「俺、アキラの事が好きなんだよね」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「は?」
声が出ずに数十秒、やっとの事で吐いた言葉は1文字だけだった。
あのセラフ・ダブルガーデンからそのような言葉が出るなんて聞いたこともなかった
それに、何故私に伝えられているのかも未だ理解出来ていない
ただきっと、意味合いが違うのだと考えた
こいつの好きは、おそらく仲間想いの好きなのだと
「それは、あ、ありがとう、ございます」
「分かってないでしょ」
「分かってますよ、仲間想いの好きって事でしょ?だからありがとうって…」
「違うよ」
「っ…セラ、フ…?」
腕を引かれ、三半規管の弱い私は言わずもがなセラフの胸板へと寄った。
そのまま抱きしめられるとは思いもしなかったけれど
「え、な、何?!何お前、ちょ、離し」
「分かってないからでしょ」
「わ、分かった、分かったから!一旦離して、まじで」
「なんでそんな嫌がるの」
「嫌がってないから!痛いんだって!!」
「あ、」
ここは病院であり、私は生身を撃たれた病人だと 気付かなかったのだろうか
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そのままセラフは私の事を離し、手を繋いだままベッドへと座らせてくれて、視線を合わせるようにその場でしゃがみこみ、此方を見つめてきた。
手は離してくれてはいないけれど
「あの、手を」
「逃げそうだからやだ」
「逃げそうって…こんな足でお前から逃げれるわけないでしょふざけんな」
「それはまあ、そうなんだけど」
てか凪ちゃんに追いつかないわけないんだけど
などと言う言葉を無視し、彼に質問をする
「先程言われた言葉なんですけど」
「そのままの意味だって」
「そこ、私達今ここで食い違い起きてんじゃないかって思ってるんですよ」
「凪ちゃんが馬鹿だからー」
「はあ?!おま、お前今なんつった!?
っ…い…ったぁ…」
「あーあ、はしゃぐから、大丈夫?あれだったら寝ながらでいいよ」
「あ、ありがとうございます、そこまでは大丈夫ですから」
どうしてこんなにも優しいのか
いや、元々優しい方ではあるんですけど
「あの、だから…仲間想いとして好きって言ってくれたんじゃないんですか」
「だから、違うって言ってんでしょ」
「じ、じゃあ…本当に恋愛面としての好きだって、捉えることになるんですけど」
「そうだね」
「そうだねって、そんな清々しく言われても…」
会話をしていく内に、どんどん訳が分からなくなってくる。
本当にセラフは私の事を好きって言ったのか?
恋愛面として、?分からない、頭がパンクしてきた
「あのさ、凪ちゃん」
「は、はい」
「こういうの、俺だってすげー恥ずかしいから言いたくないけど、凪ちゃんがどうしても馬鹿だからもう一回だけ伝えとくんだけどさ」
こいつ馬鹿って言い過ぎだろ
流石に私も怒る
なんて伝えられる空気ではなくて
「俺、アキラの事が好き、恋愛面として。
だからあの時君が事務所に来なくて、遅いなって思って迎えに行こうとして外に出たら、道に君の眼鏡が落ちててめっちゃ焦ったし、怖かったし」
「お、おう、一旦落ち着いて」
「やっと居場所つき止めて行ったら、変な男が居るし、めっちゃ傷付いてるし」
「そ、それはご迷惑をおかけしました…」
「君を運んでる最中意識失った時もすっげー焦って、眠ってる時だって何度奏斗が手配した医者に状態聞いたか分かんないし」
「おま、そんな事してたの?」
「だからそれくらい」
君の事が好き
甘ったるい声と、体制のせいで上目遣いのような視線に、心臓がぎゅっと収縮するような痛みに襲われた。
触れられている手が熱い
でも、だって、セラフは通常の異性愛者であって、私には勿体ないくらいの良い人で
釣り合わない、こんな私じゃ
嬉しい、ありがとうって、伝えてあげたい
でもそんな気持ちと同じくらい、申し訳ない気持ちと、悲しい気持ちが込み上げてくる。
私だって多分、セラフの事が好きだ。
優しくて、仲間想いで、話しかけたら嫌な顔せず聞いてくれて
傍に、居てくれて
多分彼の事が好きなのだと、前から少しづつ理解していたつもりだった。
だけど
「_____嬉しい気持ちは、あります
でも貴方と私では、釣り合わないと思うんです」
「釣り合わないって、何が」
「私だって、セラフの事は好きですよ。
だけど、貴方にはもっといい人が居ると思います、素敵な方が待ってると思う。こんな私よりも、うんと素敵な方が」
「なんでそんな自己肯定感低いの」
「率直な感想ですよ、だって私、お前に深夜に電話かけるような男だぞ?しかも男、女性じゃないんですよ」
もし、もし女性だったのなら、付き合えていたのだろうか
こんな私でも
いや、そんなことは無いな
そもそも性格が終わってる、こんなんじゃセラフに迷惑をかけるばかりだろう
実際、今だって迷惑をかけているはずなんだから
「だから、さっきの返事は_____」
「嫌だよ」
「え?」
「俺、そんなんじゃ認めないよ」
「認めないって、さっきの話聞いてましたか?」
「聞いてたよ、聞いた上で認めないって言ってんの 」
「いやいやいや、お前さ 」
「そもそも、俺性別とかで決めてないし
凪ちゃん自身の事が好きなの、しかも俺深夜にかけてくる電話とか出てるし、今後も電話とか普通に出るし、釣り合う釣り合わない関係ないでしょ、というかずっと一緒に居てここまで来てんだから釣り合わない訳ないでしょ」
「いや、でも」
「あと何?素敵な方がいるって、俺別にお前より素敵な人?いると思ってないんだけど、この世の中素敵な人なんていくらでも居るけど、俺にとって素敵な人は凪ちゃんなの、分かる?」
「あ、はい」
なんだろう、説教を食らっている感覚がする、おかしいな、さっきまでネガティブなテンションだったのに。
私はこいつの何かの地雷を踏んでしまったのだろうか
「しかも、凪ちゃんさ」
「は、はい、何でしょう」
「俺の事好きって言ったよね」
「え、いや、そんな事」
あれ?
