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「おい近衛……いや、近衛様! 頼む、俺が悪かった! 命だけは助けてくれ!!」一番最初に俺の「安全地帯」の境界線へと這いずってきたのは、他の誰でもない神条蓮だった。
さっきまでカーストの頂点で俺を蔑み、屋上で笑っていた男が、なりふり構わず土下座をして俺の靴を舐めんばかりに擦り寄ってくる。
「俺もだ近衛! 筋トレだなんて嘘だ、暴力振るって本当に悪かった! 何でもする、靴磨きでも奴隷でもやるからあそこ(外)に行かせないでくれ!」
鬼塚が巨体を折り曲げ、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら叫ぶ。
「司くん……っ! 私、本当は神条くんに無理やり言われてただけなの! ずっと司くんのことカッコいいって思ってて……!」
姫宮莉乃が可憐な顔を歪め、媚びるような濡れた瞳で俺を見上げてくる。
黒木も、萌も、蜂谷も。
主犯格の6人が我先にと押し合い、他人を蹴落としてまで俺の足元へ擦り寄ってくる様は、反吐が出るほど滑稽で、惨めだった。
『うわぁ……本当に浅ましい者たちですね。司様、全員まとめて外の魔獣の餌にしてしまわれては?』
ヘカーティアがゴミを見るような目で彼らを見下ろし、心底嫌そうに呟く。
「まあ待てよ、ヘカーティア」
俺は擦り寄ってくる神条の頭を、靴の先で軽く踏みつけた。
「ひっ……!」
「神条。お前、さっき病院のグループチャットで言ってたよな。『警察には事故として説明する』っていう担任の言葉に、『了解でーすwwマジ近衛ウケるwww』って」
「あ、あれは……! 冗談で、その……!」
「日本の法律ってのは優しすぎると思わないか?」
俺の冷ややかな言葉に、神条だけでなく、後ろで震えている担任の黒岩やクラスメイトたちも息をのんだ。
「どれだけ人を精神的に追い詰めて飛び降りに至らせても、せいぜい『いじめ』だの『過失』だので処理される。少年法に守られ、親の権力で揉み消され、お前たちは数年もすれば何事もなかったかのようにヘラヘラとまともな人生を送るんだ」
俺は境界線の外——未知の魔獣が威嚇の咆哮をあげ、ドス黒い毒気が渦巻く異世界の空を見上げた。
「だから、ここを選んだ」
俺の言葉に、神条が顔を跳ね上げる。
「なぜ俺がお前たち全員を、わざわざこの地球外の異世界に引っ張り込んだと思う?」
俺は思考を巡らせる。
【対象:この異世界全域】
【象徴:地球上のいかなる法律、人権、道徳の適用を完全に無効化する】
「森羅万象——『法と秩序の概念抹消』」
世界がかすかに揺らぎ、俺の宣言がこの空間の絶対的な「理」として刻み込まれる。
「ここは地球じゃない。日本の警察も、少年法も、人権も、弁護士も……何一つ届かない俺の世界だ」
俺はゆっくりと屈み込み、ガタガタと震える神条の目を至近距離でのぞき込んだ。
「地球の外なら、どんな地獄を味わわせても誰も俺を裁けない。……そうだろ?」
「あ……ああ……っ……!」
絶望が、主犯格たちの顔を完全に塗りつぶした。
俺を殺そうとした奴らに、法という盾すら残されていないことを、今ここで理解したのだ。
「さて、神条。俺に庇護を求めて擦り寄るなら……まずはその口で、お前が裏でやってきたすべての悪事を、クラス全員の前で白状してもらおうか」
コメント
1件
うわ、ついに来たか……この「法の無効化」って発想、めちゃくちゃ好きです。地球の法律や倫理が一切通用しない空間で、初めて平等になる構図がゾクゾクする。神条たちが土下座して擦り寄る惨めさと、司くんの冷めた目線の対比がたまらなかった。次の話が気になる!