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若井side
点滴の音だけが響く病室で、静かな時間が続いていた。
窓の外はまだ朝焼け前の灰色で、空気はどこか張り詰めていた。
俺はずっと、元貴の隣で腕を組んで座ってた。
あいつの顔色はまだ悪いけど、呼吸は安定してる。
点滴の針が刺さった腕が妙に細く見えて、胸の奥がきゅっとした。
「ねぇ、涼ちゃん。……少し寝ときな?」
「ううん。……起きてたい。元貴が、目を覚ますかもしれないから」
涼ちゃんは椅子に浅く腰かけて、ずっと元貴の顔を見てる。
その表情が、まるで子どもみたいに心配そうで、俺は何も言えなかった。
そしたら——小さく、眉が動いた。
「……っ!」
藤澤side
ほんの一瞬だった。
でも、確かに元貴のまぶたが、ぴくりと震えた。
僕は思わず前のめりになる。鼓動がドクン、と大きく跳ねた。
「……もとき……!」
名前を呼ぶと、少しだけまぶたが開いた。
焦点の合わない目がゆっくりと動いて、僕と若井を交互に見た。
まるで夢の続きをなぞるみたいな、ぼんやりした目だった。
「やっと…目、覚ました…!」
言葉がうまく出てこなかった。
声は震えて、涙がにじんできそうで、でも必死で堪えた。
若井side
「…なんで…ここに……?」
かすれた声。
それを聞いた瞬間、喉の奥が詰まりそうになった。
俺は立ち上がって、ベッドに身を寄せた。
「LINEも既読つかないし、嫌な予感してさ。 家の合鍵、使って……中入ったら、元貴が倒れてた」
元貴は、まだ意識がふわふわしてるようで、視線が定まらない。
だけど、俺らの顔をじっと見て、ようやく気づいたように微笑んだ。
「……そっか。見つけてくれたんだね」
その声に、胸の奥が一気に熱くなった。
藤澤side
「当たり前でしょ……! どれだけ心配したか……!」
もう我慢できなかった。
声が震えて、涙がついにあふれた。
元貴は驚いたように目を丸くして、申し訳なさそうに笑った。
「ごめん……迷惑かけたね」
「迷惑とかじゃないよ……元貴が、いなくなるのが怖かっただけ……バカだよ…元貴…もっと早く言ってくれれば、僕ら……」
そんなの、伝えなくてもわかると思ってた。
でも、ちゃんと口にしなきゃと思って、それでも、この続きは口に出せなかった
若井side
「元貴、マジで次はちゃんと頼れよ」
あえて少し強い口調で言った。
だって、また同じことになったら困る。
俺たちは“仲間”で、そばにいるって、もっとわかってほしかった。
「……うん」
元貴は小さく頷いた。
その動きが妙に弱々しくて、情けなくて、でもあいつらしくて。
俺は少しだけ笑った。
「しっかし、涼ちゃんがあんなに泣くの、久々だったよね!見れたな〜」
「若井!」
「はは、ごめんごめん。場を和ませようと思ってさ」
そんなやりとりに、ベッドの上の元貴がふっと笑った。
その笑顔に、やっと本当に安心できた気がした。