TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「そうだ。倍相ばいしょうも帰ったし、ルームウェア、ちゃんと見せてくれないか?」


「えっ!?」


「アレさ、俺に見せるために着てくれてたんじゃねぇの? すげぇ……その、……か、……か……」


「か?」


「か、わい……かった、んだけど」


愛らしい羽理うりの雰囲気に、パステルカラーの猫柄パーカーの上下はよく似合っていた。


岳斗がくとの手前、下を長いのに履き替えさせた大葉たいようだったけれど、実際はせっかくキュートに着飾っていた羽理を、しっかりでられていなかったし、何よりちゃんと褒めてやれていなかった。


姉の柚子に、言葉足らずなところがいけないんだと散々ダメ出しをされた大葉たいようとしては、ちゃんと仕切り直しておきたいと思ったのだが、いざ伝えようとしたら〝可愛い〟という単語は思いのほかハードルが高かった。


「か、可愛かった……です、か?」


ホントに?とソワソワとコチラを見つめてくる羽理に、「ああ、……か、可愛かった! だからさ、その……もう一回もっかいちゃんと着て見せてくんね?」



***



大葉たいようがやたらしどろもどろで照れるから。

何だか羽理うりまでつられて恥ずかしくなってきてしまった。


でも、確かに大葉たいようが言うように、彼に見て欲しくて着ていた服だ。


「もぉ、仕方ないですね」


照れ隠し。

ふぅ、と溜め息まじりに言って立ち上がりながら、羽理は内心(もう! 今の私の態度、全然可愛くない!)と猛反省していた。


ソワソワと脱衣所で先程脱いだ、上と揃いの短パンに履き替えて戻ってきたら、大葉たいようが真っ赤になって目を逸らすから。


「は、恥ずかしくなるのでそう言う反応、禁止です!」


羽理も頬をあかく染めながらぷぅっとほっぺたを膨らませてみせる。


「いや、だって……お前があんまり俺好みだから……」


言って、大葉たいようにぎゅうっと抱きしめられた羽理は、「ひゃっ」と小さく悲鳴を上げた。


「けど、……なんかくやしいな」


だが、ややしてポツンと落とされた言葉に羽理は「ん?」と思って。


「考えてみりゃあ俺より先にお前のコレ、倍相ばいしょうに見られちまってるわけだろ? 何かすげぇモヤモヤすんだけど」


言われてみれば何となく。羽理うりもそれは嫌だな?と思ってしまった。


大葉たいよう、今度別の可愛いの買ったら……その時こそは」


「ああ。俺に一番をくれ」



***



「よしっ。じゃあ、今夜は俺、お前のベッドわきで寝るから……。寝ぼけて踏んづけてくんなよ?」


ククッと笑ってベッド下の床を指さしたら、羽理うりが「ふ、布団もないのにそんなところで寝かせられませんっ!」と眉根を寄せる。


考えてみれば、羽理の部屋で二人一緒に夜を明かすのは初めてなのだ。


当初の計画では羽理を上手に丸め込んで、一緒のベッドで添い寝なんか出来たら最高だ!……と目論もくろんでいた大葉たいようなのだけれど、いざ!と思ったら意気地いくじなしのヘタレ虫がそろりと頭をもたげた。


この部屋の片隅に置かれたベッドも、大葉たいようのダブルベッドとは違って小さなシングルサイズだし、そこに羽理とくっついて寝たりして、何もせずにいられるだなんて、思えなかった。


(い、一応避妊具はあるけどな!?)


そうなることを全く期待していないわけではない。

その辺の準備万端ばんたんなのだが。


(羽理、そう言うの経験ねぇって言ってたし……今日気持ちを確かめ合ったばっかでそんなんは……さすがにダメだろ)


別室に移動しても距離が足りないぐらい、羽理に触れたくてたまらない欲が抑え切れる自信がないと言うのが本音だが、残念ながら部屋数が足りない。


女性用ワンルームをうたっているらしいこの物件。

キッチンや風呂場があるあちら側と、リビングのあるこちら側以外には部屋がないのだ。


玄関から真っ直線に部屋の中リビングが見渡せては良くないと言う配慮からだろう。

キッチンスペースとリビングとの間に取って付けたみたいなすりガラスの仕切り戸はあるのだけれど。


戸があるからと、キッチンの床に寝そべると言うのはいくら何でもおかしいし、すぐそこに見える、リビングに併設へいせつされたウォークインクローゼットの中に入って寝るのも妙な話だ。


(俺は『ドラレもん』じゃねぇしな)


未来からきた、レモン色の超有名な国民的アニメの猫型ロボットが、世話になっている主人公の家の押し入れで寝起きしている。


それをふと思い出してしまった大葉たいようだ。

あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

145

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