことになった。
午前11:30分。
蕾さん達との食後の後、3人はいそいそと仕事の準備をはじめて、俺は邪魔にならないように部屋で宿題を解いていた。
「そろそろ行くかー」
んーと背中を伸ばし、キリのいいところでパタンとノートを閉じる。
混むことは想定して、スマホは忘れない。
外に出て桜並木の大きな通りを歩いていく。5分ほど歩いたところで、コンビニ、スーパー。
などお店が目立つ目立つ。
「ここか」
大島屋。
スマホのマップアプリで、検索した地点へと到着する。
看板に大きく店の名前が、記されていた。
そこ、パクリとか言うなよ?オマージュだ。
ガラッと扉を開く。
「いらっしゃi、あ、まもりんほんとに来たんだ」
大島屋と縫い付けられた文字に紺色のエプロン姿の桜花姉が迎える。
「1名様入りましたー!」
「へい!らっしゃい!1名様どうぞー!」
店の奥から、店主らしき人の野太い声が聞こえてきた。
定食屋というよりノリがラーメン屋だ。
まばらだが、そこそこ人が入っている。
俺はカウンターへと腰掛ける。
「はい、メニュー」
「ありがとう」
桜花姉がメニュー表を渡してくれる。
「えーと、豚の生姜焼き定食に鯖の味噌煮定食か」
ありきたちなメニューだ。
俺はペラペラとめくり、食べたいものを選定する。
「桜花ね……店員さーん」
「はーい」
手を挙げて声を出す。
危なく桜花姉と呼ぶ所だった。
今は客と店員だ。
危ない危ない。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「このカレーうどん、サラダ付きで」
「かしこまりましたー」
桜花姉が伝票にメモをとる。
トットット。
桜花姉が厨房へとはいる。
「カレーうどんサラダ付き入りましたー」
「はーい!カレーうどんサラダ付きですねー!」
今度は蕾さんの声が響いた。
蕾さんはキッチンか。
働いてる姿を見たかったが、ここからでは見えない。残念。
「ねぇ、あの子じゃない?」
ヒソヒソと小声で話す2人の女性客の声を耳がキャッチした。
「あの、学校で自慰行為をして女の子の着替え覗いて、病弱な子の身体拭こうとした人でしょ?」
あらぬ誤解が生まれていた。いや、着替えを覗いたのは不本意ながら事実だ。しおりんの清拭は彼女が望んでいたこと。ちなみにそれは全力で断った。
ブーブー文句を言われたが。
だが1人での行為は完全に徹のことである。
とりあえず、誤解を解きたい。
ガタッ。
席を立つ。
「あの」
声をかける。
「「ひっ」」
女性2人は怯えていた。
これで無理やり話しかけていったら、余計あらぬ誤解が生まれそうだ。
うぅむと唸っていると。
「桜花さーん!お仕事お疲れ様です!」
件の徹と付き添いなのか、眠子さんも入店してきた。
「やめなさい徹」
恥ずかしそうに俯く眠子さん。
「おふたりですねー、どうぞー」
動じない桜花姉。
すごい、完全に仕事モードだ。
むしろニコニコしている。
「おっ?」
「ゲッ……」
徹と俺の目が合う。
「よぉー!親友!元気か?」
さっ。
快活に俺に話しかけるのと同時に眠子さんは俺から顔を逸らした。
しおりんがひとりどうこうを気にしてるのか、恥ずかしくて俺と顔を合わせるのが気まずいのだろう。
徹は当たり前のように俺の隣に。眠子さんは徹の隣に。サッと俺たちと反対側を向く。
「徹」
「なんだ?」
「今日からお前は敵だ」
「なんでだよ!?」
「お前のせいでなぁ」
かくかくしかじか事情説明開始。
「あっはっはっはっはっはっは!!!!そりゃあ、悪いな!1人でやったのはオレなのになぁ」
バンバンとテーブルを叩く。
「他のお客様への迷惑になるので、大声を出したり大きな音出さないでくださーい」
桜花姉が注意に入る。
「そして、1人での行為はこの大声出した男の人でーす。先程からいらっしゃるこちらの方は完全に無実でーす」
「桜花さーん!?」
「だって私被害者ですもん。勝手に好意抱いて勝手に私でひとりえっちした人です」
チラッと俺を見てウインクする桜花姉。
ありがとう……!あなたはメシアだ……!
