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昼すぎ。カーテンの隙間から差し込む光がまぶしくて、ナマエはうっとおしそうに布団の中に潜った。
(……何もしたくない)
スマホは隣にある。でも、何も開いていない。
通知は数件。LINEも出水先輩から何通か来てる。
『今日訓練来ないの?』
『どうした?』
『風邪とかじゃないなら安心だけど』
(見てないふりしよ……)
枕に顔をうずめて、目をぎゅっと閉じる。
(ほんとは……なんで、こんなに苦しいんだろ)
学校がいや?
ボーダーがいや?
誰かに何かされたわけでもない。
文化祭、すっごく楽しかったのに。
なのに。
心のどこかが、ずっとずっと、きゅうってしてる。
(出水先輩に……ほんとは言いたいこと、いっぱいある)
“好き”って気持ちもそう。
でも、なんかそれだけじゃなくて。
もっと奥の、もっとずっと手前の、
どう言葉にしていいかわからない“なにか”が、自分を引きずってる。
『……言えたら、楽になるのかなぁ』
ぽつりと呟いた声は、布団の中に吸い込まれていく。
でもその“なにか”が何なのか、ナマエ自身にもわからないから。
ただ、もやもやと、涙の手前みたいな気持ちだけが残る。
(出水先輩、気づいてるよね……気づいてるのに、何も言わないのも、ズルいよ)
そう思ってしまう自分もいやで、また目をつぶった。
『……わかんなくなってきた』
ナマエは、くしゃっと布団をかぶって、
そのまま、小さく小さくなるように丸くなった。