もしかして言ってたのか
考え事を多くしすぎて、何を口にしたのかさえ覚えていない
ほら、私頭殴られてましたし
そんなことをぐるぐると頭の中で自問自答したとしても、セラフの耳には残っている
ようで…
「君も俺のことが好きで、俺も君の事が好きなら、別に何も構わないよね」
「いや、でもほら」
「別に、本当に嫌なら俺だって諦めるよ、でも凪ちゃん自身の気持ちを伝えてくれないと俺は諦めないよ」
「私自身って…」
「釣り合う釣り合わないじゃなくて、本当の凪ちゃんの気持ち、教えて」
「わたしの、気持ちは…」
私、は…セラフが、好き…だけど
でも、怖い
もしこの先セラフと付き合ったとしても、
同じグループとして活動してきた時よりも内側を晒してしまう事が特に怖い
どう思われるかも分からないし
この事を、どう伝えたらいいのかさえ分からない。
「好き、だと思うんです…セラフから伝えられたことも嬉しかったし、好きだと分かってるんですけど…」
「うん」
「どうしても、考えちゃうんだよ」
私とお前が付き合って、その場面を知り合いに見られたらどう思われるのか。
奏斗とか、たらいがどう思うのか分からない
あいつらは優しいし、他の人たちも嫌な顔なんてしないって分かってるけど
「普通の人より、なんというか…プレッシャーがあると言うか…分かんないんだよ…」
「俺が完璧人間すぎてか」
「そう、そういうこと」
「認めちゃうんだ」
「当たり前だろ、なんでも出来ちゃうじゃんお前はさ」
「なんでも出来てないよ、だって今泣かせてんだもん」
「は?」
「凪ちゃんの事、泣かせちゃってるから
好きな人を泣かせる事は、なんでも出来る人には入らないよ」
「ぅ…っ」
握られていない方の手で、涙を拭ってくれた、いつの間にか泣いていたようだ
涙脆すぎる、歳かもしれない
「……セラ夫は、私の何処が好きになったのんですか」
「えー、全部?」
「特に」
「特にかぁ」
「言ってもらわないと返事しないぞ」
「分かったわかった、言うからそんな怖い目しないで」
ずっと見てきたからさ、君の事
何事も一生懸命なとこも、俺らの事密かにちゃんと見てくれてる所も、全部
全部見てきたんだよ
でも1番好きなのは、俺の事をあの時、救い出してくれたところ。
「ずっと、ずっと君に助けられてるよ」
「……なんだよ、それ…」
「あーあ、目に洪水おきてるし」
「おきてねぇよ…」
そんな昔の話、ずっと覚えてくれていたなんて、知りもしなかった
あの時、セラフが変わってくれた事が嬉しかった、傍で見守ってくれていることが、とても嬉しかった。
だから、お前からそんな話聞いちゃったら
泣くに決まってる
「お前に、迷惑掛けるかもしれないよ」
「全部受け止めてやんよ」
「言っとくけど私、めんどくさい性格だからな」
「そんなのとっくに知ってるよ、でもずっと話とか聞いてる」
「おまえのこと、危険な目にあわせるかもしれない…」
「凪ちゃんに言われたけど、俺そんな弱くないよ、君が1番近くで見てきたでしょ?」
「っ…ずっと、巻き込むかもしれな…!!」
「アキラ」
どれだけ辛くても、どれだけ心苦しくても
結局はお前に助けられてばかりだ
ずるいよ、本当に
「……ほんとに、ずるいよ、おまえはさ」
「よく言われる、特に君にね」
「……せらふは、いいの…私、本当に、期待しちゃいますよ」
「絶対喜ばせるから、傍にいて、全力で楽しいって思わせるからさ、凪ちゃん」
「……せら、」
「俺と、付き合ってくれますか?」
最初から、最後まで
ずっとずるい
でもそんな事を許してしまうくらい
貴方のことが、好きなんだ
「____はい、おねがいします」
「っ…あはは!やったぁ…良かった、 ほんとよかったぁ…」
そうやって笑いながら、抱きしめてくる
さっきより傷を労うように優しく、大事にするかのように
「っ…お前、全部ほんとずるい」
「なに、どしたの」
「何でもねぇよ…」
「涙引っ込んだ?」
「全然、嬉しすぎて止まんない」
「明日、目腫れちゃうかもね」
「それでもいいですよ、今日の事が嘘じゃないって証拠になりますから」
「確かに」
「セラフ」
「んー?」
「私も好きですよ、貴方のことが」
「知ってる、俺も好き」
そう言い合って、お互いに笑い合う。
事件に巻き込まれてから生まれた、奇跡のような物語
明日眠りから覚めたら、もしかしたら夢だったと錯覚してしまうかもしれないけれど
そんな事を思わないくらい、きっと彼は私の事を沢山好いてくれるんだろうと知った
明日から、きっと今よりもずっと
楽しい日々になるんだろうな
コメント
2件
なんかもう凪ちゃんとかセラおとか解釈一致すぎて死ぬ
セラ凪に祝福を!なんか...もう...主様神すぎません?