「えぇ……そうだったの……?」
「あの子、留年した子よね?」
「1人でヤるのはいいけど、私でだったらやだなぁ」
ヒソヒソと徹へ非難の目線が注ぐ。
「あ、あの……」
「はい?」
先程の女性客2人が俺の前に来る。
「ごめんなさい!全部私達の誤解でした」
深々と頭を下げられる。
ピコーン。
いいこと閃いた。
「いえいえ、誤解が解けてよかったです。ちなみにお2人が話してた件も全てこいつです」
「親友ぅー!?」
すすすと徹から距離をとる。
よし、全ての責任の擦り付け完了。
俺は心の中でガッツポーズした。
「ところで、先程から気になっていたのですが……」
俺は黒髪ポニーテールの女性に話しかける。
「もしかして、しおりんが入院してる病院の看護師さんですか?」
「ええ、そうよ。ということは貴方が守くん?」
「はい。しおりんの具合はどうですか?」
「張り切ってるわよー!早くまもっちと一緒に登下校するって」
「おー!楽しみにしてるって伝えておいてください!」
「合点承知之助!」
看護師さんは腕でガッツポーズをとる。
「ふふ、噂通り優しい子ね」
「いえいえそんな……」
「という訳で」
女性はメモ帳を取り出しペンを紙に走らせる。
サラサラ。
書き終えたメモを俺に渡す。
「はいこれ、私の連絡先」
「えっ!?」
紙にはメッセージアプリのIDが記されていた。
玲奈れいなが私だから。と付け加えて。
「君のこと前から気になってたんだ。連絡待ってるねー。行こ」
「玲奈ってほんとだいたーん」
「ふふふ。連絡なかったら紫音ちゃんの身体拭くこととか、蕾ちゃんの着替え覗いたこと誇張して言いふらすから」
耳元でおぞましいことを囁かれた。
女性二人は会計を済まして店を出ていった。
「ありがとうございましたー」
桜花姉は何事も無かったかのようにお辞儀をする。
なんだこれ?どういう状況だ?
歳上の女性から連絡先渡された?
え?
え?
え?
困惑したまま、俺は徹と眠子さんと共にゲーセンに来ていた。
なんか話飛躍したな。
あの後徹がモテる秘訣を教えてくれと言って俺にまとわりついてきたのだ。
俺は「知らん」とだけ答えた。
が、徹は「顔か?顔なのか!?」と喚いていたが「そういう所よ」眠子さんが追撃した。
そして「ゲーセンだ!ゲーセン行くぞ!ナンパしてくる!ついてこい!」
と強引に連れていかれた。
「これだから桜花サンは振り向かないのよ」
眠子さんは呆れていた。
「守クンごめんね」
彼女は俺の方を見ず、赤面して謝罪する。
「何がですか?」
「あんなのに巻き込んで」
「いえいえ、暇だったので」
「ホントに優しい」
ボソッとなにか呟いていたが、よく聞こえなかった。
ナンパ男は何人かの女性に声をかけていたが、全て玉砕していた。
そして某ロボットアニメ機体大集結のゲームへ引き込まれるかのように筐体に呑まれていった。
俺と眠子さんはテキトーにクレーンゲームを見て回っていた。
「あ、コレ……」
「うん?ああ、ヒナコのぬいぐるみか」
「守クン知ってるの!?」
「そりゃあ、アニメのブルーレイ全部もってるし」
「いいなぁ……!」
「ちなみに監督の島田信幸さんのサインも持ってる」
バッと顔をあげる眠子さん。
「え!?そんなプレゼント企画あったっけ!?」
「うんにゃ、この島に来た時に一緒の船でサインもらった」
「ってことはまだこの島にいるの!?」
目がキラキラ輝いてらっしゃるー。
「うんにゃ、桜花姉に伝説訊いてたけど、しおりんのことで余裕ないからって1回帰ってもらった」
「そっか……」
しゅんと落ち込んでしまった。
「けど、桜花姉に頼めばまた来てもらえるんじゃないか?一応名刺貰ってたし」
「今からお願いに行ってくる」
「待て待て仕事中だ。俺が訊いといてやるから」
だっとかけ出す彼女の肩を掴んで静止する。
「おねがいします」
赤い顔のまま、ペコッと頭を下げる。
「あいよ、まずはこいつだな」
目の前のガラス越しにいるヒナコのぬいぐるみにロックオンする。
「取れるの?」
「任しとけ」
グッと親指を立てる。
数百円でゲット。
「ほい」
それを眠子さんに渡す。
「いいの……?」
彼女はぽかんとしていた。
「いいよ、俺の分はこれから取るから」
そう言い、辺りを見渡す。
すぐ近くにいた。
「店員さーん」
俺はヒナコのぬいぐるみをもう1個設置してもらった。
そしてもう1個ゲット。
「すごい……!」
感嘆の声をあげる眠子さん。
「ここまでできるようになるのに苦労したけどね」
俺は苦笑する。
「ありがとう」
「おう」
「大事にする」
顔を赤らめて気持ちを受け取った。
その後、徹と合流。
やつはゲームでも惨敗したようだった。
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