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「あ、それと——傍観者諸君も、自分は無関係だと思わないでくれよなー」神条たちの頭を踏みつけたまま、俺はゆっくりと顔を上げた。
視線の先には、主犯格の少し後ろで「自分たちは直接手を出していない」とでも言いたげな顔で縮こまっている、20人以上のクラスメイトたち。
俺の眼にはもう、なんの感情も宿っていない。
死んだ魚のように光を失った冷たい瞳で、一人ひとりの顔をじっと見据えてやる。
高橋。イヤホンで耳を塞ぎ、俺が殴られているのをいつも無視していたオタク。
野村。グループチャットで俺を標的にした暴言が飛び交う中、スタンプ一つ押さずにスルーしていたゲーマー。
松本。廊下で目が合えば、汚いものを見るような顔で露骨に目を逸らしていた女子。
清水。優等生面をしながら、裏で俺を「トロくて哀れ」と嘲笑っていた奴。
俺の視線が突き刺さるたび、奴らはビクッと肩を揺らし、青ざめた顔で目を背けた。
「……な、なんでだよ近衛! 俺たちは何もしてないだろ!?」
「そうだよ! 暴力を振るってたのは神条くんたちで、私達は関係ないじゃん!」
耐えかねたように、傍観者グループの何人かが必死な声を張り上げた。
「自分たちは被害者だ」「巻き込まれただけだ」とでも言いたげな、被害者面。
俺はハッと短く鼻で笑った。
「『何もしてない』? ああ、そうだな。お前たちは確かに『何もしてくれなかった』」
俺の冷めた声に、クラス全体がしんと静まり返る。
「目の前で人が踏みにじられていても見ないフリをし、グループチャットで玩具にされていても誰も『やめろ』の一言すら言わなかった。自分が標的にならないためだけに黙認し、空気に流され、間接的に俺を屋上へ追い詰めたんだ」
俺は指先をすっと滑らせ、安全地帯の床に刻まれた光のラインを小さく狭めた。
「ひっ……!? バリアが小さくなっていく……!?」
「近衛くん、やめて! 触れたら外の毒気で死んじゃう!!」
悲鳴を上げて押し合いへし合いになる傍観者たち。
「この世界じゃ、『ただ見ていただけの罪』も重罪だ。俺の庇護が欲しければ、傍観者のお前たちにも相応の『役割』を果たしてもらう」
『うふふ、流石です司様。何も見ようとしなかった者たちには、地獄の特等席で全ての恐怖を特等席で見つめさせてあげましょう』
ヘカーティアが俺の肩に頬を寄せ、楽しそうにクスクスと囁く。
「……さあ、どうする? 自分の手で罪を贖うか、それとも今すぐそのラインの外へ出て、あいつらの餌になるか……選べよ」
死んだ魚のような俺の瞳に映るのは、もはやクラスメイトではなく、俺の庭で蠢く哀れな駒たちだけだった。
コメント
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第5話、読み終えました。ぐっと引き込まれましたね…「何もしてくれなかった」という言葉の重みが胸に刺さります。傍観者の“無関心”という暴力を、ちゃんと裁きの対象にしたところが印象的でした。一人ひとりの名前を挙げて、彼らがどんな態度で“見て見ぬふり”をしていたか描くところに、作者さんの視点の鋭さを感じます。主人公の冷めきった視線と、ヘカーティアの楽しげな声の対比も絶妙でした。